ジオストーム【2点/10点満点中_バカ映画の割に分かりづらい】(ネタバレあり・感想・解説)

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終末
終末

(2017年アメリカ)
2019年に発生した大規模自然災害により滅亡の危機に瀕した人類は、気象コントロール衛星「ダッチボーイ」を建造した。2022年、ダッチボーイの不具合が原因と思われる異常な事件が世界中で頻発したことから、開発者のジェイク・ローソンが修理のために宇宙へと飛んだ。

駄作の常連・ジェラルド・バトラー

俳優としての評価は低くないし、人気俳優だから出演作を選べる立場にいるはずなのに、なぜか駄作に出続ける男、それがジェラルド・バトラーです。

彼の出演作を振り返ると、『GAMER』『完全なる報復』『マシンガン・プリーチャー』『エンド・オブ・ホワイトハウス』『エンド・オブ・キングダム』『キング・オブ・エジプト』と、何らかの十字架でも背負っているのかと思う程の駄作のオンパレードであり、もはや「ジェラルド・バトラー主演」は要注意信号に近くなっています。

ディーン・デヴリン監督とは

本作は長年に渡ってローランド・エメリッヒの右腕を務めていたディーン・デヴリンの監督デビュー作となります。この人、元は俳優をやっていたのですが、1989年にローランド・エメリッヒが母国・西ドイツで撮った『MOON44』に出演した際に脚本についてのアドバイスを行い、そのことがきっかけでエメリッヒに脚本家としての才能を見出されてハリウッド進出の際のパートナーとなりました。『ユニバーサル・ソルジャー』『スターゲイト』『インデペンデンス・デイ』『GODZILLA』『パトリオット』と、大味だのバカだのと言われながらもエメリッヒがハリウッドの頂点にいた時代の女房役であり、共同脚本のみならず製作、時には第二班監督までを務めていました。その後何があったのかは知りませんが二人はコンビを解消し、エメリッヒは2004年の『デイ・アフター・トゥモロー』以降はハラルド・クローサーをパートナーとしています。

大規模なディザスター映画である本作は紛れもなくエメリッヒの作風の延長にあり、しかも気象コントロール衛星という存在はエメリッヒの監督デビュー作『スペース・ノア』を引き継いだもので、コンビ解消して15年以上が経つのにいまだにエメリッヒの女房役的な感覚が抜けていないという点には頼りなさ全開なのです。

実はローランド・エメリッヒやマイケル・ベイが優秀だった件

そんな感じでエメリッヒ作品の二番煎じ的な内容なのですが、見せ場は確かに派手なんだけど特に手に汗握ることもないというかなり悲惨なことになっています。

エメリッヒはグランドホテル方式の作劇を得意としており、世界各地の大災害を見せる場合にはそれぞれの舞台に観客が感情移入可能なキャラクターを配置し、ドラマの上に見せ場を展開するということができていました。そのおかげで、ありえないほど大味ながらもそこに人の存在感を感じられる見せ場を作ることができていたのですが、デヴリンはその点で完全に失敗しており、唐突に登場した誰だか分からない人間が非現実的な大災害に巻き込まれるという見せ場には一滴の血も通っていませんでした。実は、エメリッヒの映画はよく出来ていたということが本作を見ればよく分かります。

また後述する通り、本作にはジェリー・ブラッカイマーも関与しているのですが、ブラッカイマーは宇宙ステーションでの仲間割れや、地上と宇宙ステーションとの交信の中でドラマを紡ぐという『アルマゲドン』の作劇を持ち込んだものの、こちらも参照元のようなハイテンションなやりとりや、ベタと言われながらもホロっとさせられる和解の物語にはできておらず、実はマイケル・ベイはうまかったということが証明されています。

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ジェリー・ブラッカイマーが参加してもどうにもならず

本来は2017年1月に公開される予定だったものの、2015年12月に行われたテストスクリーニングの結果が恐ろしく悪かったために大規模な追加撮影が必要と判断され、2017年10月公開に延期。その際にディーン・デヴリンはプロダクションから切り離され、代わりにディズニーから切られて暇になっていたかつての大物プロデューサー・ジェリー・ブラッカイマーが陣頭指揮を執りました。そしてブラッカイマーはテレビドラマ『CSI』の共同プロデューサーであり、それ以前にはスタローン版『ジャッジ・ドレッド』を監督してハリウッド大作の経験もあったダニー・キャノンを新たな監督に据えて仕切り直しを行いました。クレジット上の監督であるギャレス・エドワーズは途中で降板しており、実質的にはノークレジットのトニー・ギルロイの映画だった『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』方式ですね。ただし、追加撮影が奏功してシリーズ屈指の傑作となった『ローグ・ワン』と違い、本作はダメなままでしたが。

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基本的にはエメリッヒ風の大味なディザスター映画なのに、合間でブラッカイマー印のサスペンスアクションが挿入され、そしてクライマックスでは残り〇〇秒!というカウントダウンと自己犠牲を買って出る主人公という『アルマゲドン』的な展開が待っているのですが、この二つの作風が最後までうまく馴染んでおらず、「ここまではエメリッヒ風」「ここからはブラッカイマー風」と観客の目にもはっきりとわかるほど再撮影部分が浮いています。

※注意!ここからネタバレします。

話が全然分からない

本作が凄いなと思ったのが、バカ映画なのに話がよく分からないということです。

  1. 気象コントロール衛星が暴走したので修理しなくちゃ。
  2. 一連のトラブルは仕込まれたウィルスによるものであり、それは国連にシステムを渡したくないホワイトハウスからの指示のようだ。
  3. ピンポイントで発生させた嵐で現職大統領を暗殺してその後継者となり、さらには仮想敵国にダメージを与えて強いアメリカを取り戻そうと画策した国務長官がすべての黒幕だった。

と何度も何度も方向転換を繰り返されるので何の話をしてるんだかよく分からなくなるし、しかも3.の理屈があまりに支離滅裂すぎて頭にスっと入ってきませんでした。

国務長官はオーランドで遊説中の大統領を嵐で襲おうとしていたのですが、その遊説にはお前も同席してるんだから自分も死ぬリスクがあるだろとか、そもそも冒頭のナレーションで「世界的な異常気象で各国は団結した」と説明されていて世界平和が実現したという設定が置かれているのに、なぜ他国を攻撃するという発想になるのかとか、私の頭には疑問符しか浮かびませんでした。

なりふり構わなかったワーナーのプロモーション

映画ファンが一様に拒否反応を示すタレント吹替。批判を受けることが分かっているのに配給会社がなぜこんなことをするのかと言うと、タレントを使えばマスコミが取材に来てくれて割高なギャラ以上のプロモーション効果があるからなのですが、その副作用としてソフト化の際にAmazonの商品レビューで一つ星を大量にぶつけられるというファンからのきつい制裁もあって、2010年~2012年頃をピークとして近年は目立ったタレント吹替はない状態でした。しかし、この駄作をどう宣伝したものかと困り果てたワーナーは久しぶりに豪快なタレント吹替を実施しました。上川達也、山本耕史、ブルゾンちえみという、手当たり次第に声をかけてOKしてくれた人を適当にキャスティングしたかのような謎すぎる組み合わせ。めちゃくちゃ下手という程ではないもののプロの声優と比べると抑揚も緩急もない俳優二人と、ブルゾンちえみでしかないブルゾンちえみの声が、ただでさえ酷い映画をより酷くしていました。

もう一つファンから嫌われるプロモーションとして、日本語版主題歌というものがあります。洋画を見ているのにエンドロールになると突如日本人アーティストの日本語曲が流れ出すという違和感しかない誰得なサービスであり、これも近年は自重傾向にあったのですが、本作では久々にB’zを豪快に流すという策に出ています。

なお、このような好ましくないプロモーションをかけまくったにも関わらず、本作については激しい批判が起こらなかったのですが、それはそもそも目くじら立てるような映画ではなかったということの他に、この駄作を何としてでも売らないといけないワーナー日本支社の苦悩が観客にも伝わったからではないでしょうか。

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