日本沈没2020_かなり酷い出来【2点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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終末

(2020年 日本)
1973年版をさほど評価していない私は旧作と比べてどうこう言うつもりはないのですが、それにしても面白くないアニメ版で見ていて疲れました。非現実的すぎるドラマの流れ、中盤の宗教施設の無意味さ、目的を見失った終盤など作品として筋が通っておらず、かなりひどい出来でした。

あらすじ

2020年五輪終了後の東京を巨大地震が襲う。中学生の武藤歩(上田麗奈)は家を目指し、運よく家族は合流することができたが、報道によると沖縄は全島が海に水没しており、東京も水没しようとしているとのことだった。一家は徒歩での東京脱出を余儀なくされる。

作品概要

小説「日本沈没」4度目の映像化

本作の原作となる小説版『日本沈没』(1973年)は、SF小説家小松左京が9年がかりで執筆した長編であり、1973年3月に上下2巻を同時敢行するや、合計385万部を売り上げる大ベストセラーとなりました。

出版前から映画化権を押さえていた東宝は、ブーム加熱中に映画版を製作・公開することを決定。1973年9月に製作発表し、同年12月29日に公開するという突貫での製作を余儀なくされましたが、1974年の邦画年間興行成績第1位の大ヒットを記録しました。

その映画版と共にTBSのドラマ版も製作され、1974年10月から1975年3月にかけて放送されました。こちらは毎回どこかの地方が豪快に破壊されるという贅沢な内容であり、これまた大ヒット。

1990年代後半には松竹が『日本沈没1999』の製作を試みたのですが、12億円が見積もられた製作費を調達できずに中止となりました。

2006年には、1973年版と同じ東宝にて樋口真嗣監督×草彅剛主演の『日本沈没』が製作されました。日本が沈没しないという衝撃的な内容で批評面では振るわなかったのですが、邦画バブル期だったこともあって観客動員は好調で、興行成績53億円の大ヒットとなりました。

そして今回は4度目の映像化にして、初のアニメ化ということになります。

感想

偶然性に頼った展開が多すぎる

小説版、及び過去の映像化作品は、日本沈没という意表を突いた大ネタを科学的に説明し、そんな未曽有の事態に人々はどう反応するのかを描いたシミュレーション作品という側面が強く打ち出されていました。

本作も、少なくとも2話まではその路線が取られています。

最大の被災地が首都だったこともあって正確な情報が掴めず海外のサイトを頼りにしたり、スマホなしではなかなか家族と出会えないという点はリアルでした。

この路線で突き進んでくれれば素晴らしいシミュレーションドラマになったかもしれないのですが、3話以降は偶然性に頼った展開で話が進むようになって途端に面白くなくなります。

お父さんが山芋を掘っていたら偶然にも第二次世界大戦時の不発弾を掘り当て、しかもスコップを当てた場所が偶然にも信管だったので爆発とか、ここでお父さんを死なせたかったので無理矢理殺しましたという感じで冷めました。

他にも、主人公が有毒ガス地帯に足を踏み入れようとしたジャストタイミングでパラグライダーが飛来して「やめろ、そっちに行くな」と警告してくれて、ヘルメットをとると弟が尊敬していたカリスマ的なユーチューバーでしたとか、主人公が重症者の看病を買って出ると、その患者は日本海溝の異変に気付き、いち早く日本沈没の可能性を研究していた小野寺でしたとか、行く先々で重要人物と巡り合うというご都合主義の嵐。

また後半にて主人公のパーティーが津波に遭ってバラバラに離散するのですが、救命ボートで大海原を数日間漂流した後に全員が再開を果たすという、ドエライ展開を迎えます。

第一話では自宅という共通の目標を目指して動いてもなかなか出会うことができなかった彼らですが、後半では大海原を何の目標もなく漂っていても再開ができるという特殊能力を身に付けたようです。

こうしたご都合主義で話が進んでいくものだから、見ていることが段々バカバカしくなってきました。

無駄に長い宗教団体のくだり

話はちょっと戻りますが、中盤にて主人公達は宗教団体の拠点に避難をします。

その団体はオウム真理教のサティアンを思わせるような巨大施設を有し、食糧や日用品の備蓄がすごいため日本全体が危機に陥っていても通常の生活を維持できており、避難民の受け入れもしています。

彼らは大麻を栽培しており、どうやらこの施設は違法な大麻ビジネスの収益で作られたもののようです。そもそもここは霊能力者の女性が障害を持つ実子の居所として作った団体であり、八百長で相撲界を追われた元力士や内戦で家族を失ったユーゴスラヴィア人ら、行き先のない者達が身を寄せる場にもなっています。

こうした設定から、非合法なものが有効になる場合もある、一般社会で無視された者・爪弾きにされた者が行き着く先も必要であるというメッセージこそ汲み取れるのですが、問題はこのくだりが複数話にまたがっており、異様に長いということです。

日本沈没というテーマにおいて、宗教団体の存在意義のようなエピソードを見たいと思う視聴者がどれほどいるのでしょうか。完全に論点ずれを起こしています。

加えて主人公達をここに導いた老人の設定が謎過ぎます。田舎のスーパー経営者で、弓の名人で、物理的に破損した携帯ゲーム機をハンダゴテひとつで修理できるほどの腕前を持つエンジニアで、モルヒネ中毒者で、赤の他人の子を自分の孫だと思い込んで取り戻そうとするサイコパス。本編を見ていない方には何のこっちゃ分かりませんが、本当にこういうキャラクターが出てくるのです。

この老人と宗教団体の因縁のようで因縁ではない謎の絡みが延々と繰り広げられ、自分は何を見ているのか分からなくなりました。このくだりは完全に無駄でしたね。

目的がよく分からなくなる終盤

本作は日本が沈没した後にも話が続きます。

元日本列島だった場所をボートで移動する一行は、小野寺から示された座標を元に、元広島県があった場所を目指します。そこには小野寺と田所教授の研究データが眠っているということで、その回収へと向かうのですが、この時点で小野寺は生きてるんですよね。

仮に小野寺が死んでおり、データを見なければその内容を知ることができないのならこのくだりにも筋が通るのですが、当の小野寺が生きているのであれば本人から内容を教えてもらえば済むような気が。

しかも後に判明するそのデータの中身とは、数年後には日本列島は再度隆起を始め、100年程度で復元するという内容であり、今知っておく必要のある内容でも何でもないので、これまた何やってんだかという状態となります。

こんな無駄なことのために一行が命をかける物語に、どうやって手に汗握れと言うのでしょうか。

いろんな映画へのオマージュが楽しい

文句ばかり書いていたので、最後はちょっとした楽しみに触れておきますね。本作スタッフは本当に映画好きのようで、いろんな映画へのオマージュが含まれています。

救命ボートで漂流中の主人公が発行性のプランクトンに囲まれる場面は『ライフ・オブ・パイ』、潜水が得意だと言ってある人物が自己犠牲を買って出る場面は『ポセイドン・アドベンチャー』、もうダメだろうと誰もが感じる人物に対して手荒な人工呼吸をして蘇生させる場面は『アビス』という具合です。

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私が気付いていないだけで、他にもいろいろあると思うので、それを探してみると映画力を試されているようで楽しいのではないでしょうか。

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