バクラウ 地図から消された村_舐めてた寒村が実は…【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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得体の知れない脅威
得体の知れない脅威

(2019年 ブラジル)
村の状況がじっくり描かれる前半はちょっと退屈なのですが、容赦のない暴力の花が咲く後半の展開には大興奮でした。社会的なメッセージ性よりも何も、カタルシスに溢れたアクション映画として素敵でした。ここまできっちりと反撃のカタルシスが描かれた映画は近年まれです。

感想

みんな平等に貧しい村バクラウ

タイトルになっているバクラウという架空の村が本作の舞台。前半ではその住民たちの日常がじっくりと描かれるのですが、まぁ独特な村です。

人種的にはアフリカ系が多いのですが、先住民系や白人系もいるので人口が少ない割に人種は多様です。ただし人種別に固まったりするでもなく、全員が「バクラウ村民」というアイデンティティの元で結束しているようなので、人種の違いはあまり意味を為していませんが。

そして村には売春宿があるのですが、特に日陰者として扱われるでもなく普通の商店と同じ感覚で営業しています。売春婦たちも特に恥じるでも隠すでもなく、売春宿の窓は開けっぴろげ状態。

また迷惑系を通り越して殺人系YouTuberになった元村民の若者の動画を(Googleに削除されないのか?)、都会で頑張ってる知り合いの子を見守るような温かい目で見たりと、この村には社会的な善悪で評価したり、他人を自分より上や下に位置付けるような価値観は存在していないことが分かります。

辺鄙な場所にある貧しい村なんだが、村民同士は仲良く穏やかにやっているということは十分に伝わってきました。

と同時に、殺人系YouTuberの件からもお察しの通り、村人以外の生死には全くと言っていいほど関心がないということも伺えます。この辺りが何とも不気味なのですが、この伏線は後半できっちりと回収されることになります。

『ハード・ターゲット』な敵グループ

そんなバクラウにやってくるのがアメリカ人のマンハント集団。

リーダーのマイケル(ウド・キアー)という男だけはプロの傭兵か軍人っぽいのですが、残りはマイケルに金を払って殺人ゲームを楽しんでいる一般客だと思われます。ジャン=クロード・バン・ダム主演の『ハード・ターゲット』(1993年)の敵グループのようなものですね。

ブラジルの山奥にあるバクラウはそもそも人口が少ない上に、独特の風土があるため外部から異変を察知されづらく、全滅させたところで特に問題は起こらないのではということで、彼らマンハント集団は狩猟の場としてふさわしいと踏んだようです。

そしてグーグルマップからも消してしまい、このまま村ごと葬り去れるという状況に持ち込んだところでゲーム開始。

とにかくこいつらが品性下劣な悪辣集団で、ブラジルの貧しい村民の命などなんとも思っていません。人を殺して「やっほ~!」と言って盛り上がったりと本当に最低です。ホームレスやヴァン・ダムを狩る『ハード・ターゲット』のクズ野郎どもの方が、まだ品があったと言えるほどです。

舐めてた寒村が実は武闘派ゲリラの村でした

マンハント集団の内2名は、村はずれにあるポツンと一軒家にやってきます。すると全裸のおじいさんが植物に話しかけながら水やりをしており、武装しているこちら側は楽勝ムード全開。

それは戦闘力5のおっさんを見たラディッツのような状態なのですが、実は相手は戦闘力5どころか猛烈な戦闘民族だったことを思い知らされます。

いったん家に入ったおじいさんは、年代物のショットガンでマンハント集団を撃退。一人は頭を吹き飛ばされ、一人は腹を撃ち抜かれる。この逆転劇には大興奮しました、というかビックリしました。まさかこんな展開になるだなんて。

しかもおじいさんは突然のバイオレンスに気持ちを高ぶらせているわけでもなく、「あちゃー、痛かったねぇ」みたいな感じで、暴力や殺人は日常茶飯事ですみたいな顔をして対処。殺人マシーンとして圧倒的な格の違いを見せつけます、全裸で。

かくして状況を理解したバクラウは村全体で臨戦態勢に入り、残りのマンハント集団が村のメインストリートに入ってくるのを手ぐすね引いて待っています。

実はこのバクラウ、一昔前までは反政府ゲリラなどを匿っていた村であり、倒した敵の首を刈って並べるなど、容赦のない戦いぶりでブラジル政府からも恐れられる存在だったことが歴史資料館の展示から分かります。

そんなヤバい村だと知らず足を踏み込んでしまい、返り討ちにされるマンハント集団。この逆転劇は本当に爽快でした。

強いて不満を言うならば、マンハント集団の人数が少なすぎて仕返しがすぐに終わってしまうことであり、もう何人か余計に殺して欲しいなぁと思ったほどです。

警告は素直に聞くべきという教訓

そして結果から振り返るに、中盤にて村を訪れたバイカーに対してやたらと「村の資料館を見ていけ」と言っていたのは、ここがどういう村かを理解して素通りしろということだったのでしょう。弾き語りの老人がバイカーにウザがらみしていったのも、俺らが対処する前によそへ行きなさいということなのだろうし。

しかし彼らは資料館を見なかったし、変なのに絡まれたとしか思わなかった。そのためにえらい目に遭わされたというわけです。

またマンハント集団の狼藉を黙認した市長との関係性ですが、恐らくこの市長はバクラウがどういう村かの認識は持っていたのでしょう。

だからこれまでは厄介な存在であるバクラウに対してもはっきりとした圧力をかけることはしてこなかったのですが、丁度良くそこに阿呆なアメリカ人たちが来てくれた。

事情を知らないこいつらがバクラウを亡きものにしてくれれば漁夫の利を得られると考えた市長は、アメリカ人が為すままにしておいたのでしょう。結局はバクラウが勝ってしまって目論見は外れるのですが。

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