(2022年 アメリカ)
1994年のビデオテープを修復することで驚きの発見をするというファウンドフッテージものの一種なのですが、ビデオというメディア特有のレトロ感を作品に反映している上に、ミステリーもかなり緻密に作りこまれており、よく出来た作品だと言えます。テンポが悪いのが玉に瑕でしたが。
登場人物
現代パート
- ダン・ターナー:フィルム修復のプロ。1994年に火災事故のあったヴィッサー・アパートに残されたビデオテープの修復を依頼される。少年期に自宅の火災で家族を失ったトラウマを持つ。
- バージル・ダベンポート:謎の企業LMG社の経営者。ダンにビデオテープの修復を依頼する。
- マーク・ヒギンズ:ダンの友人の心霊現象愛好家。ネット環境のない研究施設にいるダンに代わり、NYでの調査を行う。
- ボビー:LMG社の研究施設の管理人
- トーマス・ベローズ:かつてパトリシアが残した録画テープのデジタル化のためにダベンポートに雇われ、LMG社の研究施設でその作業にあたったが、精神錯乱状態に陥った。
1994年パート
メロディの関係者
- メロディ・ペンドラス:学生で、卒業制作としてヴィッサー・アパートの住人たちの口述記録をビデオに残そうとしている。ただし真の目的は、自分を捨てた実母ジュリア・ベネットの捜索であり、歴史学者だったジュリアが関連していたというヴィッサーに手掛かりを求めてやってきた。
- アナベル・チョー:メロディの友人。カサンドラから受け取った絵具に精神を毒されてしまう。
- スティーブン・ターナー:ニューヨーク大学の心理学教授で、メロディの主治医。ダンの父親でもある。後に自宅の火災で死亡することとなる。
ヴィッサー・アパートの住人
- カサンドラ:美術商で、かつて有名画家のエレノアという恋人と共にヴィッサーアパートにやってきた。部屋にはエレノアのコレクションが多く置かれており、その中には悪魔の彫像も含まれている。
- サミュエル・スペア:コロンビア大教授で、アパートのペントハウスに住んでいる。
- ジェシカ・ルイス:愛称はジェス。ヴィッサーアパート出身の少女で、1994年当時高校1年生。たまに痙攣を起こし、その治療のため両親はルッソ神父を頼っている。
- タマラ・ステファノ:ローマ出身のオペラ作曲家。気味の悪い曲を作曲している。
- ヘレン:彫刻家で、タマラのオペラで使う面を作っている。
- ビアトリス・レイエス:プエルトリコ出身で16歳でアメリカに移住。タロットカード占いや降霊術が得意。
- パトリシア:テレビドラマを録画するのが趣味で、外部倉庫を借りるほどの数の録画テープを持っている。
- ジョン・スミス:いかにも偽名っぽい名前のアパートの管理人。「6階は立ち入り禁止」と連呼する。
その他
- ルッソ神父:アパートの教区のカトリック神父であり、人格者として慕われている。ジェシカの症状を悪魔憑きと見ており、彼女に対して悪魔祓いを試みている。
- エヴィー・クレスト:舞台女優で、エレノアの絵の購入者。映画プロデューサー ウィリアム・クレストの娘であり、後にダンは、その幻の作品『ザ・サークル』のフィルム補修に関わることとなる。
- クリス・リー:ヴィッサー・アパートの6階に隔離されているヤク中。アパートからの脱出の手伝いをメロディに依頼することの見返りとして、ジュリア・ベネット捜索を手伝うと言う。
感想
ビデオテープ×ホラー
動画配信が主流の時代にビデオテープの人気が再燃しているとの報道を見かけました。
かく言う私も数年前にVHSの再生機を調達し、家に眠る大量のビデオテープの中身を宝探し感覚で確認しては、子供の頃に楽しみにしていたバラエティ番組などを見て、ひとりで盛り上がったりしています。
そんなひそかなブームをエンタメに反映したのが本作『アーカイブ81』であり、フィルム補修のプロが1994年のビデオテープを修復することで、とんでもないものを発見することとなります。
作品全体のフォーマットとしては『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)を皮切りとして2000年代に大ブームになったファウンドフッテージものに近いのですが、そこにビデオというオールドメディアならではの郷愁感をプラスしており、独自性を発揮しています。
また、ビデオテープとホラーの組み合わせと聞かされて思い出すのが和製ホラーの代表作『リング』(1998年)ですが、その印象的な演出もばっちり移植されており、お約束ながらも「ちゃんとやってくれた」いう喜びがありました。
緻密なミステリー
あらすじはこうです。
フィルム補修の専門家であるダンが、ダベンポートという金持ちからビデオテープの補修を依頼されます。ただしこのビデオテープが、1994年の火災現場に残されていたものとのことで、その出どころがえらく不気味なものだし、四半世紀の前のテープを今になって修復しろと言ってきたダベンポートの背景も定かではない。
さらには、彼が経営するLMGという会社の情報がネット上にはなく、全体的に怪しさ全開。
しかもダンは人里離れた研究所に連れて行かれて、たった一人で「ここで作業しろ」と言われたものだから、いよいよ訳アリだなと思うわけです
- ビデオテープに写っているものは何なのか
- ダベンポートの目的は何なのか
この2点が本作のミステリー要素なのですが、一見すると無関係だと思われたもの同士の因果関係が徐々に明らかになったり、当初は傍観者だと思われていたダンが、実は本件とのつながりを持っていることが発覚したりと、様々な構成要素が有機的に結び付けられていくので、謎解きの面白さはかなりあります。
そして、終盤に明かされる謎の正体も拍子抜けするものではなく、全体的にしっかりと作られた物語だという印象です。
ただし間延びする
ただし、話の進みが遅く間延びするということが、本作の欠点となっています。
加えてホラーの割にショックシーンが少なめで、全体的に淡々と進んでいくので、遅いわ薄いわという感じで、眠気を誘う部分も一つや二つでは効きません。
特に、ほとんどのネタが割れた後の最終2話はかなり長く感じられました。
勿体ぶった語り口をやめてもう少しスピードアップしてくれれば見やすかったと思うのですが。
コメント
個人的にはなんか応援したくなる主演の俳優さんの演技も好きでしたし、
話的にシーズン1でもまとまっていたので、あまり苦も無く見れましたね。
逆にテンポだけ意識した最近のデスゲーム系みたいな実写映画は、アニメにテンポではまけるので、こういうじっくりした一瞬眠くなるくらいのほうが、最近では珍しくて、じっくりみれましたね。
エイリアン系悪魔の造形自体悪くはないと思うんですが、
石像のデザインの不気味さからすると特撮怪人感がつよくて、不気味さが減ったの唯一の減点かな~
見せ方とかちょっとした演出でどうにかなる範囲だったようには思えますが
完全な実体化自体しない設定でもよかったようなきもしますね。
ただ、好きなドラマでしたけど、現代だとシーズン2は作られないだろうな~ってのは納得はできますね。
Netflix自体がその辺シビアというかつまらない判断はやいようなのでw
落ち着いたテンポがよかったんですよ
それが若い人の心を射止められずにシーズン更新とはいかなかったんでしょうけど、シーズン1の時点で十分カタはついたと思うので、これ以上は作らなくてもよかったかなと思います。