ベルベット・バズソー: 血塗られたギャラリー【4点/10点満点中_怖くないホラー】(ネタバレあり感想)

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得体の知れない脅威
得体の知れない脅威

(2019年 アメリカ)
身寄りのない老人が描き残した数千点もの絵画を、画廊がタダ当然で入手した。一連の作品には人を魅了する力があり、画廊は高値で売ろうとするが、周辺で不審死が相次ぐようになる。


© Netflix

4点/10点満点中 テーマに内容が追い付いていない

脚本・監督を務めたダン・ギルロイについて

ダン・ギルロイは2014年の監督デビュー作『ナイトクローラー』で一般的な知名度を獲得しましたが、本業は脚本家であり、1992年のポンコツSF映画『フリージャック』で初めてクレジットされて以降は、ターセム・シン監督の『落下の王国』、トニー・ギルロイ監督の『ボーン・レガシー』などに参加しました。同じ姓ということでお察しのこととは思いますが、トニー・ギルロイはダンの実兄です。また、本作の編集を務めたジョン・ギルロイは双子の兄だということです。おそるべし、ギルロイ・ブラザーズ。

また、『ナイトクローラー』と本作の2作に出演しているレネ・ルッソは彼の奥さんです。今でこそ厚かましいおばさん演技もこなしていますが、90年代のレネ・ルッソはハリウッドを代表する美人女優の一人でした。そんなルッソを落とすとは、ギルロイは私生活でもなかなかのやり手のようですね。

アートを汚す者達にアートが復讐する物語

本作の主要登場人物は以下の3名。彼らはアートを私利私欲のために弄び、アートによって復讐されることとなります。

彼らが取り扱ったのはディーズという謎の老人が大量に遺した絵画。誰の目にも傑作と感じられるほどの圧倒的なパワーを持ったディーズの作品群に商機を見出した3人はこれを高値で売り出すことにするのですが、実はこれらは評論家や画商達に価値を見出されず世に出ることのなかった芸術家やアート作品の怨念の塊のようなものでした。

評論家・モーフ(ジェイク・ギレンホール)

評論家として第三者的な視点での批評を書いていることにはなっているものの、実際には親しいアートディーラーが取り扱う作品に高値が付くよう提灯持ちの記事を書いたり、個人的に気に入らない芸術家の作品を貶して個展を台無しにするようなことをしています。

どのサイドに立っているのかが分かりやすい以下の2名とは違い、公正中立な立場にいると見せかけてある方向へ誘導するようなことをしている分、もっとも罪深い存在であると言えます。

画商・ロードラ(レネ・ルッソ)

元はパンクアート集団「ベルベット・バズソー」に所属していたものの、自分には才能がないことを認識して創作活動を断念し、以降は他人の作品を売る側に回った人物です。有望な芸術家を発掘して抱え込み、モーフと組んで値段を釣り上げてアートを分からない金持ちに売りつけるというえげつない商売をしており、もはやアートに対するリスペクトは皆無ともいえる人物です。

ディーズの絵が持ち込まれた際には、小出しにしながら売らないと一点毎の価値が下がると言って何千点とある絵を倉庫にしまい込み、せっかくの傑作の数々が誰の目にも触れないという状況を作り出しました。

アートアドバイザー・グレッチェン(トニ・コレット)

元は美術館勤務でアートを大衆の目に触れさせる活動に従事していたものの、物語の途中で金持ち専用のアートアドバイザーに転職しました。アートアドバイザーとは、アートの価値は分からないが投資目的で所有したい金持ち相手に、どの作品を買い付けるべきかを指南する役割であり、多くの人の目に触れるべきアートを価値の分からない人間の所有物にするという活動を行っています。

さらに彼女は古巣の美術館へ行き、今話題のディーズの絵画を展示させてやるから、その代わりに価値を釣り上げたいと思っている手持ちのアート作品も併せて展示し、美術館による箔付けを要求します。彼女もまた、アートの価値を捻じ曲げる人間の一人です。

テーマと内容が整合していない

本来アートを生み出す側でも鑑賞する側でもない人間が、アートの殺生を決めている。これはおかしいじゃないかというテーマは良いのですが、このテーマとうまく整合していない内容面での不備はあったと思います。

第一の犠牲者はロードラの下で働いていた設営技師であり、彼はディーズの絵画に魅せられ、お蔵入りしようとしていた何点かを盗もうとして殺されるのですが、なぜ彼が殺されたのかがよく分かりませんでした。彼はアートで不当な利得を得ていた人間ではなく、むしろ「本来こういう人にこそアートは届けられるべき」と言える人物ではないでしょうか。

また、ディーズ絡みでもっとも悪どいことをしていたのはロードラだったのですが、真っ先にターゲットにされるのがロードラではなかったりするために、殺される順番がおかしいように思いました。

ホラー映画なのに怖くない

犠牲者達の殺され方はバラエティに富んでいます。モーフはかつてレビューで貶して倉庫で埃を被っていたアート作品に襲われ、ロードラは過去に捨てた信念とも言えるベルベット・バズソーのタトゥーに切り刻まれ、グレッチェンは値段を釣り上げようと画策していたオブジェによって失血死させられました。そうした個々の見せ場は独創的で面白かったのですが、恐怖が持続しないんですよね。

また、113分という上映時間はホラー映画としてはやや長めで、間延び感は否めませんでした。

Velvet Buzzsaw
監督:ダン・ギルロイ
脚本:ダン・ギルロイ
製作:ジェニファー・フォックス
製作総指揮:ベッツィー・ダンバリー
出演者:ジェイク・ジレンホール、レネ・ルッソ、トニ・コレット、ゾウイ・アシュトン
音楽:バック・サンダース、マルコ・ベルトラミ
撮影:ロバート・エルスウィット
編集:ジョン・ギルロイ
製作会社:Netflix、ディース・ピクチャーズ
配給:Netflix
公開:2019年2月1日
上映時間:113分
製作国:アメリカ合衆国

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