(1987年 西ドイツ)
高名なインディーズ作品ではあるけど、個人的にはイマイチだった。主人公の人となりが分からないのでドラマの立ち上がりが悪い一方、流れ始めるとトントン拍子にうまくいきすぎる展開も安っぽい。唯一、「あんたら仲良くなりすぎ」と言って去っていく彫り師だけが良かった。
感想
タイトルと、砂漠の中のタンクのイメージは数十年前から知ってたけど、特に興味を持てず鑑賞してこなかった映画。
本日12月31日でAmazonプライムでの配信が終了する上に、SNSによると権利元の関係で将来的にもサブスクに戻ってくる可能性は低いとのこと。
実は先日TOKYO MXで放送されたのも録画してたんだけど、そちらはSD画質のMX2での放送だったので、フルHDでの鑑賞機会は本日最後とのことで、駆け込みで鑑賞した。
80年代後半から90年代前半にかけてのミニシアターブームの発端となった作品として高名な作品なのでそこそこ期待をしていたんだけど、個人的にはイマイチどころかイマニ、イマサンくらいハマらなかった。
複数バージョン存在することでも有名な作品で、今回の鑑賞はニューディレクターズカット版というバージョンだったけど、さすがにこの内容で108分は間延びした。91分の劇場版だとまた印象は違ったのかもしれないが、現在、劇場公開版はリリースされていないらしい。
ちょっと調べてみると、当時もののレーザーディスクは今でもお手頃価格で買えるようなんだけど、わざわざ買おうと思うほどハマらなかったしなぁ。
カタコトの英語しか話せないドイツ人のおばちゃんが、どういう理由だかわからないがアメリカの砂漠のど真ん中で旦那らしき人と喧嘩し、ひとり車を降りてバグダッドカフェという寂れたドライブインにやってくる。
クセ強めな住民たちとおばちゃんとの交流が作品の骨子となるんだけど、主人公のおばちゃんの人となりがよく分からない。
意図的に情報を伏せた演出であることは分かるものの、この人のバックボーンが謎なのでドラマの立ち上がりが滅茶苦茶に悪く、最初30分は何度も寝落ちしかけるほど退屈した。
もう一人の主人公がバグダッドカフェを切り盛りする女主人なんだけど、いくら何でも彼女はカリカリしすぎ。
バグダッドカフェの経営は思わしくないうえに、従業員も家族ものんびりしているので何もかもにイライラしている様子なんだけど、客としてきたドイツ人のおばちゃんにも怒鳴ったりするのがアメリカ風。
そういえば、学生時代にバックパッカーとしてアメリカを旅行した際、安いユースホステルの窓口係は不機嫌さを隠そうともしていなかったのが印象に残っている。
スーパーやコンビニ店員までが親切な日本とは違い、アメリカではサービスの価格帯によって店員の態度はっきりと違ってくる。監督はその点までを描写しようとしていたのであれば、極限のリアリティとも言えなくはないが。
演じているのは90年代によく見かけたCCH・パウンダーだけど(『ER緊急救命室』『フェイス/オフ』(1997年))、若い頃の彼女がとても細くて驚いた。
女主人の心境が反映されたかのように荒れ放題のバグダッドカフェ。
ドイツ人特有の几帳面さで、「こんなんじゃ商売にならんでしょ」と言わんばかりにバグダッドカフェを片付け始めるおばちゃんだけど、女主人からすれば自分の内面にまで土足で上がり込まれているような感じがして良い気分がしない。
黙々と片付けるおばちゃんvsイライラする女主人のバトルが繰り広げられる前半は、見ていてとてもしんどかった。
そのうち二人の波長が合い始めるとバグダッドカフェの経営も上向くんだけど、そのきっかけが、おばちゃんの持っていた安っぽい手品セットでショーをしたら大ウケというのは、いくら何でも安直すぎる。
「アメリカ人って、こんなんでも喜ぶんでしょ」という高度な批判精神すら感じてしまったほどだ。
就労ビザがないってことでいったんおばちゃんは国に返されるんだけど、また戻ってきちゃうクライマックスも個人的にはイマイチだった。
『男やつらいよ』や『水戸黄門』がDNAに刻まれている日本人感覚からすると、役割を終えた風来坊は去って行くべき存在なのだ。
「あんな達、仲良くなり過ぎよ」と言って去っていった彫り師のお姉ちゃんだけは良かった。
寂れた場所だからこそ居心地よかったのにという住民だって中に入るのだ。
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