キャスト・アウェイ_箱の中身は衛星電話!?【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

スポンサーリンク
スポンサーリンク
人間ドラマ
人間ドラマ

(2000年 アメリカ)
淡々と無人島生活が描かれる前半と、過ぎ去った時間は取り戻せないという人生観が詰め込まれた後半とに分かれた構成となっているのですが、それぞれに味があって実によく出来たドラマ作品でした。こういうのを「良作」というのでしょう。

作品解説

トム・ハンクス発案のオリジナル企画

『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年)の監督・主演コンビの作品なのですが、小説の映画化だった『フォレスト・ガンプ』に対し、本作は映画オリジナル企画。ハンクスが設立した製作会社プレイトーンが製作を行っています。

90年代前半にトム・ハンクスはフェデックスの飛行機が日に3便も太平洋を横断しているという記事を読み、もしもそのうちの一機が墜落したらと想像したことが企画の出発点でした。

そこから4年間の絶望と戦う男の物語へと発展させていき、『アポロ13』(1995年)の脚本家ウィリアム・ブロイルズ・ジュニアと共にアイデアを練り上げていきました。

ブロイルズは海兵隊出身という異色の経歴を持つ脚本家であり、詳細なテクノロジー描写を得意としています。そんな彼の資質が本作の無人島生活のディティールアップに繋がったのでしょう。

ただしどうしてもストーリーが完全なものにはならず、ハンクスにとっては旧知の仲であるロバート・ゼメキスが参加したことでようやく形になりました。着想から実に6年後でした。

1999年1月に撮影が開始されたのですが、2か月後に一時中断。無人島で激やせした主人公像を作るためにトム・ハンクスが減量に入ったためであり、ハンクスのダイエット待ちの間、ゼメキスとスタッフ達はハリソン・フォード主演のサスペンス『ホワット・ライズ・ビニース』(2000年)を製作。

ハンクスが22.7kgもの減量に成功した1年後に撮影を再開し、無事完成しました。

興行的には大成功した

本作は2000年12月22日に全米公開され、大ヒット中だったメル・ギブソン主演の『ハート・オブ・ウーマン』(2000年)を抑えて全米No.1ヒット。

なお本作と『ハート・オブ~』の両方にヘレン・ハントが出演しており、彼女の作品選別眼が非常に優れていたということが分かります。

その後も勢いは衰えずV3を達成し、全米トータルグロスは2億3363万ドルに上りました。

国際マーケットでも好調であり、全世界トータルグロスは4億2963万ドルという大ヒットとなりました。

感想

究極のサバイバル映画

フェデックスの貨物機が太平洋上で墜落し、たった一人生き残った主人公チャック(トム・ハンクス)が無人島に漂流してサバイバルすることが本作のざくっとしたあらすじ。

墜落直前に飛行機は予定航路から外れていたため、チャックが救助隊から発見される可能性は絶望的という状況までが付加されています。

そこで描かれるのは無人島でのサバイバルなのですが、映画的に面白くするための要素を付け足すということをせず、生存のための地味~な活動のみを淡々と映し出したことが本作の特色となっています。

例えばアンソニー・ホプキンスがアラスカで遭難する『ザ・ワイルド』(1997年)では狂暴なグリズリーにしつこく付き纏われるとか、一緒に生き延びたアレック・ボールドウィンから命を狙われているのではないかというサスペンス要素の追加があったのですが、本作にそういったものはありません。

問題となるのは飲み水・食料・火の確保のみであり、限られた物資の中でチャックが問題を解決していく様が実にじっくりと描かれます。

脚本家のウィリアム・ブロイルズ・ジュニアは『アポロ13』(1995年)でも、禿散らかしたNASA職員たちが船内物資のみを使って解決策を模索する様を実にドラマティックに盛り上げていましたが、本作でもその手腕は健在。主人公が火を起こしをするだけでこんなに盛り上がれる映画ってないと思います。

そして、こうした単純作業の繰り返しがチャックのメンタルを救っていることも描写されます。

無人島にたった一人放り出され、時が経てば経つほど救助隊に発見される可能性は低くなっていくという、一度考え込んでしまうと絶望の淵に追い込まれそうな状況において、主人公は自らに課したルーティンをひたすらこなし続けることで考えることをうまく回避しています。

遭難前のチャックは仕事人間であり、アウトプットを生み出すため歯車になることを苦にしてこなかった人物なのですが、そうした彼本来の気質が無人島生活にも生かされているというわけです。単純な文明批判に陥らないこの製作姿勢はなかなか良いと思いました。

また「ウィルソン」と名付けられたバレーボールとの対話もよく考えられています。

主人公はバレーボールを話し相手と見做すことで平常心を維持し、また考えをまとめる時や、状況を客観視しなければならない時に、この相棒をうまく利用しています。ウィルソンは錯乱の象徴ではなく、チャックの冷静な思考を支えるため意図的に生み出されたキャラクターであるというわけです。

後にウィル・スミス主演の『アイ・アム・レジェンド』(2007年)においても、一人になった主人公が犬を話し相手と見做すことで平常心を維持するという描写がありましたが、本作はその先駆けだと言えます。

なお初期稿においては「善いチャック」と「悪いチャック」との対話という設定となっており、そのまま撮影すると『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムのようになったと思われるのですが、それだと主人公の錯乱が強調され過ぎてしまうので、やはりバレーボールとの対話はナイスアイデアだったと言えます。

過ぎ去った時間は取り戻せない

冷静な観察眼によって無人島周辺の海流のパターンを読んだチャックは、手製のイカダで脱出に成功。貨物船に発見されるという幸運もあって、文明社会へと復帰します。

チャックは実に4年間を無人島で過ごしたのですが、メンタル面での傷が浅かったこともあって、わずか4週間後には元の生活に戻されます。

同僚は「何もかもを元通りにしてやる!」と言うのですが、決して元に戻せないのが婚約者との関係でした。

チャックには事故直前に婚約していたケリー(ヘレン・ハント)という恋人がいて、彼女との再会を大きな希望にして無人島生活を乗り切ってきたのですが、4年ぶりに帰郷するとケリーは他の男性と結婚し、子供もいたという『ローリング・サンダー』(1977年)的な状況況が発生します。

もちろんチャックにとっては残念な状況ではあるのですが、かと言ってケリーの夫を名乗る元知人が現れてもそこまで取り乱している様子もないので、彼にとっては想定の範囲内だったのかもしれません。

ケリーを愛すればこそ、自分を待ち続けて人生の大事な4年間を無駄にするよりも、彼女が幸せを見出せる道を歩んでいてホッとしたという思いがあったのかもしれないし。

だから現状を変えさせようという気はないのですが、ただひとつ気になったのが彼女の思いで、それを確認するためにチャックはケリーの元を訪れます。

最初、ケリーは淡々とチャックに接するのですが、別れ際に感情を爆発させます。彼女はチャックを思い続けてきたのだが、死んだと思って今の家庭を築いた。しかしチャックとやり直せるのであれば、今の家庭を捨てても構わないという態度を見せるのです。

それを受けたチャックは、彼女の気持ちだけを確認して、元の日常へと帰らせます。僕たちの人生はとっくの昔に分岐してしまったんだから、今さら元に戻しようもないでしょとでも言わんばかりに。

誰が悪いとか、どの選択が正しかったかという問題とは別に、起こってしまったことはもう戻しようがないという時間軸の冷徹さがここで突き付けられるわけです。

メロドラマ的な甘さのないこの結末は心に刺さったし、過去に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)を製作したゼメキスが、この結論を出したというところにも意義を感じました。

箱の中身は衛星電話!?

その後、チャックは4年前に届けられなかった荷物を荷主に送り返すという活動を開始します。

そこで女性の荷主(ラリ・ホワイト)と出会って終劇となるのですが、トム・ハンクスによると、この曖昧な結末の後にチャックとこの荷主はくっつくとのこと。

なお、チャックが最後まで開封せずにおいた天使の羽が描かれた荷物の中身は一体何だったのかは、公開直後より論議を巻き起こしました。

これに対してゼメキスは「太陽発電・防水仕様の衛星電話」と答えています。だとするとチャックは無人島からでも救助を呼ぶことができたということになるのですが、当然のことながらこれはゼメキスの冗談。

箱の中身には意味がない、いわゆるマクガフィンというものなので、深く考えても仕方がないのです。作り手すらあの箱の中身を考えていなかったのだから。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
記事が役立ったらクリック
スポンサーリンク
公認会計士の理屈っぽい映画レビュー

コメント