心の旅_綺麗事すぎてつまらない【3点/10点満点中】(ネタバレあり感想)

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(1991年 アメリカ)
冷徹な敏腕弁護士が不慮の事故から記憶喪失を患い、好人物に生まれ変わるドラマ。

4点/10点満点中

■出演者のパフォーマンスは楽しめた

珍しいハリソン・フォードの人間ドラマ

トム・ハンクス辺りが嬉々として演じそうな作品なのですが、主演はハリソン・フォードです。この人はいつも困った顔をしているだけで演技に幅がないと言われているのですが、意外なことに本作では事件前の擦れた弁護士も、事故後のイノセントなヘンリーも違和感なくこなしており、実は相当うまい人だったことが分かりました。

アネット・べニングがこんなに美人女優だったとは

ヘンリーの奥さんサラ役はアネット・べニング。1999年の『アメリカン・ビューティ』での押しの強い中年女性役の印象が強く、美人女優という認識を持っていなかったのですが、33歳の時に出演した本作では物凄い美人だったので驚きました。こちらも意外な収穫でした。

■脚本はJ・J・エイブラムス

脚本を書いたのはハリウッドのトップ・クリエイターに成長したJ・J・エイブラムスであり、本作執筆時点では若干23歳でした。23歳で脚本を大手スタジオに買われて当時世界一のスターだったハリソン・フォード主演で製作され、脚本家として単独クレジットされとは、なんたる早熟ぶりでしょうか。

この人はSFやアクションのイメージが強いのですが、その方面に振り切るようになったのは1998年にジェリー・ブラッカイマー製作の『アルマゲドン』に参加した辺りからで(その際に担当したのは主にセリフの書き換えで、スペクタクル部分ではなかった)、キャリアの最初期にはメル・ギブソン監督・主演の『顔のない天使』や本作のような人間ドラマを主に執筆していました。

なお、本作にはフードボーイ役で出演しています。

■まったく深みのないドラマ

展開が予定調和すぎる

記憶障害を患って人間が丸くなる話という話は映画界においては結構ベタで、1988年の『潮風のいたずら』や1996年の『ロング・キス・グッドナイト』、中には1999年の『アイアン・ジャイアント』のような変化球もありましたね。

本作は、展開もベタ中のベタを行きます。事件前のヘンリーは徹底して悪い奴。医療訴訟で完膚なきまでに弱者である原告を痛めつけ、家具屋に悪態をつき、家族に対しても自己中心的な態度をとります。イヤな奴としてはベタ中のベタな描写の連続で、思わず笑ってしまいそうになりました。

事件後も想定外のことはほとんど起こらず、イノセンスに生まれ変わった主人公が正論を説いて回り、最終的に「家族が一番。愛がすべてさ」でめでたしめでたし。何という一本気な内容なんだろうと思いました。

事故後のヘンリーが本当に善なのか

ヘンリーは古巣の弁護士事務所を辞め、娘をお嬢様学校から退学させて、家族みんなで再スタートという終わり方をするのですが、これが本当にハッピーエンドなのかという点が気になりました。

ヘンリーの上司も同僚も事件後のヘンリーを気遣っており、弁護士として活動できない状態であるにも関わらずヘンリーに事件前と同じ居場所を与え、給料も支払っていました。ヘンリーとヘンリー一家にとって最大限の援助と保護を与えてくれていたのが弁護士事務所であったにも関わらず、ヘンリーは彼らからの恩情を一方的に切り捨てるのです。

そればかりか、冒頭での医療訴訟の重要証拠を相手方に流すという重大な背信行為までをしており、これはちょっと不義理にも程があるんじゃないのと思ってしまいました。

また家族に対する責任という点でも疑問でした。まともに収入を得られるような状態ではないにも関わらず弁護士事務所を飛び出して行ってどうするんだろうかと。家族一緒が一番で、金はなくても大丈夫というのは作り話の世界だけでの綺麗事で、現実世界では金を稼ぐ能力がない家は荒れますよ。

クリント・イーストウッドの『運び屋』で、人生には金も家族も両方大事という実にありがたい教訓をいただいた直後だけに、本作の出した結論が余計に甘ったるく感じられました。

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