1922【7点/10点満点中_完全犯罪が成立した犯人はどうなるのかを描いた鬱ホラー】

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[2017年Netflixオリジナル作品]

7点/10点満点中

■モラルを説いたホラー映画

最近ブームのスティーヴン・キング原作の映像化ですが、原作は未読です。

一応はホラーなのですが人命軽視の作品ではなく、それどころか殺人という行為の重さを描いた道徳的とも言える内容であり、人を殺した者がどれほどの精神的ダメージを受けるのか、また、人間関係に対してどれほど深刻な影響を与えるのかということがテーマとなっています。本作を見て人を殺したいと思う人間はいないでしょう。

■徹底した鬱展開

殺人の被害者は主人公の奥さんなのですが、彼女はまぁ嫌な女です。生粋の農夫であり、自分で耕し生活を成り立たせていることこそをプライドにしている旦那の思いになどまったく興味はないと言わんばかりに、農地を高く売り、その原資を使って都会でブティックを開くということを勝手に決めてしまいます。また、年頃の息子に彼女ができたと知るや、「あの女をさっさとヤっちゃいなさいよ」などと実に下品な言い方で息子と彼女を侮辱するような品性の持ち主であり、観客はこの奥さんに手を焼く主人公と息子に心底同情し、「こんな女はぶっ殺して当然」と思います。(なお、この「ヤっちゃいなさいよ」発言が彼女の妊娠という後の重大イベントに繋がっており、実にうまく作られた話だなぁと感心させられました)

しかし、奥さんを殺すと決めてからが地獄の始まり。男二人で押さえつけてナイフで切りつけても、なかなか致命傷を与えられずに奥さんはバタバタと暴れ続けます。血だらけになりながら命乞いをする奥さんを息子が押さえつけ、旦那がその喉を何度も何度も掻き切るというとてもイヤ~な光景をしばらく見せられます。何とか殺した後には辺り一面が血の海で、さっき殺した人間の血痕を丸一日かけて掃除するという何とも気の滅入る作業が待っているし、古井戸に隠した奥さんの死体は腐敗してネズミに食われて見てられない状態になるし、殺人の後始末って本当に大変だということが徹底的に描写されます。

■完全犯罪が成立した後のドラマが描かれる

本作がユニークなのは、完全犯罪が成立してしまうということです。殺害後、主人公と息子は奥さんが失踪したというシナリオを作るのですが、異変があるとの通報を受けて現場にやってきた保安官はアッサリとこのシナリオを受け入れてまともな捜査をしないし、後日発見された強盗殺人による身元不明の遺体(奥さんとは別人のもの)を確たる証拠もなくこの事件と結び付けて捜査終了とします。また、主人公は土地を手に入れただけでなく、大恐慌前で羽振りのよかった銀行から「大金を融資してあげるから受け取りなさいよ」と半ば強引に大口融資を受け、金銭面でも潤います。農業をするための土地と、大規模事業化するだけの原資を得て、通常のサスペンスであれば勝ち逃げコースに入るのですが、彼は幸福になるどころかどんどん不幸になっていきます。

人を殺したことの遺恨は主人公と息子の間でどんどん増幅していき、妊娠した彼女と引き離されたこととも重なって、息子は家を出て行き、後に彼女と野垂れ死にます。主人公はたった一人になったことから妄想が余計に増幅し、妄想に悩まされて生活が荒れ、生活が荒れるほど妄想がキツくなっていくという負のスパイラルに陥ります。殺人も偽装工作も成功し、望みの土地も手に入ったが、殺人という行為の重みに耐えられなくて結局すべてを失うという、なんとも苦しい結末を迎えるのです。

■別人レベルにまで変化したトーマス・ジェーン

『ドリームキャッチャー』『ミスト』に続いて三度目のキング作品出演となるトーマス・ジェーンは、名前を聞くまで彼だとは気付かないほどの激やせぶりと熱演で精神的に滅入っていく男になりきっています。

■監督は『ファイナル・アワーズ』のザック・ヒルディッチ

本作の監督はSFドラマの佳作『ファイナル・アワーズ』で注目されたオーストラリア出身の監督ザック・ヒルディッチなのですが、ヒルディッチは、ホラー映画でよくあるジャーン!という音でびっくりさせるようなコケ脅しではなく、観客に不快感を抱かせる雰囲気や描写で壊れゆく男の心象風景を見事に映像化しています。

1922
監督:ザック・ヒルディッチ            
製作:ロス・M・ディナースタイン                
製作総指揮:ショーン・ウィリアムソン,ジェイミー・ゴーリング,ケヴィン・リーソン,ザック・ヒルディッチ      
原作:スティーヴン・キング            
脚本:ザック・ヒルディッチ            
撮影:ベン・リチャードソン            
編集:マーリン・エデン   
音楽:マイク・パットン
出演:トーマス・ジェーン,モリー・パーカー,ディラン・シュミット,ケイトリン・バーナード,ボブ・フレイザー,ブライアン・ダーシー・ジェームズ,ニール・マクドノー,ターニャ・シャンプー,エリック・キーンリーサイド,パトリック・キーティング

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