デッドマン・ウォーキング_考察は良いのに結論が悪い【5点/10点満点中】(ネタバレあり感想)

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(1995年 アメリカ)
マシュー・ポンスレットは10代のカップルへの殺人及び強姦の罪で死刑判決を受け、現在は刑務所で執行の時を待っている。彼は一貫して無罪を主張しているが受け入れられていない。慈善活動を行う尼僧のヘレンは彼のスピリチュアルカウンセラーとなり、その死を見届けることになる。

ハリウッドのリベラル夫婦(現在は離婚していますが)ティム・ロビンス&スーザン・サランドンの作品で、しかも原作を書いたのは死刑廃止論者の尼さん。この揃いまくった布陣からは、説教されるような映画という先入観が個人的にあって長年に渡って本作には食指が向かなかったのですが、HMVのセールで本作のBlu-rayが500円で売られていたことから、これを機に見てみることにしました。

作品概要

原作はノンフィクション

映画ではスーザン・サランドンが演じたヘレン・プレンジャンというシスターのノンフィクションが原作。

もともとヘレンは黒人居住区に暮らして慈善活動を行っていたのですが、その近くにプリズン・コアリション・オフィスという囚人との連絡を取り、適宜彼らの相談相手となる事務所があって、ヘレンには囚人の文通相手にならないかとの誘いがあったことから、これを引き受けることにしました。

そこで紹介されたのが映画ではショーン・ペンが演じるマシューのモデルとなったパトリック・ソニアという死刑囚であり、家族さえも面会に来ない中で手紙を書いてくれたことにいたく感激して、二人の交流が始まりました。

映画はこの原作の流れを変えることなく、史実にほぼ忠実に脚色されています。

受賞歴

1995年に公開されるや本作は高い評価を獲得し、様々な賞を受賞しました。

  • アカデミー賞
    • 主演男優賞(ノミネート)
    • 主演女優賞(受賞)
    • 監督賞(ノミネート)
    • 歌曲賞(ノミネート)
  • ゴールデングローブ賞
    • 男優賞(ノミネート)
    • 女優賞(ノミネート)
    • 脚本賞(ノミネート)
  • ベルリン国際映画祭
    • 男優賞(受賞)

感想

死刑廃止派・存置派、双方の立場が描かれている

実際に観て意外だったのは、一方的な政治主張を押し付ける内容にはなっていなかったことです。もちろん主軸はスーザン・サランドン扮する死刑反対の尼僧・ヘレンなのですが、犯人を死刑にして欲しいと願う被害者家族の意見もきちんと織り込まれています。

聖職者から「赦すことがキリストの教えです」と言われたって、何の落ち度もない青春真っただ中の息子・娘を殺された遺族が「ああ、そうですか」と納得するわけがなく、「子供を持ったことのない尼さんに我々の苦しみなど分かるはずがない」と言い返される始末。このやりとりは結構生々しくて、原作がノンフィクションであることの強みが遺憾なく発揮されています。

論点は司法制度にまで及ぶ

さらに本作では、司法制度への言及までがなされます。

弁護士の質が判決を左右してもいいのか

ショーン・ペン扮する死刑囚・マシューは、確かに自分は犯行現場にいたが、被害者を殺したのは自分ではないと主張します。しかし貧しいマシューでは優秀な弁護士を雇うことができず、本来は税務を専門とする公選弁護人しか付けられなかったことから、裁判では事実を明らかにすることができませんでした。

他方で、優秀な弁護士を雇うことができた主犯格の人物は極刑を免れており、うまく弁明ができなかったマシューに全責任が押し付けられたような形になりました。

仮に正義の執行のために死刑制度そのものが必要だとして、本来は死刑にされるべき容疑者でも優秀な弁護士を付ければ極刑を逃れてしまうのでは、制度趣旨が達成されていないことになります。法の運用はこれでいいのかという問題提起がなされます。

容疑者は必ず潔白を主張する

本作が興味深いのは、潔白を主張するマシューにも実は裏があったということです。一貫して殺していないことを主張し続けていたマシューですが、死刑直前になって、自分が被害者の一人を殺したことを告白します。

判決は不当であったという彼の主張がウソだったことが明らかになり、特赦のために動いていたヘレン達の活動がここで一気にひっくり返るのです。そして、実際に罪を犯した者も無罪を主張するという点にこそ、裁判の難しさがあるという事実もここで露になります。

結局、死刑は存在すべきなのか

死刑執行直前、マシューは「それが政府でも、俺であっても、あんたたちであっても、人を殺すことは間違っている」と言います。様々な考察を交えた上での、これがティム・ロビンスの最終結論なのだろうと思うのですが、ちょっとその主張は違わないかいというのが私の感想でした。

犯罪者が落ち度のない他人を殺すことと、他人を殺してしまった犯罪者に罰を与えることとは明確に違います。それは、個人が他人を拘束すると罪になるが、政府には犯罪者を拘留する役割があるのと同じことです。

また、マシューは死刑執行直前になってようやく自らの罪を認め、被害者家族に対する謝罪を口にしましたが、死刑という強烈なパンチがなければマシューが悔い改めることはなかったんじゃないのという点が引っかかりました。もしヘレンらの活動が実って特赦請求が通ったとして、マシューはこのクライマックスのように泣いて反省をしたでしょうか?

これはティム・ロビンスの意図とは正反対の見方なのかもしれませんが、死刑こそがマシューが罪と向き合うきっかけになったようにしか見えませんでした。

まとめ

演出・演技共にレベルが高く、見るべき作品だと思います。ただし死刑制度の考察としてはチグハグな部分があり、全体として死刑反対論で構築されているにも関わらず、死刑という強烈なパンチがなければ犯罪者は悔い改めなかったのではないかという点が、結論をスッキリしないものにしています。

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