真夜中のカーボーイ【6点/10点満点中_取ってつけたような難病設定がつまらない】(ネタバレあり感想)

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(1969年 アメリカ)
ジゴロを目指してNYにやってきたテキサス生まれの青年・ジョーの挫折を描くアカデミー作品賞受賞作品。

6点/10点満点中

■史上唯一、成人指定でアカデミー作品賞を受賞した映画

本作はアメリカン・ニューシネマの代表作と言われ、1969年のアカデミー賞では作品賞・監督賞・脚色賞を受賞しました。

この受賞は、前年に旧態依然としたミュージカル映画『オリバー!』に作品賞を与えてしまったことへの反動とも考えられますが、それにしても成人指定の作品に作品賞を与えることは前代未聞だったし、直近の2018年度に至るまで同様の受賞例が他に一本も発生しておらず、本作がいかに突出した事例であるかが分かります。

■アメリカン・ドリームの負の面

過去を語らない登場人物達

この映画で違和感を持ったのが、自分が何をしてきた人間なのかを語る者がいないということです。フラッシュバックにより主人公・ジョーの情報こそ観客に対して断片的に提示されるものの、ラッツォが今まで何をしていた人間なのかはサッパリ分かりません。また、ジョーとラッツォはお互いの過去の話をしている様子がないので、相手が何者であるのかをはっきりと認識しないままに関わり合いを持っているようにも見えます。

ドン底にいる相手がロクな人生を送ってきていないことは確かであり、それを聞くだけ野暮という判断もあるのでしょうが、それ以上に、この二人は漠然とした未来を見ることのみに専念しているようにも思えます。

行き当たりばったりで何とかなると思っている

南部からNYに出て来さえすれば明るい未来が開けると思っていたジョーと同様に、ラッツォもまたフロリダにさえ行けば天国のような暮らしが待っているという幻想を抱いています。田舎者のジョーが都会に対して幻想を抱いたことには幾ばくかの理解もできるのですが、NYでドン底生活を送りかなり擦れた性格をしているラッツォが、将来に対しては能天気に構えている点は愚かというか憐れというか。

過去を振り返らないことは良いことではあるのですが、それは自分がなぜうまくいっていないかの分析ができておらず、同じ失敗を繰り返し続けるというリスクも孕んでいます。ジョーとラッツォは現状分析も新天地のリサーチもなしに、思い込みと希望的観測のみで行動を決定しているところがあり、この点には「信じれば報われる」というアメリカン・ドリームの負の面が容赦なく描かれているようにも思えました。

なお、本作の監督のジョン・シュレシンジャーはイギリス人です。

■なぜジョーはカウボーイスタイルにこだわるのか

フラッシュバックにより、ジョーは幼少期に実の親から捨てられて叔母に育てられていたこと、青春時代に恋人を性犯罪から救えなかったことが明らかになります。また、はっきりとは読み取れないものの、見ようによっては叔母からの性的虐待を匂わせるような描写もありました。彼がカウボーイスタイルにこだわったのは、弱い自分を覆い隠すためにマッチョの記号を身に付けたかったためなんだろうと思います。

加えて、彼のセクシュアリティも影響しているように感じました。作品中ではやたらとゲイと関わることが多く、またラッツォとの関係にも男の友情を越えた献身のようなものがあり、彼はバイセクシャルなのだろうと思います。ただし、南部という土地で育った彼にとって同性愛とは禁忌であり、カウボーイの姿をすることで「あるべき自分」を維持しているのではないかと思います。

こうしてバイセクシャルという視点でジョーを眺めると、そもそも彼が南部からNYを目指したのも、閉鎖的な南部では性的マイノリティの自分が生きていけないと感じていたためという深読みもできますね。

■カウボーイ衣装を脱ぎ捨てる場面の感動

そんなジョーですが、病気のラッツォをフロリダに運ぶ際に一発逆転の夢から覚めます。新天地では地道に働くつもりであることをラッツォに語り、移動の道中で今までこだわり続けてきたカウボーイ衣装をあっさりと捨ててしまいます。

これはアメリカン・ドリームを捨てて堅実に生きることを選択したジョーの成長であると同時に、あるべき姿に自分を縛り付けることをやめて、ありのままの自分でいることを受け入れた瞬間でもありました。この場面は演出も良くて、大袈裟に盛り上げたりせず、すごくあっさりと衣装を捨てるんですよね。このあっさり加減が最高でした。感傷的な演出をされると、逆に冷めたと思います。

■ラッツォの重病設定がわざとらしい

私は、登場人物が本筋とは無関係な難病で死ぬという話は、取ってつけたような悲劇に見えてあまり好きではないのですが、残念ながら本作がそのパターンだったことは残念でした。死ぬにしても、本筋と関係のある死因であればよかったんですけどね。例えば、彼の詐欺の被害者から仕返しを受けて深手を負ったとか。

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