はるヲうるひと_俳優が絶叫するだけの映画【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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人間ドラマ
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(2019年 日本)
俳優 佐藤二郎が監督・脚本も務めて5年かけて映画化に漕ぎつけた野心作なのですが、話らしい話がない中で、俳優達の暑苦しい演技を見せるだけの内容なので、かなり面白くありませんでした。演技の質が高くても、話がないと映画にはならないという悪しきサンプル。

感想

映画と演劇は違う

結論から言うと、全然面白くなかった映画。

売春で成り立っている架空の島で、親から売春宿の経営を引き継いだ3兄妹の話なのですが、問題提起もなく始まって、何が結論だかもよく分からず終わる話なので、特に感じるものもありませんでしたね。

元が舞台劇だし、俳優が脚本と監督を務めているしで、全体的には俳優のパフォーマンスにかなり比重が置かれている様子で、実際、数分に渡って俳優が絶叫するような場面がいくつもあります。

上手な人達が集まっているので、確かにその演技には圧巻のものがあったのですが、それにしても一つ一つの場面が長すぎるし、話が弱い中でキャラクターが突然に感情を高ぶらせることへの違和感もありました。

どうしようもないB級アクションで、唐突に銃撃戦とかカーチェイスが始まる感じですかね。

とりあえずこれを見て欲しいという思いこそ伝わってくるものの、映画とはストーリーを軸に演技やアクションが展開されるべきものなので、脈絡を考えずに見て欲しい場面だけを挿入してもおかしなことになるよという。

佐藤二郎さんは物凄い思い入れで舞台を映画化し、その熱意があったからこそ優秀な俳優達も集まったのでしょうが、もうちょっと企画を客観視できる人がブレーンとしていればよかったんでしょうね。

映画という媒体でやるからには、こうであってはいけないよと冷静な指摘をできる人が。

島の閉そく感

冒頭、山田孝之が船着き場でタコを突っついている場面から始まります。

この島が蛸壺みたいなものよってことですかね。

産業らしい産業はなく、島民たちは親の仕事をただ継ぐだけ。

島の明るい兆しといえば原発建設の話が進んでいることであり、これで人とカネがやってくるかもと期待しています。

だからと言って好意的に受け入れるのではなく、助成金を吊り上げようと島民挙げての抗議活動に精を出しているのですが。

本当は原発に来てほしいのに、表面上は反対意見を表明する。

そうした矛盾した言動にも、この島の不健全さが現れています。

佐藤二郎が物凄く乱暴

物語の主人公は山田孝之扮する次男なんですが、こいつが気弱で何もできない人であり、佐藤二郎扮する長男が脇役ながらも終始話をリードしていきます。

この長男がとにかく乱暴者。

売春宿の日常業務は次男に任せているので毎日顔を出しているわけではないものの、たまに現場に現れるとピキーンとした緊張感が走り、たいていの場合、誰かに絡んだり怒鳴ったり暴力をふるったりして、場を修羅場にして帰っていきます。

じゃあなんで長男がこんなに荒れているのかというと、弟と妹に対する嫉妬があるから。

実はこの兄弟は腹違いであり、長男だけが父親の正妻の子供で、弟と妹は妾の子でした。

長男からすると、長子であり正妻の子である自分こそが父からすると最も重要な子供であるという自負でもあったのでしょうが、その父は妾と心中し、正妻がその後追い自殺をしたものだから、アイデンティティが揺らいだ。

それで弟妹に辛く当たるようになったし、家族にも家業にも憎しみしか持てなくなったということみたいです。

その代わりとして長男は妻子と共に「真っ当な家庭」を築くのですが、どうもそれでは心のブランクは埋まらないようで、たまに売春宿にちょっかいを出しに来る。

そんなわけで困った男なんですが、佐藤二郎のチンピラ演技が本当に真に迫っていて、画面越しにも恐怖を感じたほどです。さすがはプロの役者さんですね。

ただし、この人物に興味を抱けるほどの深みがあったかと言われるとそうでもなく、少年期に死んだ父の影響をいつまで引きずってるんだよとしか感じませんでしたが。

そしてこの人物の心のもやが晴れていくことがドラマの焦点となっていくのですが、それもまたドラマチックな仕立てになっていないので、特別に感じることもありませんでした。

繰り返しますが、俳優の演技力だけで映画を引っ張るという試みには無理があったということです。

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