(2020年 日本)
Jホラーにはあまり詳しくないのですが、Netflixに上がっていたので何となく鑑賞。主人公が売れない芸人という設定がうまく生かされていないし、心霊現象が怖くないし、亀梨和也の関西弁に違和感ありまくりだし、この映画が事故物件でした。
感想
心霊現象待ちの主人公
番組企画で事故物件に住むことになったお笑い芸人松原タニシの体験談が元らしいのですが、私は心霊現象の類を一切信じなくて、この話も「眉唾かな?」と思いながら見たので、実話かどうかはあんまり重要ではありませんでしたが。
映画の主人公は亀梨和也扮する芸人 山野ヤマメ。10年間コンビを組んで活動しているものの劇場ではまったくウケず、耐えられなくなった相方の中井大佐(瀬戸康史)から解散を言い渡されます。
ヤマメは芸人として完全に息詰まるのですが、中井が考えた「事故物件に住む」という企画に、実に雑な形でキャスティングされて、その企画が人気を博したものだから事故物件に住み続けるしかなくなるというのが、ざっくりとしたあらすじ。
この構造の最大の欠点って、主人公が心霊現象を待ってしまうということですね。
自ら竜巻に突っ込んでいくストームチェイサーが主人公だとスリルに欠けると批判された『ツイスター』(1996年)と同じ欠点なのですが、本来は忌避すべき恐怖の現象を、主人公が心待ちにしているのでは、恐怖が半減します。
幽霊が出てくると「キターーーっ!」って感じだったし。
それならそれで『ゴーストバスターズ』(1984年)や『さまよう魂たち』(1996年)のようにコメディに振ってしまえばよかったのに、基本はホラーですからね。全然怖くありませんでした。
また、その割に主人公が熱心にカメラを回していないという別問題もあるし。
幽霊を撮りたいなら撮りたいで常にカメラを持って移動すべきなのに、全然撮ってないんですよ。
赤い服の女の幽霊が出た時なんて、まぁまぁの時間そこにいるのだからスマホでも何でも出して撮影すればいいのに、逃げるでも撮るでもなく、ただ見てるだけですからね。
もっと真剣にやれと思ってしまいました。
その後、企画はヒットしてヤマメは売れっ子になっていくのですが、心霊がちゃんと撮れたのって最初の一回だけで、その後は何も動画に収められていないのに、どうやって人気企画になったのかは謎です。
あと恐怖演出もワンパターン。何かあるかもという嫌な予感がするのですが一回目は空かしで、ホッとしたところで幽霊が見えるという、このパターンばかりですからね。
俳優達のリアクションもワンパターンで、目を真ん丸にして驚いているだけ。
そういえばヒロインの梓(奈緒)って霊がよく見える体質で、子供の頃から心霊体験をしていたという設定なのに、あんなにも目ん玉ひん剥いて驚き続けるものですかね。よくあることならいい加減慣れろよと。
幽霊をネタにするという不謹慎さが弱い
このドラマの骨子って、いくら売れたいとは言え、自殺した人や殺された人をネタにしていいのかという倫理的な葛藤ではないかと思います。
また、自分も周囲の人間もどんどん不幸にしているのに、それでもまだ企画を続けたいのかという相克と。
ただし、ヤマメに売れることへの執着なるものがあまり感じられず、どちらかというと芸人という職業自体が好きで、売れてなくても芸さえ続けられれば幸せなタイプに見えたので、「売れるためとはいえ、そこまでやらんでも」という不謹慎さがありませんでした。
彼はもっと欲深く、成功への渇望に憑りつかれた人物であるべきだったし、心霊現象を撮れなくなれば番組をクビにされるというテレビ局からのプレッシャーも強めに描いて欲しいところでした。
それでどんどんヤバい物件に手を出し始めるのであれば、一本筋が通ったかなと。
最終的にヤマメは事故物件に住むことをやめて普通の物件に入居するのですが、それは芸人としての成功を捨てての決断だったという描き方にもなっていないので、やはり主題が生きていませんでした。
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