マリッジ・ストーリー_離婚ドラマの新たな傑作【8点/10点満点中】(ネタバレなし・感想・解説)

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(2019年 アメリカ)
「お互いの人生を尊重して離婚を決意しました」みたいなことを言っていたスマートな夫婦が繰り広げる泥沼の離婚劇。当事者の問題に部外者が絡むことでどんどんこじれていく様がよく描かれています。

©Netflix

あらすじ

舞台演出家のチャーリーと女優のニコールは離婚の準備をしていた。二人は円満離婚を望んでいたが、ニコールがNYからLAへ引っ越すことに伴い一人息子の親権問題が表面化したことから、双方弁護士を立てての泥沼の離婚劇へと突入していく。

スタッフ・キャスト

監督・脚本はノア・バームバック

NYで活躍する脚本家兼監督であり、一部ではウディ・アレンの後継とも目されるほどの実力者です。キャリアを振り返ると自分自身の人生経験に基づいたドラマしか撮れない人のようで、本作もかつてのパートナーであるジェニファー・ジェイソン・リーとの離婚劇が下敷きになっていると思われます。

主演はブラック・ウィドウとカイロ・レン

主人公の一人を演じるのはスカーレット・ヨハンソン。ご存知ブラック・ウィドウであり、2016年には史上最も稼いだ女優にも選ばれました。そんな興行的成功の一方で演技面ではこれといった代表作がない状態が続いていたのですが、本作こそが将来的に彼女の代表作と言われる作品になりそうです。

もう一人の主人公を演じるのはアダム・ドライヴァー。ご存知カイロ・レンですが、この人はもともと大作寄りの俳優ではなく、ノア・バームバック作品の常連でもあるので、本作こそがホームでした。ヨハンソンの演技の受け手として安定した演技を見せています。

感想

冒頭の情報整理が凄い

愛し合った男女が別れる様が描かれる本作はデレク・シアンフランス監督の『ブルー・バレンタイン』(2010年)を思わせるのですが、従前の二人の関係性はどのようなもので、何が原因で夫婦関係がうまくいかなくなったのかを僅か数分で説明してみせた本作冒頭の情報要約力は驚異的でした。

映画は夫婦問題のセラピーから始まり、お互いの良いところを言い合いましょうということで、夫から見た妻、妻から見た夫の姿が説明されます。良いところというのは、往々にして関係性がうまくいっていた過去の光景が反映されるものであり、ここから、この二人の歴史や、それぞれはどんな個性を持っているのか、また相手をどう見ていたのかが浮かび上がってきます。この構図は凄いなと思いました。

二人ともまったく違う個性を持っており、そのことが良いコンビネーションになっていたことが分かるのですが、ただ一点、負けず嫌いであるという点だけは両者に共通していました。これがどちらか一方だけなら良かったのですが、二人とも負けず嫌いだと衝突も増えます。ここが関係性を悪くする原因になっていたようです。

第三者の介入でこじれていく関係性

離婚と言っても最初は泥沼ではなく、大声での罵り合いや批判合戦はありません。相手の人生への尊重から離婚という意思決定に至ったのであって、離婚後にも相手への尊敬や友人関係は続けますといった、スマートな雰囲気すら漂っていました。

夫は演出家、妻は女優としてそれなりの地位に居て金銭にも困っていないので、財産分与等の問題も発生していません。「必要だったらあなたが持って行けば?」くらいの感覚です。

ただ一つ問題だったのは、子供だけは相手に持って行かれては困るという感覚を両者が持っていたことでした。親権争いを発火点にして両者が弁護士を立て、第三者が介入することで離婚問題がどんどんこじれていきます。

ここからは冒頭のセラピーとは逆です。相手の良いところを言い合いましょうではなく、法廷で優位に立つために相手の悪いところを探しましょうという流れになり、そもそも少なかったはずの憎悪が生み出されていきます。

一つのポイントは過去の夫の不倫です。これが離婚のトリガーの一つにはなったようなのですが、その一方で妻の側も夫の一時的な気の迷いであるという認識は持っていたようで、二人の間ではすでにカタのついていた話でした。しかしこれが相手への攻撃材料になった途端に夫婦関係への深刻な裏切り、離婚の主要因という解釈へと変貌していき、二人の間で終わったはずの議論がより激しい形で再燃していきます。第三者の介入が悪い形で発現した最たる例だと言えます。

そしてストレスは限界に達する

親権争いのプロセスでは家族関係調査員みたいなのが夫と子供が過ごす様子を見に来るのですが、何ですか、あれは。『TRUE DETECTIVE/ロサンゼルス』(2015年)でも似たような光景がありましたけど、あんな不自然な状況で「いつも通りにしてください」と言われて採点されるなんて地獄でしょ。子供を叱れば「乱暴な親だ」と書かれ、叱らなかったら叱らなかったで「無責任な親だ」とか書かれそうだし。

このようなストレスが積もりに積もって、ついに爆発する終盤でのアダム・ドライヴァーとスカーレット・ヨハンソンの罵り合いは壮絶の一言でした。二人とも顔を真っ赤にし、泣きながらお互いへの不満や不信感をぶつけ合う様は怒涛の見せ場となっています。それと同時に、あれだけ美しくスマートだったカップルがこうも醜く変貌するのかと物悲しくなりました。

結婚による女性のキャリア断絶問題

そんな離婚劇でちょっと引っ掛かったのが、妻のキャリア断絶問題です。

妻側は、もともとハリウッドで仕事をしていた女優が結婚を期にNYに活動拠点を移し、夫の劇団の看板女優として働くことになった。ここでキャリアが断絶し機会損失が発生したと主張します。これに対して夫側は、NYへの引っ越しは合意の上であり、本人も女優としてのステップアップのためにNYへの移住を望んでいたと主張します。

これって一般でもよく発生する問題ですよね。結婚を機に仕事を辞める男性は稀ですが、女性が男性に合わせてキャリアをいったん終了させるということはよくあります。その後離婚して経済的な自立を余儀なくされた女性側からすれば、稼ぐ手段が減った状態はなかなか深刻です。本作の主人公ニコールも、本心では乗り気ではないテレビドラマへの出演から始めるしかなくなってしまいます。

他方で、結婚する時に退職や移住を強制したわけでも、騙してNYに連れて行ったわけでもなく、そもそも合意の上だったじゃないかという夫側の主張も分かります。良い時には「私付いていくわ」だったのに、いざ問題が発生すると一方的な被害者の身に自分を置くのはどうなのか。結婚や移住を選択した自分という主体はなかったのかと。

両者の相克を見ると、男女が社会参画し、仕事は地理的にどんどん広がっている中で、結婚制度が立ち位置を失いかけているような感覚を覚えます。とはいえ、子を産み育てるためには今のところ結婚制度ほど適したものはなく、女性のキャリア断絶問題への解答はなかなか難しいと言えます。

まとめ

恐らくはノア・バームバック自身の経験がベースにされた、離婚劇のリアルが描かれた切実なドラマでした。これを見れば「離婚はしちゃいけないなぁ」としみじみ感じます。また演出も演技もハイクォリティで最初から最後までダレる暇がなく、良質なエンターテイメントとしても仕上がっています。

『イカとクジラ』(2005年)では両親の離婚を見守る青年の視点だったバームバックが、自身の離婚に子供を巻き込んでしまう物語を作ったという点にも興味を惹かれました。

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