ハットフィールド&マッコイ:実在した一族vs一族の物語【8点/10点満点中_力作】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2012年アメリカ)

©History Channel

8点/10点満点中 長尺が活かされた見応えある群像劇

ヒストリー・チャンネル初の実話ドラマ

2013年にWOWOWで日本初登場した際には『宿敵 因縁のハットフィールド&マッコイ』というタイトルだったのですが、その後のソフト化でより長いこの邦題になったようです。

本作はヒストリー・チャンネル初の実話ドラマ作品なのですが、第一話は1,390万人に視聴されて当時としては全米ケーブルテレビ史上最高の数字を記録しました。さらにはゴールデングローブ賞では主演男優賞を、エミー賞では主演男優賞を含む5部門を受賞して評価も上々であり、本作で手応えを感じたヒストリー・チャンネルは『ヴァイキング~海の覇者たち~』の制作に乗り出したのでした。俳優として長らく低迷していたケヴィン・コスナーは本作の好評をきっかけに復活して『マン・オブ・スティール』や『エージェント・ライアン』といった大作への出演がぽんぽんと決まるようになり、ゴールデングローブ賞の授賞式では「この作品に出会わなければ失業していた」とスピーチしたほどでした。

事情を知らない日本人が見ると、ちょっと実話とは信じがたいほどドラマ以上にドラマチックな話なのですが、そこでヒストリー・チャンネルの威光が効いており、「信じられないけど、本当にあった話なんだな」と余計な疑問を持たずに見ることができました。

慣用句になったほどの実話

アメリカでは不俱戴天の仇を指す際に「ハットフィールドとマッコイのようだ」と言われるようなのですが、こうした慣用句になるほど有名な一族同士のいがみ合いを本作はドラマ化しています。

州境の川を挟んでウェストバージニア州にいるのがハットフィールド家、ケンタッキー州にいるのがマッコイ家であり、両家ともに地元の名士であり、当主同士は南北戦争に共に出征したという縁で良好な関係を築いていたのですが、遠縁の者同士が起こしたトラブルが両家の間の火種として燻っており、両当主の個人的な確執や些細な土地トラブルがきっかけで小さな火種は州を跨ぐ大火事へと発展しました。

両家で最初の暴力トラブルが起こったのは1878年であり、一頭の豚の所有権を巡る両家の裁判の後、敗訴したマッコイの遠縁が証言台に立ったハットフィールドの遠縁を殺害した一件でした。その後抗争が拡大していった末に、1891年にハットフィールドの一人がケンタッキー州で裁かれて絞首刑となったことが一種の手打ちとなって一連の抗争はひとまず終止符を打ったのですが、両家が正式に和解したのはなんと2003年。直接的な抗争が終了してから112年にも渡って冷戦状態が続いていたというのだから、この対立がいかに根深いものであったかが分かります。

なお、本作の主演を務めたケヴィン・コスナーと監督を務めたケヴィン・レイノルズも元は友人同士だったものの、1995年の『ウォーターワールド』で仲違いをしたと言われているのですが、その両者が17年ぶりに和解した作品が本作だったという点にも、何かしらの因縁を感じさせられました。

長尺を活かした緻密な群像劇

本作はテレビドラマとは言うものの、各話が映画並みのボリュームを持っており(第一話102分、第二話96分、第三話88分)、すべてを合わせると映画では三部作に相当する尺を使えているので、これを活かして緻密な群像劇として仕上げられています。

まず、一族のメンツを保つためには相手から舐められてはいけないが、かといって非生産的な抗争をいつまでもやってるわけにもいかないので落としどころも探っている両当主がいる。両当主には抗争を煽る側近がおり(ハットフィールドの大叔父ジム・ヴァンズと、マッコイの弁護士ペリー・クライン)、さらに双方には暴力装置みたいな人間もいる(ハットフィールドの息子キャップと、マッコイのゴリ押しで保安官代理に就任した殺し屋フランク・フィリップ)。事態を収拾したがる人間もいるものの(ハットフィールドの兄で判事のウォール)、いきり立ったバカ(マッコイのバカ息子たち)がかき乱して収拾がつかなくなる。このような込み入った物語が長尺を活かして実にドラマチックに流れていきます。

全体を俯瞰するとマッコイの方が大人げなく、大きなトラブルは必ずと言っていいほどマッコイから仕掛けています。その元凶となっているのはマッコイ家に取り付いているペリー・クライン弁護士やマッコイのバカ息子達であり、彼らは通常の映画であれば観客から許容されないタイプの悪党なのですが、本作においてはそうしたキャラクターの背景にも一定の時間を使えていることから、単純な勧善懲悪ものにはなっていないことが魅力でした。

正常な家族関係があれば事態はこじれなかったのでは

この抗争にはキーパーソンが二人いました。ハットフィールドの息子・ジョンジーと、マッコイの娘・ロザンナです。二人は両家の対立を乗り越えて恋仲になるほどフラットな気質を持っており、かつ両当主の実の子という発言力のある地位にいたことから、一族内の急進派を押さえながら父親を直接動かすこともできる立場にいました。この二人がうまく機能していれば、ここまで話がこじれなかった可能性もあったのです。

しかし、親の顔色を見ずに自分達の結婚話を進めたことからジョンジーは一族内で裏切り者扱い、ロザンナは親子関係を切られるまでに至っており、彼らであれば行使できたであろう影響力を行使できなくなりました。彼らが悪いとは言わないものの、もうちょっとうまく立ち回っていれば良い調停者になった可能性もあっただけに、勿体ないとは思いました。この点は、ただ美しい心を持っているだけでは不足であり、善人にも賢い立ち回りが必要なのだという普遍的な教訓にもなっています。

連邦制の歪みと法の私物化が事態の収拾を困難にした

抗争の際にも、両家共に法に基づいた解決を図る気はありました。ただし問題だったのはハットフィールド側のウェストバージニア州で裁くか、マッコイ側のケンタッキー州で裁くかで結果がまるっきり正反対になったということです。州を跨ぐと法の運用に連続性がなくなるという連邦制特有の問題がここで露呈していると同時に、両家は地元での政治力を有しており、ホームでの裁判に持ち込めれば自分達に有利な判決を出させることができたために、逆にアウェイでの裁判には決して応じなかったことから、法が両当事者の仲裁機能を果たしていなかったという問題が露になっています。

それどころか、マッコイ家はその政治力を駆使してハットフィールド家に恨みを持つならず者・フランク・フィリップを保安官代理に任命させて、合法的に殺し屋を差し向けるようなことまでをしており、司法や行政を私物化されると社会に大きな支障が生じるということがこの例ではよく分かります。これは現在社会にも通じる普遍的な教訓ではないでしょうか。

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Hatfields & McCoys
監督:ケヴィン・レイノルズ
製作:ケヴィン・コスナー、ダレル・フェッティ
製作総指揮:レスリー・グリーフ
脚本:テッド・マン
撮影:アルトゥル・ラインハルト
出演:ケヴィン・コスナー、ビル・パクストン、トム・べレンジャー、パワーズ・ブース、ジェナ・マローン、メア・ウィニンガム、ボイド・ホルブルック、マット・バー
放映日:2012年5月28日(米)、2013年1月1日(日)
放映局:ヒストリー・チャンネル(米)、WOWOW(日)
製作国:アメリカ合衆国

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