ザ・コンサルタント_設定が渋滞を起こしている【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2016年 アメリカ)
会計上の不正を発見された企業が会計士の口封じをしようとしたら、その会計士は戦闘のプロだったというB級にも程がある話なのですが、これを立派に見せようとその会計士にいろんな設定をくっつけた結果、設定が渋滞を起こして訳が分からなくなっています。B級のままでよかったような気がします。

スタッフ・キャスト

監督は『ウォーリアー』のギャヴィン・オコナー

1964年ニューヨーク州出身。恋愛映画『Comfortably Numb』(1995年)で長編監督でデビューし、カート・ラッセル主演のスポーツ映画『ミラクル』(2004年)よりメジャー作品も手掛けるようになりました。

以降、エドワード・ノートンとコリン・ファレルが共演した刑事ドラマ『プライド&グローリー』(2008年)なども手掛け、代表作はジョエル・エドガートンとトム・ハーディが共演した総合格闘技映画『ウォーリアー』(2011年)です。

主演はベン・アフレック

1972年カリフォルニア州出身。1984年に両親の離婚を気にマサチューセッツ州ボストンに引越し、近所に住むマット・デイモン少年と知り合いになりました。

幼少期より子役として活動しており、90年代半ばよりケヴィン・スミス監督作品に常連となって『バッド・チューニング』(1993年)、『モール・ラッツ』(1995年)、『チェイシング・エイミー』(1997年)に出演しました。

マット・デイモンと共同執筆した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)でアカデミー脚本賞を受賞し、翌年には超大作『アルマゲドン』(1998年)に出演し、世界的な名声を得ました。

本作に出演した2002年あたりがキャリアの第一次ピークでしたが、『デアデビル』(2003年)と『ジーリ』(2004年)が連続して失敗したことから一時低迷しました。

しかし、弟ケイシーを主演にした監督作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(2007年)が批評家から絶賛され、映画監督として復活を果たしました。続く監督2作目『ザ・タウン』(2010年)も批評家から好意的に受け入れられた上に初登場1位も記録し、監督3作目『アルゴ』(2012年)でアカデミー作品賞受賞。って、ベンすごすぎ。

ちなみにベン・アフレックはポーカープレイヤーとしても凄腕で、全米選手権に参加した際には賞金35万ドルをかせぎだしました。またブラックジャックが強すぎてカジノから禁止を言い渡されたほどであり、これらのエピソードから頭がめちゃくちゃに良いということが分かります。

『デアデビル』で共演したジェニファー・ガーナーと10年間の結婚生活を送っていたのですが、アルコールが原因で離婚。世界で最も美しい顔第9位にも選ばれたことのあるアナ・デ・アルマスと交際と交際していたのですが破局したようです。

作品解説

興行的には成功した

本作は2016年10月14日に全米公開され、前週の首位『ガール・オン・ザ・トレイン』(2016年)を抑えて初登場1位を獲得。

その後6週に渡ってトップ10圏内にとどまり、全米トータルグロスは8626万ドルと、製作費4400万ドルの中規模作品としては上々の成績を残しました。

同じく国際マーケットでも好調であり、全世界トータルグロスは1億5036万ドルという好成績でした。

感想

主人公の設定が多すぎて渋滞を起こしている

主人公クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)は田舎町で個人事務所を開業している会計士。

発達障害を患うクリスチャンは日常会話がギリギリ成立する程度のコミュ力であり、深夜にはハードロックを爆音でかけた寝室において、自分のむこうずねを棒でバシバシしばくという謎の日課も持っています。

そんな大クセと引き換えに天才的な数理感覚を持ち合わせており、会計士としては超優秀。個人事業主の税務相談を受けつつ、たまに上場企業の監査業務の依頼も受けています。

ただし彼の本業は別にあって、犯罪組織の帳簿係として非常に腕が良いことから、その筋では「会計士」と呼ばれて重宝されています。

加えて、クリスチャンは元軍人の父親仕込みで銃や格闘の名手でもあり、怒りに任せてマフィアの拠点をたった一人で壊滅させたこともあります。

そしてマフィア関係で縁を持った金融犯罪捜査官レイモンド・キング(J・K・シモンズ)に立場上知りえた情報をリークし、悪党の逮捕に陰ながら貢献しています。

…って、設定を詰め込み過ぎです。

「表の顔は会計士、裏の顔は凄腕の殺し屋」程度でも成立するところを、発達障害や家族絡みのサブプロット、捜査官への情報リークなどを盛り込みまくった結果、とどのつまり善い奴なのか悪い奴なのかすらよく分からない主人公となっています。

悪党側が頭悪すぎる

そんなクリスチャンがリビング・ロボティクス社の監査業務を受託したところ、たった一晩の調査で多額の使途不明金を発見。すると会社のCFO(最高財務責任者)が自殺に見せかけて殺され、クリスチャンの元にも殺し屋がやってきます。

クリスチャンは殺し屋を返り討ちに遭わせた上で、同じく命を狙われたリビング・ロボティクス社の新米経理デイナ(アナ・ケンドリック)を守るために殺し屋集団と衝突。これが作品の骨子となります。

私も監査業務に携わる人間として、不正を発見した会計士が口封じをされそうになるという話は面白いとは思ったのですが、実際にCFO、経理担当、会計士がほぼ同時に死を遂げたとなれば、その会社の会計には何かあるということが火を見るよりも明らかなので、隠蔽になっていないんですよね。

吉本新喜劇で押し入れの前に立ちはだかって「ここには誰もおらんで~」とやるくだりみたいな。

そんな感じでそもそもの陰謀論が成立していないし、それでも殺すというのであれば自然死か事故死に見せかけるしかないのですが、殺し屋たちは昼間っから銃を撃ちまくったりします。そんなことやってたら、仮に殺害に成功しても何も隠せないでしょうが。

で、隠蔽を指示したブラックバーン社長(ジョン・リスゴー)は、会計士が反撃してきそうだとなると身を守るために殺し屋軍団を自宅に常駐させるので、もはや隠蔽という目的は綺麗さっぱり消えてしまいます。

悪い意味で、これは凄いなと思いました。

意外性あふれるオチは面白い ※ネタバレあり

ブラックバーン社長宅にて会計士vs殺し屋集団の最終決戦が始まるのですが、戦闘中に「あれ?兄貴?」となります。殺し屋のトップであるブラクストン(ジョン・バーンサル)はクリスチャンの弟だったという前代未聞のオチが炸裂するのです。

それでもアクション映画ならば兄弟間の積年の確執を反映したバトルが続くものと思うのですが、「も~、早く言ってよ~」という感じで戦闘がピタリと止まり、「おいおい、どういうことだよ」と割って入ってきたブラックバーン社長をブラクストンが射殺するという、あっけない幕切れをします。

妙に爽やかなでほのぼのとした終わり方が個人的にはツボでした。

その後、クリスチャンをリモートでナビゲートしてきたアシスタント女性の正体も明かされるのですが、こちらも劇中でちゃんとヒントは出されていたのに多くの観客が見落としていた人物に設定されており、その意外性を楽しめました。

本作はラストで多くを取り戻したと言えます。

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