ジャック・リーチャー(シーズン2)_大幅パワーダウン【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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クライムアクション
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(2023年 アメリカ)
一気に品質低下したシーズン2。有言実行の男ジャック・リーチャーの魅力は薄まり、チームでドタバタ捜査する普通の探偵ものに成り下がってしまった感じ。アクションも雑だし、あらゆる点でシーズン1を下回ってしまった。

感想

リー・チャイルズ著の探偵小説が原作で、2012年にはトム・クルーズ主演の『アウトロー』としても映画化された『ジャック・リーチャー』。

2022年からはAmazonスタジオが連続ドラマとして製作し、主演のアラン・リッチソンのハマり具合も相まって高評価を受けた。その続編が本作。

シーズン2は2023年12月から1月にかけて配信されたのだけど、シーズン1から一転、あまりのつまらなさに私の鑑賞はサクサクとは進んでいかなかったし、ようやっと見終わった後にもなかなか感想を書く気にもならず、結局、感想をアップできたのが2月終わりという異常事態。

一体何がそんなに良くなかったのかをご説明したいが、まずはその前に軽くあらすじから。

憲兵時代の部下でありシーズン1にも登場したフランセス・ニーグリー(マリア・ステン)より、同じく憲兵時代の部下だったフランツが殺されたとの知らせを受けるリーチャー。

続けて2名の元部下も死亡、1名は行方不明となっていることが判明し、犠牲者全員が関わっていた軍事会社ニュー・エイジ・テクノロジーへの調査を開始するというのが、ざっくりとしたあらすじ。

巨大軍事企業だの、国際的な武器商人だの、ワシントンの保守政治家だのが絡む、なかなか面白そうな話に発展していくんだけど、これが全然盛り上がっていかないのがもどかしい。

なぜ盛り上がらないのかというと、過去と現在を往復する変ちくりんな構成にしているから。

今回の事件の犠牲者はリーチャーの過去に因縁があった人々ということで、現在の捜査と並行して、軍の輸送網を悪用する麻薬密輸を摘発した憲兵時代のエピソードが描かれる。

過去と現在を行き来するせわしない構成のために視聴者の関心は分散してしまうし、わざわざ尺を使う必要性を感じないほど過去のエピソードが面白くない。

リーチャーと部下たちの関係性への理解を深めることがこの構成の目的だったのだろうけど、これほど底の浅いエピソードならセリフでちゃちゃっと済ませてよかったと思う。

またリーチャーの魅力が随分と落ちている。

リーチャーの魅力とは有言実行なところにある。絡んできたチンピラどもが数的優位に安心して強気に出てくる中、リーチャーは「そんなこと言ってると全員ただでは済ませないぞ」と啖呵を切り、「この状況で何言ってんだ」とヘラヘラ笑うチンピラどもを、前言通りに捻りつぶしてしまう。

そして、あえて残した一人に脅しをかけて情報を引き出すというのがこのシリーズの定番の流れなんだけど、本作のリーチャーにはこの行動様式が当てはまらない。

リーチャーは謎の強漢達に襲われこそするが、事前に啖呵を切るというくだりはないし、ひとたび戦闘に入ると全員を殺してしまうので、残った一名に脅しをかけるという、いつもの展開がない。

しかも戦闘は意外とどっこいで、圧倒的な力で敵をねじ伏せ、吠え面かかせるというシーズン1のような痛快さがない。

さらには今回のリーチャーはベラベラと無駄によくしゃべる。基本的には脅し文句くらいしか口にせず、ほとんどの時間は黙って状況を観察していたシーズン1とは大違いだ。

このような演出のまずさからリーチャーの魅力が半減したのは残念だった。

加えて、物語も面白味に欠ける。

巨大軍事企業だの、国際的な武器商人だの、ワシントンの保守政治家だのが絡む壮大な陰謀が暴かれていくんだけど、どいつもこいつもやってることにアラが多すぎて強敵感がない。

隠ぺいが目的であるにもかかわらず、公道で派手な銃撃戦やカーチェイスをして、死体も平気で放置していくなど、そもそも論を無視し過ぎなのだ。

悪役として『ターミネーター2』(1991年)のロバート・パトリックを配置し、彼の口からサラ・コナーネタが飛び出すのは面白かったけど、良かったのはそれだけ。

こちらもリーチャー同様ベラベラと喋りすぎだし、かといってリーチャーとのハイレベルな駆け引きがあるわけでもないので、悪の総元締めらしい重厚感がないのだ。

もう一人の敵である武器商人は、途中まで抜群の存在感を放っているんだけど、リーチャーと直接対峙する段になると急激に小物感が漂い始めるという肩透かしだったし、最後まで見た後に振り返ってみると、彼が関与したサブプロットは重要性が低かったように感じる。こいつがいなくても話が成立したんじゃないだろうか。

この通り、敵味方双方が魅力に欠けるので、キャラクター劇としての盛り上がりに欠ける。

また見せ場の質も良くない。

スナイパーに狙われている状態で物陰からダッシュし、ハンドガンでスナイパーを仕留めようとするリーチャー。その戦い方がありえなさすぎて「本当に元凄腕軍人なの?」と思ってしまった。

クライマックスのヘリでの戦闘では、片手でヘリの端を、もう片方の手で仲間が縛り付けられたストレッチャーを掴み、敵にガンガン蹴られながらも仲間を助けようとするリーチャー。いかにムキムキでもさすがにそれは無理だろという力業に唖然としてしまった。

個人的にはオチにも納得できなかった

ロバート・パトリックが武器商人から受け取るはずだった6500万ドルを奪い取ったリーチャーは、それを今回の犠牲者たちで山分けしてしまう。

悪党から奪った財産をこちらの判断で山分けするという桃太郎方式って、個人的には物凄く違和感ある。汚い金とは言え、それを私物化することは正義と言えないだろと。

金で補填というやり方が、本当に遺族に寄り添っていることになるのかという疑問もあるし。

以上の通り、総じて満足度の低かったシーズン2だけど、Amazonとしては大きく育てたいシリーズのようで、すでにシーズン3の製作も決定しているらしい。次回こそはシーズン1を超える名作にしてくれることを期待している。

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