カーター_無駄に凝りすぎ、複雑すぎ【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2022年 韓国)
全編ワンカット風で撮られたアクション大作で、縦横無尽に動き回るカメラワークに最初は魅了されるものの、130分に渡ってこれだとせわしなさ過ぎて途中から飽きる。また視覚体験を優先した映画の割に内容が複雑で、視覚とストーリーが噛み合っていないバランスの悪さも感じた。

感想

怒涛のワンカット風バイオレンス

記憶喪失の男が裸で目覚めると感染症を巡る国際的な陰謀の渦中におり、追っ手を振り払いながらも抗体を持つ少女を移動させるというのが、ざっくりとしたあらすじ。

タイトルの『カーター』とは主人公の名前である。

主人公を記憶喪失にすることで観客との一体感を高めるというプロットはこの手の映画の定番で、『ハードコア』(2015年)などとも共通している。

そして『ハードコア』と同様に観客の視覚体験を重視した作品であり、全編ワンカット風で継ぎ目がなく作られており、序盤においては新たな映像体験に驚愕した。

開始早々、銃を持ったCIAのエージェントたちを蹴散らし、浴場で数十人のヤクザを相手に大立ち回りを繰り広げるのだが、主人公と共に爆風で吹き飛ばされたカメラが浴槽に突っ込んでいくなど、これまでのアクション映画には見られない斬新なカメラワークが炸裂する。

続いて始まるカーチェイスはさらに凄まじく、バイクで逃げ回る主人公目線で激しくカメラが動いたかと思いきや、いつの間にやら主人公の頭上をすり抜けて追っ手目線と同化し、最終的にはクラッシュして車外に放り出されるという主観映像までを作り上げている。

CGやドローン撮影などありとあらゆるテクニックを駆使した見せ場なのだろうが、すべてのカットが計算されつくしており、凄まじい手間と創意工夫で作られたことは素人目にもわかる。

そして恐ろしいことに、130分という長尺の全編に渡ってこれが続く。その絶倫ぶりに驚いたのだが、正直なところ、途中から飽きも感じてきた。

やはりアクション映画には緩急というものが大事で、全編を見せ場で埋め尽くすことは得策ではないのだろう。悪い意味での「やりすぎ」である。

無駄にややこしい話

もう一つ問題に感じたのは、話が妙に込み入っているということである。

前述の通り主人公は記憶喪失で、アメリカの大学を卒業後にCIAとのかかわりを持ったのだが、その後に北朝鮮に亡命したという設定が置かれており、今現在はどちら側についているのか、自分自身でも分からない。

会う人間、会う人間が「お前はこういう奴だった」ということを吹き込もうとするのだが、果たして誰が本当のことを言っているのかが分からない。

そんな主人公の自分探しがメインプロットになるのだが、視覚を重視した作品でこれだけ込み入った話というのはノイズにしかならない。

派手なアクションに専念したいのに、途中でややこしいミステリーが入ってくるので、その度に没入感が中断される。その感覚がもどかしかった。

『トゥモロー・ワールド』(2006年)や『1917 命をかけた伝令』(2019年)を見ても分かる通り、視覚体験を重視するタイプの作品はプロットを極力そぎ落としてシンプルにすることが鉄則なのに、どうしてここまで複雑にしてしまったのだろう。

物語と視覚が食い合う形になってしまい、せっかく手間暇かけられた見せ場が台無しになっていくことが勿体なかったし、二転三転するストーリーも途中からどうでもよくなってしまった。

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