ザ・マザー:母という名の暗殺者_黙ってろ、娘【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2023年 アメリカ)
元殺人マシーンの母親が娘を守るため鬼になるというジェニロペ版コマンドー。ジェニロペのアクションは素晴らしいが、今は緊急事態の真っただ中であるということを弁えない娘がひたすら面倒くさかった。

感想

Netflixでの配信開始日に鑑賞。

アフガン仕込みの凄腕スナイパーであるジェニロペが、かつて関わった武器商人(ジョセフ・ファインズ)の悪事の証言をするんだけど、敵は思いのほか強力で、FBIの隠れ家を襲われてエージェント達はあっという間に全滅してしまう。

辛くも襲撃を生き延びたジェニロペは極秘出産をするのだが、FBIの防衛網をも突破してくる敵を相手に赤ん坊を守る術もなく、出産直後に泣く泣く養子に出すことに。

12年後、どういうわけだか存在を知られた娘を誘拐されてしまい、ジェニロペはその奪還に向かうというのが、ざっくりとしたあらすじ。

子供に危害を加えられた元殺人マシーンが鬼になるというのはアクション映画にありがちなストーリーで、私はいの一番に大傑作『コマンドー』(1985年)を思い出した。

ストーリーが陳腐である以上、どうアレンジを利かせるのかが企画のキモであり、本作の場合は父性ではなく母性に焦点を当てることで差別化を図っている。

ジェニロペ自らがプロデュースし、監督は『クジラの島の少女』(2002年)のニキ・カーロ、脚本はテレビ製作者のミシャ・グリーンと『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015年)のアンドレア・バーロフが務めており、主要メンバーにはズラリと女性が並んでいる。

女性が手掛けたアクション大作の出来やいかにというところだが、見せ場の出来は悪くなかった。

住宅街での夜の襲撃に始まり、白昼堂々の市街戦、雪山でのチェイスなど、アクションのバリエーションもロケーションも豊富で目に楽しい。

本作と同じくプロデューサーを兼任した『イナフ』(2002年)でも披露した通り、ジェニロペは格闘技のトレーニングをかなりやり込んでいるらしく、50代とは思えないほど体ができているし、よく動く。ジェニロペの動きは満点だった。

BGMのつけ方にセンスがなくて興を削がれる場面があったが、これは許容範囲内だろう。

問題はストーリーのつまらなさで、ドラマ作品を手掛けてきたメンバーがなぜここまで説得力のない話にしてしまったんだろうかと不思議でならない。

この世界ではFBIや警察は存在しないに等しいほど無力で、敵は時間も場所も選ばず襲撃を仕掛けてくる。

アメリカ国内で本格的な武装集団を右から左へと動かすのだが、ヴァンダムやセガールの映画でもここまでのことはやらない。リアリティへの目配せがなさすぎる。

また、ここまで公安に力がなければジェニロペに何を証言されようが問題ないはずなのに、武器商人は一体何を隠したくて娘を誘拐したんだかもよく分からない。

兎にも角にもジェニロペは生き別れになったまま成長した娘の救出に向かうのだけれど、この娘に可愛げがなくて感情移入ができない。

非常に強力かつ残忍な敵に狙われており、公安すら太刀打ちできないという光景を見てきたはずなのに、この状況で自分を保護してくれる唯一の存在であるジェニロペに対して反抗的な態度をとってくる。

今は緊急事態の真っただ中であるということを弁えないバカモノでしかないので、「こんな娘など放っておいてしまえ」という思いに至った。

この手の映画の場合、強者に見える親がある一場面で子供から諭されるという展開を挟むのが常套手段で、脚本家のアンドレア・バーロフが以前に手掛けた『ブラッド・ファーザー』(2016年)にもそうした一幕はあったのだが、本作ではそのような関係性の逆流が見られない。

そのためこの親子の物語がうまく流れておらず、ひたすら必死な母親とひたすら呑気な娘という、なんとも残念な構図が出来上がっている。

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