ジュマンジ/ネクスト・レベル_前作の二番煎じ。でも楽しい【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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ファンタジー
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(2019年 アメリカ)
ニューヨークの大学に進学したスペンサーは物足りない毎日を送っており、ブレイブストーン博士に扮したゲームの世界に戻りたいという願望から、再びジュマンジをプレイし始めた。待ち合わせの場に現れないスペンサーを心配した仲間達もまた、スペンサーを帰還させるためにゲームの世界へと入っていく。

©SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. 

作品概要

『ジュマンジ』とは

児童文学者クリス・ヴァン・オールズバーグが1982年に発表した絵本であり、1995年にはジョー・ジョンストン監督、ロビン・ウィリアムズ主演で映画化されました。CGの発展期にあって哺乳類の表現に成功したことから映像面での革新性が目を引いて大ヒットしたのですが、それ以外にめぼしい要素もなかったためかしばらくは映画の歴史の中に埋もれていました。

誰もが『ジュマンジ』なんて映画を忘れかけていた2017年に、突如『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』が製作されたのですが、こちらはリブートではなく続編。1995年版と繋がった世界観の作品となっていました。ちょいとややこしいのですが、1995年が第1作、2017年が第2作、そして本作が第3作という関係になります。

とはいえ1995年版とのストーリー上の繋がりはほとんどなく、世界観を共有しているに過ぎないので、本作を見るにあたって1995年版のチェックはまったくの不要です。

『ザスーラ』(2005年)との関係

同じくクリス・ヴァン・オールズバーグ作品を原作とした『ザスーラ』がジョン・ファヴロー監督によって2005年に映画化されています。この『ザスーラ』、『ジュマンジ』の精神的続編というよく分からない建付けで公開されており、『ジュマンジ』シリーズとの関連性がイマイチ分からないのですが、今のところ特に世界観が繋がっている様子はありません。

なので、本作を見る際に『ザスーラ』をチェックしておく必要はなく、『ジュマンジ』を見て気に入った方が、似たような映画をもっと見たい時に見ればいいと思います。

感想

『ウェルカム・トゥ・ジャングル』を越えている点は特にない

前作『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年)はとにかく楽しい映画でした。スクールカーストが異なる少年少女が集まって冒険をすることでお互いへの認識を深めるという青春映画の王道があって、そこにテレビゲーム特有の理不尽なルールが割り込んできたり、スリルと笑いのバランスが絶妙だったりと、2時間をきっちりと楽しませるハリウッドの素晴らしい娯楽作となっていました。

そこに来て本作ですが、4名の主人公がお互いを理解し合うというドラマの骨子部分が前作で完結してしまっているので語るべきドラマを見失い、基本的なストーリーは弱くなったという印象です。

また、テレビゲームの理不尽さを笑いに変えるという点も前作で終わってしまっているので、基本的には同じネタをなぞっているだけという状態になっています。見せ場の出来も前作がほぼやりきっていたことから本作も同水準のものを出す程度に留まっており、総じて、前作と同じことを繰り返しているだけで、上回るものは特に提示できていないという状態となっています。

続編の新機軸も有効に作用せず

製作陣もさすがにそれではマズイと思ったのか、プレイヤーはキャラクターを選択できないことと、おじいちゃん二人が混じったことが、本作の新機軸となっています。ただし、これらはさほど効果を上げていません。

まずプレイヤー選択できないことなのですが、ドウェイン・ジョンソン演じるブレイブストーン博士という強いキャラクターをゲームに詳しくない人間が操ることになったことが、観客にとっての面白みではなくストレスに転化しています。これは失敗でした。

思えば前作は、ナード系の主人公がムキムキでフェロモン全開のブレイブストーン博士になるという意外性と、ナードはゲームに詳しいので主人公をプレイするにはもっとも適切な人選だったという納得感が両立されていました。面白いんだけど出オチレベルではなく、実は筋の通った人選だったのです。

しかし本作ではゲームに疎いおじいさんがブレイブストーン博士をプレイしているために、パーティーを引っ張らなければならない人がもっとも足を引っ張るという観客がストレスを抱く流れとなっています。実際、本作でのライフの減りはゲームそのものの困難性によるものではなく、このおじいさんがゲームの構造を理解していないために無意味に死ぬということを3度も繰り返したことが原因であり、ちょっと足を引っ張り過ぎでした。

そして二つ目の新機軸、おじいさんの参加ですが、これも失敗していました。ゲームに詳しくないために彼らは足を引っ張るのですが、最終局面では彼らがゲームの常識に囚われないからこそ道を拓くような展開を設ければいいところを、最後まで足を引っ張り続けるので居る必要のない人になっています。後半では物言わない馬と、戦力として期待されていないコソ泥に変えられてメインの戦いには参加しなくなるのだから、キャラを持て余しているとしか言いようがありません。

それでも入場料分はきっちり楽しめる映画

以上、ネガティブなことを書いてしまいましたが、良作だった前作から著しく落ちた部分もないので、前作が好きな人のおかわりとして、本作は十分に機能していると思います。

監督・脚本を手掛けたジェイク・カスダンは小規模なコメディを得意としてきた監督なので大作専門の監督とは違った面白みがあるし、そうかと思えば『レイダース/失われた聖櫃』(1981年)の脚本家ローレンス・カスダンの息子なのでアドベンチャーものの構成や演出には手慣れたものがあるので、この監督のポテンシャルが十分に引き出された題材だと言えます。本作はクリフハンガーで終わるのですが、この出来なら完結編にもお金を出していいかなと思えました。

日本語吹き替え版の出来

私は吹替え版で見たのですが、久々にダメなタレント吹替が炸裂していました。

加山雄三が82歳にして人生初の吹替に挑んだのですが、彼が吹き替えたダニー・グローヴァー演じるマイロ・ウォーカーが、どう聞いても加山雄三でしかないというすさまじい違和感。そもそも、加山雄三にダニー・グローヴァーがまったく合ってないわけで、これは加山さんが悪いのではなく、加山さんを起用した人が悪いと思います。

他方、意外と良かったのがミン役を吹き替えたファーストサマーウイカであり、加山同様本作が吹替初挑戦だと言うのですが、プロの声優に混じってもほとんど違和感を覚えませんでした。

まとめ

前作の二番煎じでしかないのですが、まだ出涸らしにはなっておらず、前作が好きな人なら十分に楽しめる出来となっています。ただし前作が苦手だった人を振り向かせるレベルではないので、前作がダメだった人は本作を無視してもいいと思います。

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