(1994年 日本)
江頭2:50が普通の演技をしている珍しい作品なのだが、それ以外に見どころもないので、よほど時間を持て余した際にだけ鑑賞されることをお勧めする。90年代って、こういう誰得なVシネが量産されたおおらかな時代だった。
感想
Amazonプライムで暇つぶしに見る映画を探していたところ、そのインパクトあるタイトルと、芸人 江頭2:50が主演を務めているという点が引っかかったので、鑑賞してみた。
90年代に量産されていたVシネなので大した出来ではないだろうとは予想していたが、その下がり切ったハードルをも下回ってきたことは残念だった。駄作の部類と言って間違いない。
大川興業代表取締役 大川豊氏が雑誌ぴあに連載していた借金返済日記を映像化した作品であり、大川興業の所属芸人が総出で参加し、大川豊氏自身も出演している。
芸能事務所の代表が全面的にかかわった作品であるためか、キャストは思いのほか豪華。
80年代には「角川三人娘」の一人として持て囃されていた渡辺典子、『青春デンデケデケデケ』(1992年)で日本アカデミー賞新人賞を受賞したばかりの大森嘉之が主演クラスで出演しており、また二人とは監督として関わった経験を持つ大林宜彦監督も俳優として参加している。
その他、クライマックスでは現・笑点司会者の春風亭昇太も顔を覗かせる。
大川氏は芸能事務所社長であると同時にパフォーマー的な立ち位置にもいて、独自の視点から世相を斬るというインテリな面も持ち合わせた人物なのだが、本作においてもクレジットカード破産や多重債務者問題などが前面に押し出されている。
とはいえ30年も前の作品なので、現代の視聴者の目には厳しい部分が多い。
クレジットカード破産って90年代当時は結構な社会問題で、中学の家庭科の教科書にもまぁまぁの扱いで載っていたと記憶している。学校では「大人になってもクレカは持つな」くらいの勢いで教えられたものだ。
他方、電子マネーが当たり前、現金での支払いなんて月に数回行う程度という現代の視点からすると、クレカの構造そのものを否定するという切り口自体が通用しなくなっており、本作のテーマはほぼ死んでいる。
なもんで「笑いながら楽しめる社会派コメディ」としてはかなり厳しい。
では江頭2:50主演のコメディ映画としてはどうかと言うと、こちらでも厳しいと言わざるを得ない。
江頭2:50は意外なほど真っ当な演技に徹しており、かわってその相手役である女優 渡辺典子がコメディリリーフを担っているという珍しいバランスの演出となっているのだが、その試みが完全に裏目に出ているのだ。
渡辺典子扮する麗子は、当初、彼氏である江頭2:50に無理な消費をさせるワガママな彼女として登場するのだが、その後に破滅願望のある異常者であることが判明する。
ただのキレイどころだと思われた渡辺典子のタガがどんどん外れていくことが本作の笑いどころだったのだろうが、これが全く笑えないのでは目も当てられない。江頭2:50を筆頭に大川興業所属芸人たちのネタ見せ大会にしてしまった方が随分とマシだったと思う。
さらには、「ここが笑いどころですよ」と言わんばかりに流れるBGMのチープさなどもマイナス方向に作用しているが、こういうセンスの悪い演出に対して、大川総裁は何も言わなかったのだろうか。
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