ケーブルガイ_コメディとサスペンスの二兎追って失敗映画【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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コメディ
コメディ

(1996年 アメリカ)
コメディ映画の皮を被ったサスペンス映画なのですが、心理サスペンスを標榜するには作りが粗くリアリティに欠ける展開が目に付くし、コメディを標榜する割には笑いどころがなく、どっちつかずの中途半端な作品に終わっています。ジム・キャリーとマシュー・ブロデリックの演技は良かっただけに、監督が視点を散漫にしてしまった点が悔やまれます。

あらすじ

新居に引っ越して来たスティーヴン(マシュー・ブロデリック)は、ケーブルテレビの設置にやってきたケーブルガイ(ジム・キャリー)に対して全チャンネルを無料で視聴できる細工を依頼した。要望通りに細工をした後、ケーブルガイはスティーヴンをテレビの中継アンテナの見学に誘い、無理をお願いした負い目もあってスティーヴンはその誘いに乗る。そこからケーブルガイはスティーヴに対して過剰な干渉をするようになり、スティーヴの私生活は乱されていく。

スタッフ・キャスト

監督は『ズーランダー』のベン・スティラー

1965年NY出身。両親ともにコメディ俳優で、自身もコメディアンから俳優に転身したという、生粋の芸能一族の一員です。

『メリーに首ったけ』(1998年)、『ミート・ザ・ペアレンツ』(2000年)、『ズーランダー』(2001年)などの大ヒット作によってハリウッドを代表するコメディ俳優となり、また『リアリティ・バイツ』(1994年)、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(2008年)など映画監督としての評価も獲得しています。

脚本は『40歳の童貞男』のジャド・アパトー

1967年ニューヨーク州出身。コメディアンを目指してLAに移住し、アダム・サンドラーと同居していた時期もあったのですが、コメディアンとしては成功せず脚本などの裏方に回るようになりました。

監督デビュー作『40歳の童貞男』(2006年)が全米興行成績1億ドルを越える大ヒットとなり、製作を務めた『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(2007年)、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011年)も大ヒットと、コメディ映画界のヒットメーカーとなっています。

本作で主人公の彼女を演じたレスリー・マンとは、本作の製作がご縁となって結婚しました。

主演のジム・キャリーは史上最高額の出演料を獲得

1962年カナダ出身。コメディアンを目指して高校を中退し、10代から地元カナダの舞台に立っており。19歳でアメリカに移住して多くのテレビ番組に出演しました。

1994年に『エース・ベンチュラ』と『マスク』が大ヒットして注目を集め、ヴィランの一人リドラーとして出演した『バットマン フォーエヴァー』(1995年)が全米年間興行成績第一位の大ヒット。

1996年に製作された本作では2000万ドルという当時としては史上最高額の出演料を手にしました。

この破格の出演料は当時論議を巻き起こし、多くの実績があるわけでもないジム・キャリーにこれだけのギャラを支払うとハリウッドがおかしくなるという批判もありました。

実際、本作後にはハリウッドでスターのギャラが高騰。他のスターも一本で数千万ドルのギャラを受け取るようになり、当時急激に普及していたCGと併せて、大作の製作費が高騰する原因となりました。

後の大物コメディ俳優が多数出演

  • ジャック・ブラック(リック):『デモリションマン』(1993年)『ウォーターワールド』(1995年)などに小さな役で出演し、『愛しのローズマリー』(2001年)辺りから主演級に。『スクール・オブ・ロック』(2003年)の大ヒットで世界的名声を獲得し、21世紀を代表するコメディ俳優の一人となりました。
  • ボブ・オデンカーク(スティーヴンの兄):サタデー・ナイト・ライブ出身で、放送作家としてはエミー賞を受賞するほどの活躍。長くテレビのコメディアンとして活動していたのですが、人気テレビシリーズ『ブレキング・バッド』(2008-2013年)の弁護士ソウル・グッドマン役でブレイクし、同キャラクターを主人公にしたスピンオフシリーズ『ベター・コール・ソウル』(2015年-)も人気を博しています。
  • オーウェン・ウィルソン(ロビンのデート相手):大学時代の友人ウェス・アンダーソンと共同で『アンソニーのハッピー・モーテル』(1996年)を執筆。以降、『天才マックスの世界』(1998年)、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001年)の脚本も手掛けています。二枚目の風貌を活かして『アナコンダ』(1997年)『アルマゲドン』(1998年)、『ホーンティング』(1999年)などの娯楽作にも出演していたのですが、本作で友人になったベン・スティラーの縁でコメディ映画に多く出演するようになり、『ミート・ザ・ペアレンツ』(2000年)、『ズーランダー』(2001年)、『スタスキー&ハッチ』(2004年)と、21世紀に入るとすっかりコメディ俳優となりました。ディズニー映画『カーズ』シリーズでは主人公ライトニング・マックィーンの声を務めています。
  • ベン・スティラー(サム・スウィート)

感想

ストーカー心理を描いたサスペンス

ジム・キャリーが電線を掴んで不気味な笑いを浮かべているポスターからもお分かりの通り、本作はコメディというよりもサスペンスです。

「友達が欲しい」という思いこそ純粋だが、友情の表現方法がことごとくおかしいケーブルガイ(ジム・キャリー)は、『キング・オブ・コメディ』(1983年)のパプキンや『ミザリー』(1990年)のミザリーと同類。ターゲットと決めたスティーヴン(マシュー・ブロデリック)に絡んでいく様はほぼホラーです。

自分の行為が他人を引かせているという自覚がなく、拒否されれば激昂し、受け入れられれば更にエスカレートするという、どう転んでも先には破滅しか待っていない人間関係の構築方法には恐怖を覚えます。

対するスティーヴンはというと、下手に断ってキレられたら面倒そうだし、まぁ適当に調子を合わせておくしかないかくらいに考えているのですが、すると勝手にお節介を焼いているだけなのに、「自分がスティーヴンにしてやっているばかりだ」「自分の願いは聞き入れられないのか」と、今度は恩着せがましいことを言ってくるケーブルガイ。

こうしてスティーヴンはどんどん追い込まれていくのですが、彼が緩やかに詰んでいく様はよく出来ていました。異常者vs小市民という構図がきちんと出来上がっているのです。

中途半端なコメディ要素が足を引っ張っている

と、ここまでやるのであれば『キング・オブ・コメディ』のように徹底的にキャラクターを突き放し、容赦のない作風で行けばよかったのですが、コメディ映画特有のいい加減な作りが作品の完成度に悪影響を与えています。

例えばケーブルガイがスティーヴンの家族に取り入ろうとする場面。普通に考えればうまくいくはずがないのですが、スティーヴン一家はケーブルガイを楽しい社交的な奴だと思い込んでしまうわけです。

ケーブルガイの下ネタ全開のパーティーゲームでスティーヴン以外の全員が大盛り上がりする様は、映画全体のリアリティのレベルを大きく引き下げていました。

クライマックスでは、どう考えても死んでるだろという場面で人が死なず、「この映画はコメディですから」という言い訳で都合の良い展開が不問に付されているような感覚を覚えました。

で、コメディに振っている割には笑いに昇華できているということもないので、余計に中途半端さを感じました。

メディア批判も中途半端

加えてメディア批判も中途半端。ケーブルガイは少年期に育児放棄に遭い、テレビばかりを見て育ったために対人スキルが身に付いていない自己主張だけの人間になってしまったという設定となっています。

でもそれってテレビの問題ではなく、親の問題じゃないかとも思うわけです。メディア批判をしようとしている割にはその他の要因が目に付くし、具体的にメディアの何が悪かったのかという点も深掘りされていません。

結局この映画は何をメインに考えて作られたのだろうかということがいまいちピンとこない、焦点がボケボケの映画になってしまっています。

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