マザー!【4点/10点満点中_構図のみが立ちすぎて面白さが犠牲にされた怪作】

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[2017年アメリカ]

4点/10点満点

■悪評に違わぬヤバイ出来

『ジャッキー・コーガン』以来5年ぶりとなるシネマスコアでの最低評価に、全米での大コケ、そして日本公開の打ち切りとネガティブな話題に事欠かない作品なのですが、実際に見ると素直に「こりゃ酷いな」と言える内容でした。

ダーレン・アロノフスキー監督作品にはストーリーが前面に出た映画(『レクィエム・フォー・ドリーム』『レスラー』『ブラック・スワン』)と、テーマが前面に出た映画(『π』『ファウンテン』『ノア』)の2種類があって、前者は打率100%で傑作になっているのに対して、後者は駄作の嵐。この路線はもう諦めればいいのにと思うのに、本作もまた後者のタイプの作品でした。

■構図こそがすべての映画。それ以外には何もない。

乳首も透けるシースルーでジェニファー・ローレンスの豊満な体をじっくりと映し出す冒頭と、執拗に繰り返される意味不明なイメージの断片から、これは何かを隠喩した映画であるということはすぐに察しがつきました。

エド・ハリスが家に上がり込んで以降はダウンタウンの不条理コントのような展開を迎えるのですが、こちらも登場人物達が自然な反応をしているわけでもなく、かといって笑いの方向に振り切れているわけでもないことから、背後にある構図を読み取って欲しいのだなという監督の意図が分かりました。

問題は、構図こそがすべての作品であるために構図を読み取れると終わってしまうということであり、どんなに勘の鈍い人でも本編のちょうど真ん中あたりで何の話をしているのかが分かってしまうために、残りの1時間はとにかく長い答え合わせをさせられている気分になりました。

【注意!ここからネタバレします】

■要は神と信者の話

本作は神と信者の関係を描いた作品であり、エド・ハリスが押し掛けて来てから水道管の破損(=ノアの洪水)で追い出されるまでが旧約聖書部分、「よっしゃ!新しい作品を書けたぞ!」と言ってからラストまでが新約聖書部分となります。

  • ハビエル・バルデム:神
  • ジェニファー・ローレンス:母なる大地
  • 生まれてきた赤ん坊:キリスト
  • エド・ハリス:アダム
  • ミシェル・ファイファー:イブ
  • 長男:カイン
  • 次男:アベル
  • その他の客:信者

神はとても気の良い男で求められれば際限なく信者を受け入れるし、信者が迷惑行為を働いても「まぁいいじゃないか」と言って許してしまいます。しかし、荒らされる大地にとってはたまったものではなく、人類にとっては有難い神の寛大さが、視点を変えれば大変な迷惑になっているという話となっています。

■アロノフスキー大暴走

前作『ノア』においても旧約聖書の世界観とは相容れない進化論を匂わせる描写を入れていたことから、私はアロノフスキーが無神論者ではないかと思っています。無神論者の視点で聖書を眺め、「もし本当に神がいるとしたら、人格者でも何でもないよ」ということを本作で描きたかったのでしょう。その試み自体は面白いと感じたのですが、それ以外には何もない状態で2時間をやられたのは相当キツかったです。隠喩以前にまず映画として面白くするということを大事にして欲しいところでした。

■ただし将来はカルト化するかも

ただ、決して甘い作りの映画ではなく、ある方向に突き抜けてもいるため、ハマる人にはハマる作品だろうとも思います。将来的には案外高評価の作品として落ち着くかもしれません。

■ジェンダー映画でもある

また、本作にはジェンダー映画としての側面もあります。主人公のジェニファー・ローレンスは旦那にまったく意見を聞いてもらえず、家庭内ではひたすら茶を入れたりつまみを出したりする役割だし、年長者のミシェル・ファイファーからは家事についての嫌味を言われ、「子供は作らないの?」と余計なお世話でしかないことをズケズケと聞かれ、ファイファー手製のまずいレモネードを「おいしい」と言わされるし、若い男たちからは「エロい体の女だ」という目を向けられます。

若い女性がどれほど屈辱的な思いをしながら日々を生きているかということを観客に疑似体験させる構造にもなっており、特に男性が見ると気付かされる点が少なからずあります。その点でも、本作は見る価値のある映画だとは思います。重ね重ね言いますが、決して面白くはありませんが。

Mother!
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ダーレン・アロノフスキー
製作:ダーレン・アロノフスキー,アリ・ハンデル,スコット・フランクリン
出演者:ジェニファー・ローレンス,ハビエル・バルデム,エド・ハリス,ミシェル・ファイファー
音楽:ヨハン・ヨハンソン
撮影:マシュー・リバティーク
編集:アンドリュー・ワイスブラム
製作会社:パラマウント映画,プロトゾア・ピクチャーズ
配給:パラマウント映画
公開:2017年9月15日(アメリカ),公開中止(日本)
上映時間:115分
製作国:アメリカ合衆国

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