ブレスラウの凶禍_監督は亜人のファンだと思う【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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サイコパス

(2018年 ポーランド)
すべてのサスペンス映画でも最上位クラスじゃないかというほどグロ描写が突き抜けており、その迫真性には度肝を抜かれました。ただしそのグロ描写と釣り合うほどには犯人像が突き詰められていなくて、「なぜわざわざこんな面倒くさいことを」「こんな込み入ったことをやる能力があるなら、もっと良い人生送れよ」とツッコミたくなる物語に終わっています。

監督は『セブン』(1995年)や『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)など好きな映画の要素を隠すことなく詰め込んでいるのですが、クライマックスでは日本のコミック『亜人』そのものの場面があるので、その点は必見です。

©Netflix

あらすじ

市場で牛革に詰め込まれた男性の死体が発見された。その腹部には「堕落」という焼き印が押されており、これが17世紀のブレスラウの凶禍をモチーフにした連続殺人であることが分かる。そこから予想される殺人はあと5件。担当となった刑事ヘレナは、本部から送り込まれてきた刑事イウォナと共に犯人を追う。

作品概要

ブレスラウの凶禍とは

イウォナによると、17世紀にプロイセン王フリードリヒ2世がポーランドを支配した際に、本作の舞台でもあるブレスラウを国の中心にしようとしていました。そして街にはびこる犯罪一掃のため、見せしめとして6つにカテゴライズした犯罪者を日替わりで処刑していきました(日曜は休み)。それをブレスラウの凶禍と言うらしいです。

とりあえずその6つのカテゴリーと、本編での殺害方法を記載しておきます。

  • 【堕落】牛皮に詰め込み、その収縮により圧死
  • 【略奪】2頭の馬に縛り付けて八つ裂き
  • 【汚職】声帯を切った上で、オペラ座の舞台で焼殺
  • 【中傷】車輪に磔にした上で、警察署の窓に突っ込ませる
  • 【迫害】ドラム缶詰めにして下り坂を転がし、最後は車に衝突
  • 【不正】…ネタバレになるので自粛…

略奪や汚職はともかく、堕落で死刑というのはやりすぎですね。

またテーマと本編での殺害方法があまり関係ないような気もしますが、それにしても本作の監督はよくぞこれだけバラエティに富んだ方法を考え付いたものです。

登場人物

  • ヘレナ:ブレスラウ警察の刑事。左側だけ刈り上げという奇抜な髪型と、普段は強気なのに家では泣きながら鳩に餌をやるという二面性を持つ。刑事としては優秀だが、もっと優秀なイウォナが来てからは霞みがち。
  • イウォナ:ワルシャワ本部所属。連続殺人事件の発生によりブレスラウ警察に派遣された刑事。上下スウェットにキャップという近所のコンビニへ買い物にでも行くようなファッションだが、刑事としては恐ろしく優秀。
  • ヤレク:ブレスラウ警察の刑事で、ヘレナの相棒。序盤で馬に頭を踏みつけられ、危篤状態に陥った。
  • テレビリポーター:特ダネ待ちでカメラマンと共に常に警察に張り付いている。惨い死体を映そうとするなど倫理的にいかがな部分もあるが、たいてい現場付近にいるのでリポーターとしての嗅覚は確かなのかも。
  • 検察官:テレビに出るのが大好きで、カメラの前で捜査情報をベラベラ話してしまうおじさん。大酒飲みで体が悪いのか、常にハンカチで目や鼻を拭っている。

感想

デヴィッド・フィンチャー好き好き映画

あるテーマに基づく日替わり連続殺人事件と言えばデヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』(1995年)ですね。本作は6つですが。異常にこだわった死体の描写や、社会悪への怒りがシリアルキラー側の動機であることなど、本作はポーランド版『セブン』と言えるほどの状態です。

加えて、主人公エレナの左右非対称の髪型や、その登場場面での奇抜な言動は、デヴィッド・フィンチャー監督のもう一つのサスペンス『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)の主人公リスベットを彷彿とさせます。

『ブレスラウの凶禍』のヘレナ
©Netflix
『ドラゴン・タトゥーの女』のリスベット
©Sony Pictures

本作の監督はデヴィッド・フィンチャーが好きで好きでたまらない。その熱い思いはこちらにも伝わってきました。

容赦のないグロ描写

『セブン』(1995年)が特殊だったのは、通常のサスペンス映画は被害者が殺される過程にこだわるのに対して、『セブン』は事が終わった後の死体の描写にこだわったということです。本作もその傾向を引き継いでおり、殺す過程はほとんど登場せず、代わりに死体がじっくりと映し出されます。

で、この死体なのですが『セブン』以上にグロい。脳みそパッカーン、内臓デッローンと生理的嫌悪感を催す映像の連続に、残酷慣れした私も度肝を抜かれてしまいました。

グロ耐性のない方にとっては、本作は相当に厳しい内容だと思います。

中年女性のバディものは新鮮で面白かった

この奇怪な事件に当たるのはブレスラウ警察の刑事ヘレナと、ワルシャワ本部から派遣されてきたイウォナ。二人とも中年女性です。

ヘレナはスリムで髪型や服装も若々しいのですが、顔立ちは完璧に中年女性(演じるマウゴジャータ・コズホフスカは1971年生まれで、本作製作時点で47歳)。イウォナは上下スウェットにキャップといういろいろ諦めきった服装で、完全なるおばさん体形。

中年女性二人のバディものサスペンスってあまりないので新鮮で、カフェで事件について推論を話し合ったり、「テレビに出てた刑事さんですよね。写真いいですか?」とイケメンから声をかけられて断るヘレナに対して、「撮ってあげればいいじゃない」と言うイウォナのやりとりは風変りなんだけど微笑ましくもありました。

※注意!ここからネタバレします。

犯人が優秀すぎてリアリティを失っている

本部に問い合わせたところ、イウォナという捜査官は居ませんという回答。イウォナの正体はマグダという地元女性であり、事件の犯人がイウォナ=マグダだったことが判明します。

マグダは波乱万丈の生涯を追っており、その過程で社会への怒りを抱き、自分への害を為した者達への制裁を行っていました。

  • 【堕落】精肉加工会社時代の上司。マグダに対して酷いパワハラをはたらいた。
  • 【略奪】競馬のノミ屋を営む友人。生活苦のマグダに対して競馬に賭けることを勧め、後にマグダの金を巻き上げ、子供を人身売買組織に売ろうとした。
  • 【汚職】元財務長官。賄賂を受け取る代わりに企業の不正を見逃しており、財務局員としてそれを告発したマグダを詰問し返して退職に追い込んだ。
  • 【中傷】元警察署長。元副部長だったマグダをクビにした。
  • 【迫害】マグダ一家が住む家の家主。生活苦のマグダを容赦なく追い出した。
  • 【不正】ポーランド首相。社会不安を放置した。

ただし、犯人の面が割れてしまうと設定にえらい矛盾が生じてしまいます。何をやってもうまくいかなかった中年女性が、なぜここまで緻密な連続殺人を遂行できるのかと。これだけ能力が高ければそもそも社会で成功してるだろという疑問が拭えませんでした。

あと【堕落】のパワハラ野郎や【汚職】の財務長官はともかく、家賃滞納で追い出されるからと言って家主さんを殺すのはどうかと思います。家主さんだって家賃収入がないと生きていけないんだし。

隣で捜査していた奴が真犯人というどんでん返しこそ面白いのですが、犯人像が分かった途端に物語は精彩を失いました。

マグダ=「亜人」の佐藤

マグダは自分自身をテロリストとして位置付けており、堂々と顔出しした犯行声明を送りつけます。この犯行声明が画面の構図と言い、妙に落ち着き払った口調と言い、人気コミック「亜人」の佐藤そのものなのです。この監督は絶対「亜人」を見てますね。

そう考えると、マグダ=イウォナが常にキャップを被っているのも、「亜人」の佐藤が常にハンチング帽をかぶっており、捜査機関から「帽子」と呼ばれていることに繋がっていきます。

そしてマグダのモデルが佐藤だと考えると、余計に設定の無理矢理感が増してきます。佐藤は元海兵隊員にして、死んでも甦る亜人ですからね。 他方、職場での上司達の横暴に悩まされ続け、生活苦にあった平凡な女性が、政権転覆を企てるテロリストにまで変貌する物語はさすがに無理がありすぎました。

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