レッド・スパロー【6点/10点満点中_冗長だが女優の魅力でもっている】(ネタバレあり感想)

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陰謀
陰謀

6点/10点満点中

『ハンガー・ゲーム』の監督・主演コンビによるスパイ映画

本作の監督はウィル・スミス主演の『アイ・アム・レジェンド』で知られるフランシス・ローレンスであり、『ハンガー・ゲーム2』『ハンガー・ゲーム FINAL』の前後編ではジェニファー・ローレンスと組んでいます。この監督ならではの特徴ある演出というものはないのですが、ミュージックビデオ出身者らしい映像美と、無難に娯楽作をまとめてみせるスキルがハリウッドでは重宝されているようです。

本作の企画はまずダーレン・アロノフスキー監督に持ち込まれ(『ブラック・スワン』でバレリーナを扱ったためでしょうか?)、その後デヴィッド・フィンチャー、ルーニー・マーラの『ドラゴン・タトゥーの女』コンビの手に移ったものの、最終的にはこの『ハンガー・ゲーム』コンビに落ち着きました。

ジェニファー・ローレンスが良すぎる

満を持してのヌード

以前よりグラマラスな体形に注目の集まっていたジェニファー・ローレンスがついに脱ぎましたよ!一応、ダーレン・アロノフスキー監督の『マザー!』でもおっぱいは見せてましたけど、あちらは一瞬だった上に、集団リンチで服をはぎ取られるという正視に耐えないシチュエーションだったので、正直言ってほぼ有難みはありませんでした。しかし本作では結構がっつり頑張っておられました。また、彼女が演じるドミニクの腹の座り方や、相手を手玉に取る技術の高さを示す場面でのヌードだったので作劇上の必然性もあって、たまに見かける満を持してのヌードが完全な無駄脱ぎというパターン(例『イン・ザ・カット』のメグ・ライアン、『ソードフィッシュ』のハル・ベリー)にも陥っておらず、女優を見せる映画としてはきちんと機能していました。

拷問女優の真骨頂

撮影当時18歳にしてアカデミー主演女優賞にノミネートされた『ウィンターズ・ボーン』では、半殺しのリンチを受けながらも幼い兄弟との生活を守るために一族の掟に挑む少女を演じており、また前述した『マザー!』でも壮絶な集団リンチを受けており、暴力の被害者役となることの多いジェニファー・ローレンスが、本作でも壮絶な拷問を受けています。演技がうまい彼女はリアクションが良く、本当に苦しい痛い目に遭っているように見えるし、暴力を受けながらも自分自身の思いを貫き通すという芯の強さも同時に表現できているので、暴力に意味を持たせることに大変長けた女優さんだと思います。

「惚れてまうやろ!」という美しさ

彼女は魅力的なんですが、それはシャーリーズ・セロンやニコール・キッドマンのような超越的な美貌ではなく、よく言えば身近な、ちょっと悪く言えば庶民的なレベルであることが非常に絶妙です。これくらいの美人がリアリティあって一番モテますね。ハニトラ要員としては非常に説得力があり、彼女の虜になる男たちが過度に愚かに見えないという点で、作品の品質維持にも貢献していたと思います。

二転三転どころではない捻りの効かせ方が凄い

本作にはスパイ映画らしい派手なアクションはなく、そこにあるのは騙し騙されの世界なのですが、この捻りの効かせ方が凄いことになっています。

私は、主人公ドミニクがロシアからの亡命を求める二重スパイであると見せかけつつ、実はロシア側のミッションを遂行するためにCIA諜報員ネイトの善意を利用していただけだったというオチで終わるのかなと思って見ていたのですが、その程度のドンデンは中盤でさっさと処理されてしまい、後半より思いもよらぬ方向へと物語は展開し始めます。スパイ映画を見慣れた観客でも予想の付かない着地点を用意してみせたことには驚かされました。

おかしかった点

バレリーナからハニトラ要員への転向が不自然

主人公・ドミニカは怪我が原因でバレリーナとしての将来を断たれ、その後なんやかんやあってハニトラスパイ道に進むことを余儀なくされるのですが、将来有望な学生レベルならともかく、大劇場でプリマを務めるレベルの、すぐに身バレする人間がスパイに勧誘されるというのはさすがに無理あり過ぎじゃないのと思いました。

百歩譲ってドミニカクラスの人材をスパイにするのであれば、相手国の政府高官や高級官僚といったエグゼクティブが集まるパーティーなどに紛れ込ませても怪しまれないことを利用して、そうした大物ターゲットを専門に狙わせる要員としては使えると思うのですが、ペーペーの工作員扱いで敵国の現場工作員を落とすために使うというのは非現実的すぎるかなと思いました。

あと、がっちり体形、特に下半身がしっかりとしたジェニファー・ローレンスがどうやってもバレリーナには見えないという点も気になりました。実はジェニファー・ローレンスはダンス全般を不得意としているのですが、3か月かけてバレエを習得するほどの女優魂を見せたらしいのですが、さすがに努力と根性ではどうにもならなかった点も多かったのか、冒頭の舞台の場面では替え玉を使ったと思われる背中からのショットがやたら目立ちましたね。

叔父の動機が不明

ドミニカにハニトラ要員への道を開き、現場で積極的に活用したのは叔父・ワーニャなのですが、工作員とは危険な立場であり、かつ、その工作員の中でも特に現場色の強いハニトラ要員に自分の身内を引き入れるということは、通常ではちょっと考えられません。一応、昔から美人の姪っ子に性的関心を抱いていたという理由は提示されるものの、その欲望の実現方法がなぜ彼女をハニトラ要員に仕立て上げることなんだろうかという点は腑に落ちませんでした。

このワーニャの動機や、ドミニカとワーニャの愛憎関係こそが全体のオチにまで繋がる作品の重要な構成要素の一つだと思うのですが、この点の説明が不十分なのでモヤモヤさせられたままとなりました。

ロシア、すぐに拷問しすぎ

ちょっとでも疑念を抱くと自国のスパイであっても容赦なく拷問するロシア。ハニトラ要員育成学校まで作り、金をかけて育成した人材を随分と粗末に扱う点が気になりました。そもそもスパイって自国への忠誠心が高く、敵国に潜入させたり、高値で買い取られる機密情報にアクセスさせたりしても寝返ることはないとの確信を持てる人材のみを選抜して現場へと送り出していると思うのですが、こんなにも自前のスパイを信用していない組織には違和感がありました。

【おまけ】フロッピーディスクの登場は間違っていなかった

ロンドンにてアメリカ人の議員スタッフから軍事機密を買い取るという緊迫した場面で登場するのが、まさかのフロッピーディスク。それまでの冷戦時代っぽい雰囲気もあって「あれ?この映画の設定年代っていつだっけ?」と混乱したのですが(21世紀を舞台にした現代劇です。念のため)、鑑賞後に調べたところ、ここでフロッピーディスクが登場することは間違っていないようです。

2016年5月26日付けのBBCの報道によると、米国防総省で核戦略を担当する部署は1970年代のコンピューターシステムとフロッピーディスクをいまだに使い続けているとのことでした。この時代遅れのシステムには毎年610億ドルという膨大な管理コストがかかっており、2020年末までには最新のシステムに入れ替えるようなのですが、ともかく本作制作時点ではバリバリの現役でした。

また、本作の原作者であるジェイソン・マシューズによると、情報セキュリティの観点からもフロッピーディスクは有用であるとのことでした。コンパクトかつ大容量なUSBメモリーなどは情報の大量流出のリスクがあるのに対して、容量が小さくてしかも目立つフロッピーディスクは持ち込み・持ち出しのリスクを小さくするということがその理由のようです。

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Red Sparrow
監督:フランシス・ローレンス
脚本:ジャスティン・ヘイス
原作:ジェイソン・マシューズ
製作:ピーター・チャーニン、スティーブン・ザイリアン、ジェンノ・トッピング、デヴィッド・レディ
製作総指揮:メアリー・マクラグレン、ギャレット・バッシュ
出演者:ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ、シャーロット・ランプリング、メアリー=ルイーズ・パーカー、ジェレミー・アイアンズ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
撮影:ジョー・ウィレムズ
編集:アラン・エドワード・ベル
製作会社:TSGエンターテインメント、チャーニン・エンターテインメント
配給:20世紀フォックス
公開:2018年3月2日(米)、2018年3月30日(日)
上映時間:140分
製作国:アメリカ合衆国

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