フッド:ザ・ビギニング_中世のダークナイト【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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中世・近代
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(2018年 アメリカ)
何度目なのか分からないロビンフッドの映画化ですが、今回は『ダークナイト』(2008年)のような光の騎士と闇の騎士の対比や、ヒロインを間に挟んだ三角関係という構図が置かれています。この試み自体は悪くなかったのですが、うまく機能していないために中途半端な出来に終わっています。

感想

不安定な世界観

第3回十字軍を背景にした『ロビン・フッド』は12世紀末頃がその舞台であると考えられるのですが、本作は時代考証にこだわらず自由な発想で世界観が構築されています。

ロビン(タロン・エガートン)やノッティンガム州長官(ベン・メンデルソーン)の衣装は現代風のデザインだし、敵方の衛兵は顔面全体を覆ったファンタジー風の甲冑を身に着けているし、パーティーではクラブみたいな音楽がかかっています。

十字軍戦争の兵士達は銃を構えるかのようなスタイルで弓を引いており、ここからは否応なしに現実のイラク戦争を想起させられました。

こうした自由な発想の時代劇も悪くはないのですが、やるなら徹底的にやり切るべき。例えばジュリー・テイモア監督の『タイタス』(1999年)では、古代ローマを舞台にしながらもバイクや自動車を登場させることで「皆さんが思っている世界観ではありません」というアピールを目いっぱいしていました。

その点が本作は弱く、時代考証を無視している割にはそれに代わるしっかりとした世界観を提示できておらず、何とも中途半端。そのために時代劇として見ればいいのか、ファンタジーとして見ればいいのか、現代を反映した世界として見ればいいのかを最後まで掴み兼ねました。

加えて、12世紀のイングランドの物語なのに一般大衆の中に有色人種が含まれていたり、領主であるロビンと庶民であるマリアン(イヴ・ヒューソン)が何の問題もなく恋仲になっていたりと、社会風土の描き方もかなり適当。

階級闘争を物語の柱にしているにも関わらず、この点を疎かにしたのでは話にならないでしょう。

中世のダークナイト

ノッティンガムの領主ロビン(タロン・エガートン)が十字軍に徴兵されて4年後に帰国すると、故郷では戦死者扱いされて領地がノッティンガム州長官(ベン・メンデルソーン)に没収されているわ、結婚を約束していたマリアン(イヴ・ヒューソン)には民衆の代弁者として活動しているウィル(ジェイミー・ドーナン)という立派な新カレができているわと、もう滅茶苦茶。

海よりも深く落ち込むロビンですが、アラブ人の元兵士ジョン(ジェイミー・フォックス)からの厳しい教育で何とかメンタルを持ち直し、アラブの弓術を習得して戦闘力強化を図ります。

そして昼はノッティンガム長官に対して従順な領主として振る舞う一方、夜は長官の財産を奪い庶民に分け与える覆面のヒーローとして活動し、腐った政府を倒すための二重生活に勤しみます。

物語はざっくりこんな感じで、ノッティンガム長官という打倒すべき巨悪に対しロビンは武力を用いるのに対し、ウィルは民意の結集と交渉によって悪政を正そうとしており、恋敵である二人はファイトスタイルにおいても対照的な存在として描かれています。

それはまるで、『ダークナイト』(2008年)におけるバットマンと地方検事ハービー・デントの対比のようでした。

そしてマリアンを間に挟んだ三角関係もまた、ブルース・ウェイン、レイチェル・ドーズ、ハービー・デントの三角関係を彷彿とさせます。

そんなわけでロビンとウィルとの対比が本作のドラマの主軸だったように思うのですが、ウィルの思想なり方法論なりがきちんと整理されていないため、観客に何かを感じさせるレベルに達していませんでした。

恋愛関係についても同様。ロビンはウィルを差し置いてでもマリアンと復縁したいのか、ウィルとの関係性を重く見てマリアンを諦めているのかが定かではないため、三角関係も全然盛り上がりません。

本作は中世で『ダークナイト』(2008年)をやろうとしていたのですが、いろいろと煮詰め切れないために失敗した作品だったと言えます。

超絶弓アクション

そんな感じでいろいろ厳しい出来ではあるのですが、肝心のアクションが面白かったので、決して見ていられないレベルの作品でもありません。

ロビンはアクロバティックに動き回り、目にも止まらぬ勢いで矢を連射します。この見せ場がカッコよくていくらでも見ていられるのですが、実はこれ、アラブの文献にも記載がある実際の弓術なのだとか。

現代の弓術は直立不動で正確に矢を射るための技術なのですが、それとは別に動き回りながら速射するという弓術も過去に存在していたそうです。これには驚きました。

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