キャットウーマン_コスプレvs厚化粧【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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DCコミック
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(2004年 アメリカ)
伝説的な失敗作で、その前評判通りのつまらない映画でした。最初から美人のハル・ベリーではキャットウーマンへの「変身」を体現できていないし、敵は生身のシャロン・ストーンなので負ける気がしないし、ポップなノリがしんどいし、良いところはほぼありませんでした。

作品解説

キャットウーマンとは

本作はDCコミックの古参キャラクター キャットウーマンの単独主演作で、バットマンとのクロスオーバーも意図されていない完全スタンドアローンの作品です。

コミックでは1940年に初登場。原作者のボブ・ケインが映画ファンだったことから当時の人気女優ジーン・ハーローをモデルに構築されており、それゆえに実写化しやすいキャラクターであるようです。

もっとも有名な実写化例は『バットマン・リターンズ』(1992年)でミシェル・ファイファーが演じたセリーナ・カイル/キャットウーマンで、地味で内気なセリーナが偶然にも上司の悪だくみを聞いてしまったことから殺害され、ネコの魂を得て復活するという概要は、本作にもほぼそのまんま引き継がれています。

本作の後には『ダークナイト ライジング』(2012年)でアン・ハサウェイが演じているのですが、劇中で一度もキャットウーマンと名乗る場面がなく、観客がそう認識しているだけという状況です。

10年越しの企画

『バットマン リターンズ』(1992年)の直後よりワーナーはキャットウーマンの単独主演作を製作するつもりであり、1993年6月には『バットマン フォーエヴァー』(1995年)と併せて製作が発表されました。

ティム・バートンが制作に名を連ね、ミシェル・ファイファーも主演に乗り気。しかし良い脚本が出来なかったようで、企画は進展しませんでした。

2001年頃にはアシュレイ・ジャッド、ニコール・キッドマンらが候補に挙がったものの、引き続き進展はなし。

事態が一変したのが2003年頃で、ウォルフガング・ペーターゼン監督、バットマン役にコリン・ファレル、スーパーマン役にジョシュ・ハートネットがキャスティングされていた『バットマンvsスーパーマン』の企画が潰れたことから、代わりの作品を必要としていたワーナーは開発地獄状態だったキャットウーマンに本腰を入れ始めました。

主演には『007 ダイ・アナザー・デイ』(2002年)で演じた女スパイ ジンクスのスピンオフ企画が中止になって体が空いていたハル・ベリーを起用。彼女には『X-MEN』シリーズでストームを演じた実績もあり、無難なキャスティングに思えました。

興行的大失敗

本作には1億ドルもの製作費がかけられており、続編を製作する気満々の期待作だったのですが、大ヒット作『ボーン・スプレマシー』(2004年)と公開日が重なってしまうという不運もあって、初登場3位と低迷。

全米トータルグロスは4020万ドル、全世界でも8210万ドルと製作費の回収もできないほど低迷し、シリーズ化構想は潰えました。

ハル・ベリーがラジー賞授賞式に出席

さらに不幸は続き、その年のラジー賞で作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞の4部門を受賞。

ラジー賞受賞とは、ネタにされたりイジられたりしているってことなので通常の受賞者は無視するのですが、ハル・ベリーはトロフィーを受け取りに現れました。

これはポール・バーホーベンが授賞式に表れた1996年3月、トム・グリーンが現れた2002年3月以来のことであり、その姿勢は称賛を浴びました。

感想

ハル・ベリーが地味なドジっ子に見えない

地味でドジだが心の優しい女性ペイシェンス・フィリップス(ハル・ベリー)が会社の悪だくみを知ってしまったことから殺害され、奔放で攻撃的なキャットウーマンとして復活することが作品の概要。

変身前と変身後のギャップが見所の一つだろうと思うのですが、ハル・ベリーがどうやっても地味なドジっ子に見えないことがしんどかったです。

アカデミー主演女優賞を受賞した『チョコレート』(2001年)もそうでしたが、ハル・ベリーはどうやっても美貌や華というものを隠し切れないので、普通の人間の役ができないわけです。

本作でも「彼氏できないわ~」とか「良いことないわ~」なんて言って肥満やゲイの同僚に相談している様があまりに嘘っぽくて、その見た目で生きてきて誰からも見向きもされないなんてありえないだろとツッコミを入れてしまいました。

地味な服装も着せられている感が強くて「はいはい、変身後とのギャップを出すためですね」という冷めた見方になってしまったし、変身後にも「あのペイシェンスがこんなクールビューティに!」という感慨はなく、ようやくいつものハル・ベリーに戻っただけでした。

『スパイダーマン』(2002年)のトビー・マグワイアのように、変身前の地味な方を軸にしてキャスティングしないとダメですよ。

ポップなノリがしんどい

また女性や若い人を集客したかったのか、ヒーロー映画の定番である勇壮なメインテーマを置かず、ポップな歌謡曲をバックミュージックに使うという演出も完全に裏目に出ていました。

ターゲットに媚びた感じが前面に出てしまっており、映像のカッコよさよりも先に作り手側の打算を感じてしまうわけです。

カメラが不自然なレール移動をしたり、ズームを繰り返したりで、画面がせわしなく動き続けていることも邪魔でしかありません。中身がないことを必死で取り繕おうとしたが、結局誤魔化せていない感じになっています。

ファンが見たいのはヒーローのかっこいいポーズであって、せわしなく動き回るカメラワークではない。そのことが分からなかったのでしょうか。

全体的に「ウケそうな絵作り」をしているのですが、アメコミ映画を見に来ている観客にとってはそのポップなノリがしんどいわけです。

どんどん敵が弱くなっていく

キャットウーマンに変身したペイシェンスがまず戦うのはショットガンで武装した複数人の宝石泥棒、次に戦うのが殺人容疑をかけられた自分を追ってくる警察、そして最後に戦うのがシャロン・ストーンと、時の経過と共に戦う敵がどんどん弱くなっていくのはどうかと思います。

シャロン・ストーンなんて化粧品の副作用で肌が硬くなっただけのおばさんですからね。

武装した強盗を軽くあしらったキャットウーマンを事前に見ていればこんな対決なんて楽勝でしょと思うところですが、これが意外と苦戦するというパワーバランスの出鱈目さはいい加減にして欲しかったです。

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