ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ_泥沼の主導権争いが見ごたえあり【8点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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実話もの

(2016年 アメリカ)
前半は比較的まともなビジネス映画なのですが、後半では創始者であるマクドナルド兄弟と創業者であるレイ・クロックとの間の主導権争いが本格化し、争いが人を醜くしていく様がドラマチックに描かれます。味わいの異なる前半と後半で一粒で二度おいしい的な魅力のある作品であり、ビジネスの勉強にもなり、とても意義のある映画でした。大好きな作品です。

© 2016 – The Weinstein Company

あらすじ

1954年、ミルクシェイク用のミキサーを販売していたレイ・クロックは、売り上げがいまひとつなミキサーを一度に8台も注文してきたマクドナルドという名前のハンバーガー店に興味を持ち、アメリカを横断してカリフォルニアのマクドナルドにまで足を運ぶ。そこでは注文から僅か15秒で美味しいハンバーガーを提供する徹底した合理化経営がなされており、このビジネスモデルに光るものを感じたクロックは、経営者のマクドナルド兄弟からフランチャイズ権を獲得する。

スタッフ・キャスト

伝説の大コケ映画『アラモ』のジョン・リー・ハンコックが監督

1957年テキサス出身の監督・脚本家で、クリント・イーストウッド監督の『パーフェクト・ワールド』(2004年)の脚本で注目されました。大コケ映画の歴史で必ず挙がる『アラモ』(2004年)の監督として有名なのですが、後にサンドラ・ブロック主演の『しあわせの隠れ場所』(2009年)を中規模予算ながら大ヒットさせて信用を取り戻しました。

実話もののドラマを得意としており、『オールド・ルーキー』(2002年)、『ウォルト・ディズニーの約束』(2013年)、『ザ・テキサス・レンジャーズ』(2019年)などを監督しています。本作もその系譜に連なる作品であり、彼の得意分野であると言えます。

『レスラー』のロバート・シーゲルが脚本

本作の脚本は2014年のブラックリスト入りで注目を浴び、ワインスタイン兄弟がこれを買い取って製作が始まりました。脚本を書いたのはロバート・シーゲルで、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞でミッキー・ローク復活のきっかけとなったドラマ『レスラー』(2009年)の脚本家として知られています。

作品概要

マクドナルド「創業者」レイ・クロックとは

本作の主人公レイ・クロックとは、マクドナルド創業者(ファウンダー)として知られる人物です。

マクドナルドってマクドナルドさんが作ったんじゃないの?なんでクロックさんが創業者なの?と思われるかもしれませんが、そこにはちょっと複雑な物語があります。

レイ・クロックは1902年イリノイ州出身。第一次世界大戦中に15歳で高校を中退して赤十字の運転手に志願し、衛生隊に配属されましたが、戦地に出征することはなく終戦を迎えました。

戦後は職を転々とし、1941年にマルチミキサーの独占販売者となって国中を旅して回りました。1954年に最初のマクドナルドを経営していたマクドナルド兄弟と出会ってフランチャイズ権を獲得し、1955年、イリノイ州に最初のフランチャイズ店を開業。

1955年にマクドナルドシステム会社を設立し、1961年にマクドナルド兄弟から商権を270万ドルで買収。1984年までに世界34カ国8300店舗を開業し、同社を世界最大のフードフランチャイズに育て上げました。

こうして書いてみると、マクドナルドにとって生みの親がマクドナルド兄弟とするなら、育ての親がレイ・クロックと言えるのですが、映画でも描かれているとおり、両者の関係はそれほど美しいものではありません。

クロックはマクドナルド兄弟が発明した画期的なシステムを乗っ取り、彼らをフランチャイズから追い出し、兄弟がマクドナルドの名前で商売をできなくしたのです。そして、クロックが「創業者」を名乗るようになりました。

フランチャイズ離脱後のマクドナルド兄弟が「ビッグM」という名前のハンバーガー店を出した時、クロックはその目の前にマクドナルドを出店して数年で閉店に追い込みました。

【参考】https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF

感想

前半部分は真っ当なビジネス映画

↑でレイ・クロックの人生について偉そうに書きましたが、実は鑑賞時点ではマクドナルド兄弟とレイ・クロックの関係をまったく知らなかったので、私は本作を熱い思いを持った男達が苦労して巨大フードチェーンを作るプロジェクトX的な話だとばかり思っていました。

実際、前半部分はそのように推移していきます。ミキサーを抱えてアメリカ中の飲食店を飛び回っているセールスマンのレイ・クロック(マイケル・キートン)が、画期的な経営を行っているマクドナルド兄弟と出会い、この素晴らしいシステムをあなたたちの手の内だけに眠らせておくのは勿体ないので、私にこれを広めさせてくださいと提案します。

そこからクロックは50代という年齢ながら身を粉にして働き、マクドナルドのFC化を進めていきます。その過程では一般的なビジネス映画と同じく資金調達に苦労したり、経営理念が末端にまで行き渡らないという問題が生じたりし、その度にクロックは課題の解決に取り組みます。

少なくとも、前半部分は真っ当なビジネス映画として機能しています。そして、ビジネス映画としてきちんと面白くできていました。

主導権争いに転じる後半の面白さ

前半が立志伝的な物語だとすると、後半はマクドナルド兄弟vsクロックの主導権争いとなります。

創業者の目の届く範囲内で完璧な経営ができていればいいと考えているマクドナルド兄弟に対し、拡大にあたっては一度も会ったことのないFC店経営者にも本店と同じ経営をさせる必要があり、そのためには捨てねばならないこだわりもあるというクロックでは目指すものが根本的に異なっており、その確執はどちらが悪いでもなく発生します。

こうした、どちらにも相応の言い分のある争いって当事者同士では地獄なんですが、第三者的な視点で見ると面白いものです。「これはマクドナルド兄弟が正しいな」「これはクロックの言う通りにすべき」と観客側が能動的に判断しながら鑑賞する楽しみがありました。監督と脚本家は、この知的な駆け引きを実に効果的に描き出していきます。

ただし問題だったのは、地方で数店舗を経営するだけのマクドナルド兄弟と、全国にFC店を展開するクロックとでは権力が違い過ぎたということでした。最終的にクロックはマクドナルド兄弟とは無関係なマクドナルドという名前の別会社を作り、彼らの名前を使って商売をしているにも関わらず彼らを経営から締め出し、マクドナルド兄弟がマクドナルドの名前を二度と使用できないようにし、マクドナルドの売上高の1%のロイヤリティを支払うという約束を反故にし、完膚なきまでの勝利を収めます。

「我々は君にすべてを見せていたんだから、君はアイデアだけを盗んでマクドナルドとは無関係な独自店舗を作ればよかったじゃないか。なぜ我々の店を乗っ取ることにしたんだ」というディック・マクドナルドからの質問に対し、クロックは「マクドナルドという名前こそが欲しかったんだ。これは客を引き付ける名前だ」と答えます。

努力家のおじさんが、最終的には弱い者いじめをする権力者へと転じていったのです。この過程もまたドラマチックで見応えがありました。

マイケル・キートンが素晴らしすぎる

ここで大きな役割を果たしているのがレイ・クロックを演じるマイケル・キートンです。

リメイク版『ロボコップ』(2014年)でも感じたのですが、マイケル・キートンという俳優は根本的には悪人なんだが、そこに人好きのする要素を持ち合わせた複雑なキャラ造形を得意としています。

ロボコップ(2014年)【良作】大胆にアップデートされた21世紀版ロボコップ

本作においてもキートンが演じるレイ・クロックはヒールの立場にはあるのですが、根っからの悪人ではなく、目的のためにただならぬ努力をし、自身の情熱に周囲を巻き込んでいくような善なる一面を持ち合わせています。

フランチャイズ1号店を開業する際には家を抵当に入れてまで資金調達し、開業した店に足しげく通って意図した通りの運営になっているかを確認します。2号店、3号店と拡大していく際には金持ち仲間からの嘲笑を受けながらもフランチャイズの引き受け手を探して回り、彼は持てる労力・コネクションのすべてをマクドナルドに捧げていました。

この思わず応援したくなるようなおじさん像を、キートンは見事に具体化できています。中卒の叩き上げで成功への渇望とコンプレックスの塊という小市民感は観客との共感の接点になっているし、基盤の弱さを努力と活動量でカバーしようとする様にはドラマが宿っていました。

だからこそ、後半でマクドナルド兄弟を追い出す過程においても、クロックのやり方は汚いが、ここまで苦労して築き上げたフランチャイズをマクドナルド兄弟の干渉から独立させ、完全に我がものにしたいという発想を理解できなくもないというところにまで持っていけています。

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