アウトサイダー(2018年)【4点/10点満点中_見てくれは素晴らしいが内容が伴っていない】

スポンサーリンク
スポンサーリンク

[2018年Netflixオリジナル作品]

4点/10点満点中

■昭和20年代の日本の再現度のすごさ

当初はダニエル・エスピノーザ監督×マイケル・ファスベンダー主演で企画が進んでいたが実現せず、その後に三池崇史×トム・ハーディ組に引き継がれたがこれも流れ、最終的にNetflixが拾い上げたことで完成したのが本作ということなのですが、制作過程で日本人監督が指揮をとっていた時期もある作品だけに、アメリカ映画にありがちなおかしな日本描写はほぼなし。それどころか昭和20年代の日本家屋や歓楽街のセットなどは下手すると日本映画以上の再現度だし、主要キャストどころかエキストラ一人一人に至るまでちゃんと当時の人に見えているし、極道達の全身に彫られた入れ墨のリアリティも凄まじく、資本と労力が適正に投下された良作という見てくれになっています。

■日本人キャストの熱演

また、日本人キャストの熱演も見どころとなっています。浅野忠信と椎名桔平の演技は両者のキャリア相応の安定感だし、組長役の田中泯の重厚感もすごい。今まであまり気にしたことのなかった忽那汐里は儚さと芯の強さを両立しているし、あと大きな収穫だったのが安田大サーカスのHIRO君がめちゃくちゃ良かったことで、コメディリリーフかと思いきや、ドスの利いた関西弁で怖い人になりきっています。主要キャストの中で一番本物の極道っぽかったのはHIRO君でした。

■任侠道を貫く者が愚か者に見えてしまうという失敗

ただし、肝心の内容がイマイチ。任侠道という美学と、物語としての合理性との間で作品全体が適正な温度感を掴めておらず、なかなか作品に感情が乗っからないのです。例えば「今回は武器なしで」という約束で大阪の組(主人公側)が神戸の組(敵側)に会談を持ちかけられるくだり。ホテルや料亭といった相応の場ならともかく、埠頭に呼び出されるという怪しさ全開のシチュエーションなのにまともな準備もせずに乗り込み、案の定敵対する組に裏切られるわけです。男らしく任侠道を通した大阪の組と、卑劣にもそれを裏切った神戸の組という構図を作りたかったのかもしれませんが、私には抗争中の相手の善意を信用しきった側が悪いように見えました。

また、それだけの裏切りをした神戸の組は大阪の組を皆殺しにするのかと思いきや、「親分のタマは取ったし、下っ端のお前らは生かしといてやる」とおかしなところで男気を発揮し始めます。どう考えても後日復讐されることが明白な状況なのに、気が立った状態の大阪の組員達をそのまま解放し、牽制的な動きもせずに放置して案の定復讐される神戸の組。バカなんでしょうか。

■不完全燃焼を起こしたドラマ

ヤクザの抗争がこの物語の縦軸だとすると、忽那汐里演じる美由を巡るニック・清・オロチの感情の行き違いこそが横軸であるように思うのですが、これが不完全燃焼を起こしています。大事な妹がヤクザ者とくっついて欲しくない清、陰ながら美由に好意を抱いていたが清への友情や恩義から遠慮してきたオロチ。美由・清・オロチの間でギリギリに保たれてきた関係性の中にバランスブレイカー・ニックが割って入り、それが古巣に対するオロチの裏切り行為の引き金となって組間の一大抗争に発展するという筋書きだったと思うのですが、この4者の感情が全然整理されていません。

例えば、美由と深い仲になっていることを知った清は『スカ―フェイス』のアル・パチーノばりにニックを殴り倒すのかなと思いきや、「おお、そうか。じゃあ今後はお前が妹を守ってやってくれ」」とか言って、家宝の日本刀をプレゼントするわけです。そんなにアッサリ納得するのであれば、ヤクザ者とくっついて欲しくない云々の話は要らなかったんじゃないのと思ってしまいます。オロチもオロチで、昨日今日出会ったばかりで清や美由、さらには親父と慕う組長にまで取り入ったニックがとにかく気に入らないということは分かるものの、少年期にまで遡ることができる清との関係性を全面的に破壊するほどの行為に至る動機としては弱いかなと思いました。ニックを挟まない状態での清とオロチの愛憎関係など他のファクターも描かないと説明がつかなかったはずなのに、監督は爬虫類面の椎名桔平に「いかにも悪い奴でしょ」という表情をさせるだけで視聴者を納得させようとしているのです。

■Netflixの不干渉主義が作品を不完全なものにしている

Netflixの映画には正直微妙なものが多く、クリエイティブ面での干渉をしないという方針が悪い目で出ているのではないかと思います。作品に関わり過ぎた当事者達では気付かない穴を第三者的な視点で発見し、これを修復するという良い干渉もあると思うのですが、現場の意向だけでリリースにまで漕ぎ着けてしまうことが問題ではないかと思います。

The Outsider

監督:マーチン・サントフリート

脚本:アンドリュー・ボールドウィン

製作:ジョン・リンソン、アート・リンソン、ケン・カオ

製作総指揮:ウィリアム・W・ウィルソン三世、ジャレッド・レト

出演者:ジャレッド・レト、浅野忠信、椎名桔平、忽那汐里、田中泯、大森南朋

音楽:スーネ・マーチン

撮影:カミラ・イェルム

編集:ミッケル・E・G・ニールセン

製作会社:Linson Entertainment、Waypoint Entertainment

配給:Netflix

公開:2018年3月9日

上映時間:120分

製作国:アメリカ合衆国

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
記事が役立ったらクリック
クライムアクション
スポンサーリンク
公認会計士の理屈っぽい映画レビュー

コメント