ミッドナイト・エクスプレス【7点/10点満点中_嘘八百だが面白い社会派映画もどき】

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[1978年アメリカ]

7点/10点満点中

テロリズムへの関与やスパイ活動の罪に問われた米国人アンドリュー・ブランソン牧師を巡ってトルコとアメリカがやり合っているニュースを見てふと本作を思い出し、Netflixを探してみると配信されていたので、久しぶりに鑑賞してみました。

■オリバー・ストーンの出世作

本作を制作する前のオリバー・ストーンは『プラトーン』の脚本を持ってスタジオ各社を回っていたものの、ベトナム戦争映画が忌避されていた時期だったこともあってどこからも断られていました。しかし『プラトーン』の脚本自体はよく出来ていたことから脚本家としての腕前は認められ、本作を脚色する仕事が回ってきたと言います。『邪悪の女王』というどうしようもないB級ホラー映画以外に実績のなかったオリバー・ストーンがいきなりメジャースタジオの作品で単独クレジットされ、しかもこれ一発でアカデミー脚色賞を受賞という快挙を成し遂げたわけですが、以下の通りこれほど史実をいじくりまくって面白い話に作り替えたオリバー・ストーンの手腕は、確かに”脚色賞”に値するなぁと思いました。

■実話ベースが売りの作品だったが…

オープニングとエンディングのテロップにより「リアルガチですよ!」という点がやたら強調された作品であり、作品レビューなどを見ても本作を実話として受け取っている方が多いようなのですが、調べてみると原作者のビリー・ヘイズが本作の内容を否定しており、また脚色を担当したオリバー・ストーンも2004年に本作の脚色が行き過ぎていた件をトルコ政府に謝罪しており、実は作品中のイベントの大半が創作だったことが判明しています。

  • ヘイズが空港で逮捕された時は一人で、横に恋人はいなかった
  • 看守からレイプされかけたことはない
  • 同房のスウェーデン人とは恋仲になった(映画ではやんわり拒否している)
  • 密告屋を殺してはいない
  • 看守長は脱獄前の時点において別件で殺されており、ヘイズが殺害したわけではない
  • 実際には船での護送中に海を泳いでの脱走だったが、予算の関係から徒歩に変更された

もし現代において同じような映画を作れば大炎上すると思います。

■史実には反しているが脚色は優れている

私のような細かい人間はこうした誤謬があるとその映画を受け付けなくなったりするのですが、本作の場合には映画があまりに面白すぎて、嘘八百の部分も「仕方ねぇなぁ」と許せてしまえました。

異国の地で捕らわれることの絶望感や、不合理なルールに弄ばれることの理不尽さを観客にも疑似体験させており、現実味を感じさせる物語となっています。映画的誇張(要はウソのつき方)がうまいのです。リアリティにこだわってつまらなくなる社会派映画も多く存在する中で、史実から離れて映画的なリアリティを極めた本作は、倫理的な問題は多く抱えているものの娯楽作としてはあっぱれだったと言えます。

例えば、精神を蝕まれていた主人公が恋人との面会で性を刺激され、そして生への執着を取り戻すという展開は史実にはないのですが、それまで魂を失った箱のようになっていた主人公が文字通り再起するという圧倒的なダイナミズムの表現としては非常に的確でした。

■主人公の人物造形も良い

そもそも、本作は麻薬密輸をしようとした上に捜査協力の際に逃走を図った主人公の自業自得の話であり、再審の場での「大した罪も犯していない俺が、なんでこんな目に遭わされるんだ!」という涙の訴えも「いやいや、麻薬密輸は微罪じゃないから」で一蹴されかねない題材ではありましたが、これら主人公の犯した罪を”若気の至り”と感じられるように見せた辺りのうまさもあります。

冒頭、主人公は汗だくだくで挙動不審なのですが、この描写から彼はプロの運び屋ではなく出来心での犯罪だったことがよく分かります。また逮捕後にも起こるすべてのことに不慣れであり、こちらでも彼が生粋の悪党ではないことが伝わってくる仕組みになっています。彼の感性や能力は一般的な若者のものであり、腕っぷしで誰かを倒すようなこともなければ、立派なことを言ったりもしない。まさに等身大の若者像にこだわって作られていることが、この特異な物語と観客との間の共感の接点となっています。

主人公役へのキャスティングにあたってコロンビア・ピクチャーズはリチャード・ギアの起用を要求していたようなのですが、アラン・パーカーは無名俳優に演じさせることにこだわってスタジオの要求を拒否しました。このキャスティングも吉と出ており、スーパーマンではない普通の若者が多くの失敗をしながらも苦境の中をサバイブする物語として全体が仕上がっています。

Midnight Express
監督:アラン・パーカー
脚本:オリバー・ストーン
原作:ビリー・ヘイズ,ウィリアム・ホッファー
製作:アラン・マーシャル,デヴィッド・パットナム
製作総指揮:ピーター・グーバー
音楽:ジョルジオ・モロダー
撮影:マイケル・セレシン
編集:ジェリー・ハンブリング
配給:コロンビア映画
公開:1978年10月6日(アメリカ),1978年10月21日(日本)
上映時間:121分
製作国:アメリカ合衆国

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公認会計士の理屈っぽい映画レビュー

コメント

  1. newhellsing より:

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    ロードショーという映画雑誌で、この映画を映画評論家の故淀川長春さんが評価してました。その文面に、ご指摘の拘留された主人公に恋人が面会するシーンについて、言及してました。ここに書いてある通りだったと記憶してます^^b

  2. newhellsing より:

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    children-of-menさんの指摘が的確であって、有名評論家と同じ目線・感想を持たれるのは、すごいなあと思った次第です。淀川さんもどう書いていたか忘れましたが、同じようなニュアンスだったと記憶してます(≧∀≦*)

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    >newhellsingさん
    コメントいただき、ありがとうございます。
    淀川さんのレビューについては存じていたなかったのですが、偶然にも私が淀川さんと同じことを書いていたとは大変光栄です。