シルバートン・シージ_エンタメと社会派の折衷失敗【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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実話もの
実話もの

(2022年 南アフリカ)
南アのアパルトヘイト政策を糾弾する社会派エンタメ作品だが、籠城ものと社会啓蒙的な主張のバランスが悪く、どちらの要素も面白くなっていないのが残念だった。

登場人物

  • カルビン・クマロ:犯人グループのリーダー。戦いは運動のためという信念を持ち、一般市民に対する殺生を望まない。喘息持ち。
  • テラ:犯人グループの一人。逃走中に恋人が死亡したことから気持ちが高ぶっている。
  • アルド:犯人グループの一人。カルビンとは親しい。
  • ランガーマン警部:現場の指揮を担当する刑事。穏便な解決を望んでおり、強硬策には否定的。
  • クリスティーナ:人質の一人。銀行主任で内務大臣の娘。白人だが黒人の乳母への愛着を持っており、犯人グループに対しても同情的

感想

史実を知らないと視点が定まらない

1980年、アパルトヘイト政策真っただ中の南アフリカが舞台。

主人公は4名(後に一人殺されて3名になる)の反政府ゲリラで、彼らは爆破テロ作戦に従事しているのだが、どうにも現場の様子がおかしくて動けないでいる。

リーダーのカルビンはキレ者で、公安に張られていることをいち早く察してその場から逃げ去る。

そこから始まるカーチェイス&銃撃戦は素晴らしい出来であり、あまりなじみのない南アフリカ映画界の底力を見せられた気がした。

追い込まれた反政府ゲリラは銀行に立てこもり長い長い籠城戦が始まるのだが、ここからはまったく面白くなくなる。

まず彼らはヘリでの脱出を要求するのだが失敗。警官隊に取り囲まれており脱出は不可能と腹をくくった彼らは、収監中のネルソン・マンデラの釈放を求め始める。

ここからドラマは南アフリカの人種隔離政策を批判する内容へと移っていくのだが、上記の経緯を考えるとマンデラ釈放はその場でひねり出された要求なので、そこに信念らしきものを感じられない。

エンディングまでを見ると、この事件が1990年のマンデラ解放につながったということが分かる。すなわち南アフリカにとっては国民運動の発端となった重大事件だったのだろうが、事情を知らない私のような日本人にはピンとこなかった。これは構成のミスだろう。

全体的な内容も、籠城事件と社会啓蒙的な主の間をたえず行ったり来たりで、視点がよく定まっていない。

これまた、この事件の歴史的意義を知っている南ア国民ならば脳内補完できたのかもしれないが、基礎的知識の足りない外国人からすると、いろんな主張が中途半端になっているように感じる。

事件を理解したうえでもう一回見れば面白いのかもしれないが、そこまでの気力は残っていないなぁ。そんな映画。

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