ウォー・マシーン:戦争は話術だ!【4点/10点満点_状況と個人のどちらを批判したいのかが不明確】

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実話もの

[2017年Netflixオリジナル作品]

4点/10点満点中

■Netflixの本気度は感じられたものの…

配信開始前にはわざわざブラッド・ピットを来日させるという異例のプロモーションが行われ、ネットフリックスの尋常ではない鼻息が感じられた作品なのですが、肝心の内容は今ひとつでした。連続ドラマという分野ではオリジナル企画にて何作品もの秀作を生み出しているネットフリックスですが、映画という分野においてはまだまだノウハウを確立できていないようです。出資者が見つからずハリウッドを彷徨っていた企画を引き取るというプロセスで製作しているために、そもそもの企画力が弱いのです。

■冒頭で主題を全部説明してしまうという愚行

本作の問題点は、ご丁寧にも冒頭において映画の主題をナレーションで全部説明してしまっていること。登場人物の紹介をしながらアフガン戦争の真相をズバリ言い当てる冒頭のナレーションは確かに素晴らしい出来なのですが、冒頭でそれを全部言ってしまうと、残りの2時間はただの答え合わせになってしまいます。冒頭は問題提起に留め、2時間をかけて観客を結論に導くという構成であるべきだったと思います。

■個人を批判したいのか、理不尽な戦争に巻き込まれた個人を憐れむ内容なのかが不明確

他方、マクマーン将軍(及び、そのモデルになったスタンリー・マクリスタル大将)のドラマとしては、上記の主題との間で整合性がとれていない点がマイナスでした。オーバーアクト気味のブラピを見るにマクリスタル大将を茶化そうという製作者側の目的意識が感じられるし(やりすぎで少々不快ではありますが)、時折挿入されるナレーションではマクリスタルに対する厳しい批判がぶつけられるのですが、アフガン戦争全体を俯瞰した時に、マクリスタルという人物が状況に悪影響を及ぼしたようには見えません。

アフガン戦争は開戦動機からその後の対処法から何もかもが間違っており、さらにはアメリカ本国もアフガンの傀儡政権も当事者意識を著しく欠いており、現場指揮官個人の資質で何とかなるようなものではありませんでした。それは本作の製作者達も冒頭のナレーションで説明した通りなのに、作品内容は現場指揮官にも責めを負わせるような体裁とされているため、視点が散漫となっています。

アフガン戦争そのものとマクリスタル個人のどちらを批判したいのかという作品全体の軸足がしっかりとしていないのです。もしアフガン戦争そのものを批判したいのであれば、どうやってもうまくいかない現場の指揮を押し付けられたマクリスタルに同情的な視点で作品は描かれる必要がありました。本国すら成功の道程を示せていない泥沼に送り込まれ、苦しい状況の中で対処法を示しても本国から非協力的な態度をとられて現場との間の板挟みに遭い、挙句に失敗の責任をとらされた指揮官の悲劇としてこの題材を扱えば、世界中の多くの中間管理職に支持されるドラマになっただろうと思うのですが。

■マクリスタルへの人物評がブレブレ

さらに混乱をもたらしているのが、製作者側においてマクリスタルへの人物評が一定ではないこと。マクマーンはアフガン人に対しても部下に対しても礼儀正しく振る舞い、現場の士気が低下していると見るや自身の予定を変更してまで部下に寄り添おうとするし、戦闘中に部下が誤爆を起こせば自らが遺族への謝罪に向かう。ある意味で理想の上司として描かれているのですが、その一方で「マクマーンのような人間が悪いのだ」みたいなナレーションが挿入されるために、観客の側がこの人物と作品のテーマをどう結び付ければいいのかが分からなくなるのです。

■内容を誤解させる邦題

また、邦題のみにつけられた「戦争は話術だ!」という副題は、内容をまるで言い当てていません。この邦題からは、実力のない人間が口八丁手八丁でいい加減な指揮を執るが、いい加減な現場ではそれで何とかなってしまうというブラックコメディ的な内容を連想させられるのですが、実際には言葉ではなく態度で示す古いタイプの軍人が特殊な状況に苦しめられるという内容であり、邦題が示すものとは正反対であるように思いました。

 

War Machine

監督:デヴィッド・ミショッド

脚本:デヴィッド・ミショッド

原作:マイケル・ヘイスティングス『The Operators』

製作:イアン・ブライス、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、ブラッド・ピット

製作総指揮:ジェームズ・W・スコッチドープル

出演者:ブラッド・ピット、アンソニー・ヘイズ、ジョン・マガロ、エモリー・コーエン、アンソニー・マイケル・ホール、トファー・グレイス、ウィル・ポールター、ティルダ・スウィントン、ベン・キングズレー

音楽:ウォーレン・エリス、ニック・ケイヴ

撮影:ダリウス・ウォルスキー

編集:ピーター・シベラス

製作会社:プランBエンターテインメント、ニュー・リージェンシー、ラットパック・エンターテインメント

配給:ネットフリックス

公開:2017年5月26日

上映時間:122分

製作国:アメリカ合衆国

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