アヴェンジメント_見事なアクションと優れた構成【8点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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クライムアクション
クライムアクション

(2019年 イギリス)
ストーリーも演技もアクションもすべてが素晴らしく、90分を切る上映時間なので疾走感もあり、思わぬ拾い物を見たという満足感のある作品でした。ジャンルに興味のない人を振り向かせるほどの色気はありませんが、スコット・アドキンスが好きな人は必ず見るべき快作です。

©Netflix

あらすじ

囚人のケインは病床の母の見舞いで移送された際に逃亡を図った。ケインが向かった先はギャングの溜まり場であるパブで、その場に居たギャング数名をショットガンで脅して立て籠もる。ケインの目的とは一体何なのか。

スタッフ・キャスト

製作・主演は今一番動ける男・スコット・アドキンス

1976年イギリス出身。ブルース・リーとジャン=クロード・ヴァン・ダムに憧れて10歳の頃から柔道道場に通い始め、キックボクシング、クラヴ・マガ、MMA、体操、中国拳法などもマスターしたという本格派です。

ウェズリー・スナイプス主演で熱い支持を受けた『デッドロック』(2002年)シリーズには『2』より参戦し、王者ユーリ・ボイカ役で3作に出演。また憧れのジャン=クロード・ヴァン・ダムとの共演作も多く、ヴァン・ダムの代表作『ユニバーサル・ソルジャー』シリーズの直近作『殺戮の黙示録』(2012年)では主演を任されています。

監督・脚本はスタントマン出身のジェシー・V・ジョンソン

1971年イギリス出身。叔父は「もっとも多作のスタントマン」としてのギネス記録を持つ伝説のスタントマン・ヴィク・アームストロングであり、ジョンソン自身もスタントマン出身です。『トータル・リコール』(1990年)、『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)、『宇宙戦争』(2005年)、『アバター』(2009年)など多くの現場でスタントをしてきました。

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1990年代末より監督・脚本家としても活動しており、本作の主演のスコット・アドキンスとは、『アクシデントマン』(2017年)、『2バッドガイズ』(2018年)、『トリプル・スレット』(2019年)でも組んでいます。

共同脚本は『プリズン・ブレイク』のステュ・スモール

イギリス出身。テレビプロデューサー/ディレクターとして25年以上BBCに勤務した後に独立。現在はイギリスからカナダのバンクーバーに拠点を移して活動しています。キャリア中で特に本作と関係が深そうなのはセカンド・アシスタント・ディレクターを務めた『プリズン・ブレイク』でしょうか。ただし、2005年に大ブームとなったオリジナルシリーズではなく、2017年に復活したシーズン5なのですが。

ジェシー・V・ジョンソン&スコット・アドキンスとは『アクシデントマン』(2017年)、『2バッドガイズ』(2018年)でも組んでいます。

登場人物

ギャング組織

  • ケイン・バージェス(スコット・アドキンス):格闘家で、ギャングを仕切るリンカーンの弟。負けるはずのイカサマ試合に勝って組織の人間に大損をさせたため組織内での信用を失っており、悪事の手伝いをさせられた際に運悪く逮捕。その後、刑務所で命を狙われる生活を7年に渡って送ったことで隙のない人間兵器へと生まれ変わり、母の見舞いの隙を突いて逃亡を図った。
  • リンカーン・バージェス(クレイグ・フェアブラス):ケインの兄でギャングのリーダー格。多重債務者を利用したマネーロンダリングを行っており、大勢の人生を台無しにしてきた。ケインとの関係は悪い。
  • ハイド(ニック・モーラン):組織の幹部で、リンカーンと共にマネーロンダリングに関わっている。逮捕の直接の原因となった仕事をケインに与えた。
  • チューン(トーマス・ターグーズ):麻薬の売人だが臆病な性格で、相棒がケインに襲われた際には一人で逃げた。
  • ストークス(テレンス・メイナード):組織の会計士。

その他

  • ベズ(カーストン・ウェアリング):組織のたまり場であるパブの主。ベリルという本名で呼ばれることを嫌う。
  • オハラ(ルイス・マンディラー):リンカーンによるマネーロンダリング事件の担当刑事。ケインが組織犯罪とは無関係であることを知っており、リンカーンに係る証言をするよう促した。収監後のケインの、母親を見舞いたいという望みを聞き入れた。
  • エヴァンス(ロス・オヘネシー):元暴力警官でギャングへの内通者。逮捕時のケインに暴力を振るった。現在は警察を追い出されてクラブの警備をしている。

感想

観客の興味を引く素晴らしい語り口

単純なバイオレンスアクションかと思いきや、主人公ケイン(スコット・アドキンス)の人となりの紹介もなくいきなり脱走から始まり、パブに籠城して人質との会話をする中で、ケインとは一体何者なのか、何があって脱走したのか、パブに籠城して何をしようとしているのかが語られて行きます。

まさかスコット・アドキンス主演作がガイ・リッチー作品のような見せ方になるとは思わなかったので意表を突かれたし、脚本と演出が思いのほか熟達していてちゃんと面白くなっているのだから感心させられました。

観客に対する情報の与え方が絶妙で、適度な謎を残しながらも不親切にはならないという見事な塩梅となっています。この辺りには、『プリズン・ブレイク』などを手掛けてきた脚本家ステュ・スモールの手腕が発揮されているのかなと思います。冒頭に素晴らしい掴みがあって、そこから最後まで途切れることなく面白い映画って、なかなかありませんよ。

スコット・アドキンスの暴力マシーンぶりを見よ!

スコット・アドキンス扮するケインは、ちょっとヌケたところのある格闘家でした。格闘技のスキルはあるようで試合には勝利するものの、実はイカサマ試合で負けなきゃいけない筋書きだったのに、それを忘れて勝ってしまうほどのアホさ加減。加えて、イカサマ試合を台無しにしたという自覚もなく、悪びれもせず兄リンカーンに金の無心に行く始末。呆れたリンカーンは「お前に金なんて貸せない。代わりに組織の仕事を手伝え」と言います。言う通りにしたケインは、初回の仕事で早速ミスって刑務所へ。

刑務所に入ると早速喧嘩になり、以降は命を狙われる日々が続きます。最初は「俺がイキって大物囚人をボコボコにしてしまったので、その報復を受けてるんだろう」くらいに思っていたのですが、暴力は一向にやむ気配がなく、ある日殴り合いになった相手から「お前の首には懸賞金がかかっている」という情報がもたらされます。

連日の襲撃に耐えるためケインはトレーニングを重ね、また周囲が敵だらけということで感覚や頭脳も研ぎ澄まされていきます。入所前のアホな格闘家からは一転し、殺気に満ちた殺人マシーンへと変貌する様をスコット・アドキンスはなかなかの芸達者ぶりで見せてくれます。

和柄の入れ墨にも負けないぜ!

アクションはキレッキレ。武器に厳しい制限のある刑務所という舞台が活かされた素手と素手の格闘が延々と繰り広げられるのですが、動ける男・アドキンスの格闘は迫力満点でした。加えて、ヴァン・ダムやセガールのようなダンスになりかけの格闘とは違い、荒っぽい男同士の命がけの喧嘩に見えるような生々しさがあった点もナイスでした。この辺りは、スタントマン出身の監督の采配の成果でしょうか。

≪刑務所映画≫
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