ブラッド・ファーザー【8点/10点中_メルギブ版”LOGAN/ローガン”】(ネタバレあり感想)

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(2016年フランス)
元ヤクザのジョンの元に、数年前から行方不明になっていた一人娘のリディアが現れた。彼女はメキシコの麻薬組織とトラブルを起こしており、ジョンはかつて封印した殺人スキルと闇のコネクションを全開にしてこれに対抗する。

8点/10点満点中

ビッグネームが主演しているとはいえ予算は控えめで宣伝もさほどされておらず、そもそもの期待値はさほど高くなかった作品なのですが、これが舐めてた相手が実は殺人マシーンでした映画(©ギンティ小林)としてはとんでもない傑作でした。たまにこんなことが起こるからB級アクションのチェックはやめられません。

Geri-action(老人アクション)というジャンル

社会の底辺で孤独に生きていた元・殺人マシーンの元に血縁者が現れたことで、それまで封印してきた殺人スキルを全開にするという基本的なあらすじは、まんま『LOGAN/ローガン』ですね。この手の作品の基本的な部分はほぼテンプレート化しており、両作品ともにそのテンプレートに忠実に作られています。

アメリカではGeri-action(”geriatric(老人の)”+”action(アクション)”)がアクション映画の一ジャンルとして確立されており、チャールズ・ブロンソン主演の『デス・ウィッシュ』シリーズやリーアム・ニーソン主演の『96時間』シリーズが当該ジャンルの代表的な作品であり、LOGANも本作もその系譜に連なる作品であると言えます。また意外なところではサム・ペキンパー監督の『ワイルド・バンチ』、ショーン・コネリー主演の『ザ・ロック』、シルベスター・スタローン主演の『エクスペンダブルズ』シリーズもこのジャンルに区分されるようです。

以上の通り、アクション映画好きの大好物みたいな錚々たる作品が名を連ねる激戦ジャンルでもあるのですが、そんな中においても本作は上位レベルに君臨する水準に達しています。力押しで攻めてくる若い敵に対して、経験やコネクションといった知略・熟練で対抗する主人公という対比がうまく描けており、このジャンルに求められる基本的な部分が非常にしっかりしているのです。

主人公はタダモノではない描写の充実

主人公・ジョンは最初の襲撃グループの顔を見ただけで、メキシコの組織とアメリカの白人至上主義者が組んで襲って来ているのだからよほど大きな案件に違いないと察知し、また次の襲撃者の顔の入れ墨から、自分達を追っているのはシカリオ(メキシコの犯罪組織の殺し屋)であるということも見極めます。ここではジョンの洞察力の鋭さや闇社会での経験値の高さが描かれると同時に、どれだけ深刻な事態が起こっているのかを娘・リディアと観客にも理解させるという機能も果たしており、キャラ作りや情報の交通整理がよくできた映画だなと感心させられました。

また、ヤバイ敵に追われていることを察知したジョンは過去のコネクションをフル活用して応戦するのですが、モーターサイクルギャングのトップとはオヤジと呼ぶ仲だったり、看守すら従わせているメキシコの大物ヤクザとはマブダチだったりで、彼がとんでもないコネクションの持ち主であることが分かるし、口癖のように「俺はあいつに貸しがある」と言うので、直接的には語られないものの、かつてのジョンは泣く子も黙る筋金入りのヤクザ者であったことが伺えます。ジョンの素性を知らずに襲ってきた若い奴らは相手が悪かったというわけですが、この構図もまた老人アクションに求められる醍醐味の一つであり、こうした基本的な部分がしっかりとしたアクション映画は見ていて気持ちが良いものです。

ただ足を引っ張るだけではない娘のキャラ設定の絶妙さ

お父さんが娘のために頑張る系アクションでは娘の扱いがけっこう難しくて、『96時間』や『24 -TWENTY FOUR-』などを見てもトラブルを呼び込む娘は観客にとってのストレスとなることが多いのですが、本作ではその辺りの処理もうまくできています。

もちろん、ストーリーを進行させるためには仕方のない面もあるのか、父親を頼って来たにも関わらず「問題解決してやるから知ってることを全部教えろ」と迫られるとウソや隠し事をして事態を余計に悪化させたり、「今それを言うか?」みたいなタイミングで父親の過去を批判したりといった、観客から嫌われるタイプの娘像と共通の言動もとるにはとるのですが、その一方で彼女は彼女なりの強みもちゃんと発揮するので、後半ではジョンとリディアは良いパートナーとなっていきます。

白人至上主義者との付き合いが深かったという経歴もあってジョンはメキシコからの移民に対して「白人の職を奪う厄介者」という旨の差別的な発言をするのですが、これに対してリディアは「白人の貧困層が果樹園で働くの?白人労働者と移民は競合していないと思うけど」というド正論を言って黙らせたり、いかにもヤクザな風貌で人を寄せ付けないジョンとは対照的にリディアは人の中に入っていく能力が高いため、必要な情報も難なく聞き出してきたりと、彼女もちゃんと役に立っているのです。

メルギブネタ全開

酒が原因で家族や多くの友人を失ったというセラピーでのジョンの告白はまんまメルギブのキャリア転落劇を反映したものだったし、マーティン・リッグスのようなトレーラーハウスに暮らし、そのトレーラーハウスが悪者の襲撃に遭うというくだりは『リーサル・ウェポン』のセルフパロディのようでした。また、二連発のソードオフショットガンを持つ姿は年老いたマックス・ロカタンスキーだったし、バイクチェイスの末に敵方のバイクがトレーラーに正面衝突するというまんま『マッドマックス』のようなアクションもありました。

B級アクション映画でまさかこれだけ豪勢にファンサービスをしてくれるとは思っていなかったので、メルギブが大好きだった私はとても幸せな気分になれました。

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Blood Father
監督:ジャン=フランソワ・リシェ
脚本:ピーター・クレイグ、アンドレア・バーロフ
原作:ピーター・クレイグ
製作:クリス・ブリッグス、ピーター・クレイグ、パスカル・コシュトゥー、セバスチャン・K・ルメルシエ
製作総指揮:ジェニファー・ロス
出演者:メル・ギブソン、エリン・モリアーティ、ディエゴ・ルナ、マイケル・パークス、ウィリアム・H・メイシー
音楽:スヴェン・フォルコナー
撮影:ロバート・ギャンツ
編集:スティーヴン・ローゼンブラム
製作会社:ホワイ・ノット・プロダクションズ、ワイルド・バンチ
配給:SND Films(仏)、ライオンズゲート(米)、ポニーキャニオン(日)
公開:2016年8月31日(仏)、2016年8月26日(米)、2017年6月3日(日)
上映時間:88分
製作国:フランス

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