デンジャラス・プリズン_笑えるほど突き抜けたバイオレンス【8点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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クライムアクション

(2017年 アメリカ)
『トマホーク ガンマンvs食人族』(2015年)で見事な手腕を見せたS・クレイグ・ザラー監督の2作目。現実的な物語が中盤以降に非現実の世界に突入していくという構成や、度を越したグロ描写の連続という『トマホーク』の特徴を継承しつつも、そこに笑いの要素を加えてより幅の広いエンターテイメントに仕上げており、その演出は確実に進化しています。主人公を演じるヴィンス・ヴォーンの暴力マシーンぶりも良く、実に満足できるバイオレンス映画でした。

あらすじ

元麻薬の運び屋のブラッドリー(ヴィンス・ヴォーン)は、勤めている自動車整備工場をクビにされたことから運び屋稼業に舞い戻る。運び屋業の稼ぎで豪邸に転居し、妻ローレン(ジェニファー・カーペンター)は妊娠と順調な日々を送るブラッドリーだったが、ある日好待遇と引き換えにリスキーな仕事の依頼を受ける。

案の定仕事は失敗して刑務所に収監されるブラッドリーだが、面会に来た謎の男(ウド・キアー)から、刑務所内での暗殺業務を引き受けなければローレンの胎内にいる赤ん坊の手足を切断すると脅迫される。

スタッフ・キャスト

監督・脚本・音楽は『トマホーク ガンマンvs食人族』のS・クレイグ・ザラー

1973年マイアミ出身。元は音楽家であり、ブラックメタルバンドで作詞とドラムを担当していました。その後、映画脚本を書くようになってブラックリスト入りするほどの評価を獲得。『トマホーク ガンマンvs食人族』(2015年)で監督デビューし、こちらも高評価。

本作は監督2作目であり、日本未上陸ながら3作目もすでに完成しています。メル・ギブソンとヴィンス・ヴォーンが共演した”Dragged Across Concrete”(2018年)であり、こちらは汚職警官ものとのこと。絶対面白いに決まっているので日本でも公開して!

主演はコメディ俳優ヴィンス・ヴォーン

1970年ミネソタ州出身、イリノイ州育ち。ダグ・リーマン監督の『スウィンガーズ』(1996年)で注目を浴び、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)に主要登場人物の一人として出演。

2000年以降は『ズーランダー』(2001年)、『ドッジボール』(2004年)、『ウェディング・クラッシャーズ』(2005年)とコメディ映画に多く出演するようになりました。

ただし身長196cmの巨体はなかなかの威圧感であり、テレビドラマ『TRUE DETECTIVE/ロサンゼルス』(2015年)では街の犯罪組織のボス役で殺伐とした演技を披露しました。

感想

ヴィンス・ヴォーンの暴力マシーンぶりが良い

ヴィンス・ヴォーンが演じるのは足を洗った元運び屋ブラッドリー。

今は真面目にカタギの仕事をしているのですが、ある朝、勤める自動車整備工場からはクビを言い渡されます。特に抵抗せず解雇を受け入れるブラッドリーですが、いつもと違う時間に帰宅すると、首にキスマークを付けた妻ローレン(ジェニファー・カーペンター)がそこに居ました。そして問い詰められたローレンは浮気を自白します。

怒ったブラッドリーは妻の車に怒りをぶつけ始めるのですが、窓ガラスを割ったりバックミラーを破壊したりが段々とエスカレートしてきて、ボンネットをもぎ取ったり、ヘッドライトを破壊したりと豪快な破壊を始めます。しかも素手で。

この場面でブラッドリーが異常な腕力を持っていることが分かると同時に、さすがに妻に暴力は振るえないからと車に向かって当たり散らし、落ち着いたところで妻の前に戻るという一定の節度も持ち合わせていることが分かります。

節度のない暴力マシーンも怖いのですが、節度を持った暴力マシーンも、これはこれで特有の怖さがあります。もしこいつがブチ切れて見境がなくなったら、どれだけ怖いことになるんだろうかと想像する余地があるからです。

で、本編ではブラッドリーが徐々に節度のない暴力を振るい始めるのですが、巨体プラス怪力の上に、元ボクサーなので素手ゴロにも滅法強く、重機の如き圧倒的な強さで周囲をなぎ倒していく様には爽快感すら宿っています。

演じるヴィンス・ヴォーンはコメディ俳優であり、これまで映画においてバイオレントな役柄を演じたことはあまりなかったのですが、本作では196cmの巨体を生かした暴力マシーンぶりをいかんなく披露します。最高でした。

現実と非現実の境界を乗り越えるザラー節炸裂

S・クレイグ・ザラー監督の前作『トマホーク ガンマンvs食人族』(2015年)は、そのイロモノ的な邦題とは裏腹に、しっかりとした西部劇として始まる映画でした。

何者かに奪われた女医を取り戻そうと荒野を行く街の男達。それは西部劇の標準フォーマットであり、カート・ラッセルやパトリック・ウィルソンといった演技のできる俳優達を配役しているので安定感も抜群で、西部劇のクラシックのような雰囲気を漂わせています。

しかし突如後半で登場する食人族たちという豪快な崩し方と、前半部分では考えもしなかった容赦のないグロ描写の連続に観客は度肝を抜かれるのでした。

そして現実的な形でスタートした物語が、途中から非現実の領域に突入していくという『トマホーク』の構成は、本作でも踏襲されています。

引退したはずの元凄腕の犯罪者が、厳しい経済事情の中で裏稼業に舞い戻るという物語はクライムサスペンスの王道だし、殴り合いや銃撃戦にも過剰な部分はなく、リアリティへの目配せが随所に見て取れます。

しかし中盤で姿を現わす凶悪犯専用のレッドリーフ刑務所は中世ヨーロッパの牢獄のような石造りで、看守たちはファシストのような黒づくめの制服を着ており、手にはサブマシンガンという重武装。現実とは一線を画す世界がそこには広がっています。

レッドリーフに舞台が移って以降はバイオレンスの洪水となり、前半からは一転して骨をへし折り、頭蓋骨を砕くというリアリティ度外視のグロ描写が連続します。

しかし『トマホーク』と違うのは、『トマホーク』のグロ描写がかなり写実的で気持ち悪かったのに対して、本作は一目で作り物と分かるようなチャチな描写にしているので、そこまで気持ち悪くないということです。

床を引きずられた顔面から頭蓋骨がはみ出ているという描写なんて、あまりにチープで笑いそうになりました。本作はサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』(1980年)や、ピーター・ジャクソン監督の『ブレインデッド』(1992年)のように、グロの先にある笑いを追求しているようです。

そして、その目論見はほぼ成功しているように感じました。ちゃんとハラハラさせられるし、ちゃんと笑える。グロと笑いが高度に融合しているのです。

その象徴的な存在がドン・ジョンソン扮するウォーデン所長で、言うこともやることもいちいち過剰。しかしどこか筋の通った部分もあり、妻子のために反撃するブラッドリーを腹の中では応援している様子もあって、実に漫画的な面白いキャラになっています。

他にも、主人公の妻を演じるジェニファー・カーペンターや主人公に殺しのメッセージを伝えるウド・キアーなど、普通の顔面ではない俳優達が醸し出す独特の雰囲気は、薄気味悪くもユーモラスでもあります。

タランティーノ作品のようなズレた会話

また妙にズレた会話も笑いを誘います。

冒頭、失業したブラッドリーと浮気が発覚した妻ローレンが今後の身の振りについて話し合う場面で、ブラッドリーは自分の人生をコーヒーのクリームに例えて説明します。

いわく、ブラッドリーは毎朝コーヒーを買い、コーヒー売り場には3種類のクリームが置かれているのだが、自分はいつも使いたくないクリームの容器ばかりを手にしてしまう。確率的には三回に一回は欲しいやつを手に取れてないとおかしいのに、自分はハズレばかりだと。

ブラッドリーはまぁまぁの時間をかけてこの話をするわけです。で、ローレンと観客は黙って最後まで聞いてみるのですが、結局何が言いたかったのかはよく分からないという。

本作は、たっぷりの間を取ってよく分からない話をするということが何度もあり、これらがタランティーノ作品からの影響であることは明確なのですが、観客に何となく話を聞かせてしまう流れの作り方や、聞いた後の丁度良い脱力感は、数多く製作されたタランティーノフォロワーの中でも出来の良い部類に入ると思います。

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