ベイルート【4点/10点満点中_非凡な脚本を平凡な演出が台無しにした駄作】

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[2018年Netflixオリジナル作品]

4点/10点満点

■日本ではNetflix限定公開

アメリカでは2018年4月に劇場公開されたものの、日本では6月にNetflixにて公開された作品。『ヒットマンズ・ボディガード』や『アナイアレイション』など、最近このパターンでのリリース作品が増えていますね。

■硬派な社会派娯楽作

硬派な娯楽作を得意とするトニー・ギルロイらしく中東という地の厄介な情勢を織り込みつつテンポよく展開するサスペンス作品となっており、よく考えられた話だなぁと感心させられました。ただし脚本レベルでは、ですが。

■面白い話を面白く見せられていない演出

本作の難は演出にあって、本来は魅力的な物語であるにも関わらず演出にメリハリがなく、二転三転する物語でありながら観客をうまく騙そうとする工夫もなければ、どこで感情的な山場を作るのかという全体的なレイアウトもできておらず、脚本通りにただ撮っているだけという状態となっています。例えば、

  • カリム:カルを解放して欲しければ兄のラフィードを返せ
  • CIA:捕らわれたカルが機密情報を喋ってしまうことが最大の不安
  • モサド:一連のテロ事件の実行犯であるラフィードを決して許さない

この図式の下、主人公とモサドとの交渉が前半の山場であるべきで、モサドという一筋縄ではいかない組織を相手にして主人公はどのような交渉をするのかという煽りなどが必要だったと思うのですが、この交渉が実にアッサリと流されてしまうわけです。

また、後半になると図式は下記のように変化し、単純な敵味方の関係ではなく同一組織内でも利害の反するグループが争っていたり、組織同士は敵対関係にありながらもある一点で行動原理が一致している者が現れたりと、状況はより混迷を極めます。

  • CIA:カルに着服の証拠を押さえられており、カルには殉職してもらいたい。また、かねてよりパレスチナ勢力を追い出す軍事作戦を実行に移すための口実が欲しいと考えている。
  • PLO:和平派は、イスラエルに侵攻の口実を与えかねないラフィードのような組織内の過激派グループを排除したいと考えている。

ラフィードもカルも母体とする組織からは疎まれているために誰もこの誘拐事件の解決を望んでおらず、すべてはメイソンの孤軍奮闘次第という状況になるのですが、この辺りの緊張感もうまく醸成できていません。また、メイソンが手詰まりになりかけたところで思いもよらぬ援軍が現れるなど娯楽的なツボを押さえた展開も準備されてはいるものの、こちらも演出の悪さによって意図されたほどの盛り上がりには繋がっていません。

■オチも決まらず

さらに、最終的にはラフィードの死という共通目的を持つモサドとPLO幹部が組んで行動するという驚天動地の展開を迎えるものの、見せ方がうまくないために見ている側は「さっきラフィードを狙撃した人って誰だっけ?」という状態となり、せっかくの大オチに気付きづらいという大問題も発生しています。う~ん、もっと何とかならなかったんですかね。

■監督はテレビ界を中心に活躍するブラッド・アンダーソン

本作を監督したのはブラッド・アンダーソン。劇場公開作では『マシニスト』くらいしかめぼしい作品がなく、テレビドラマをメインの活動の場としている人であり、テレビドラマの監督としては『THE WIRE』『フリンジ』『アルカトラズ』など多くの話題作から声がかかる腕利きなのですが、ショーランナーの指示通りに作品を完成させるというテレビドラマの監督らしい従順さが本作では仇になったのかなと思います。

Beirut
監督:ブラッド・アンダーソン
脚本:トニー・ギルロイ
製作:トニー・ギルロイ,テッド・フィールド,マイク・ウェバー,シヴァニ・ラワット,モニカ・レヴィンソン
出演者:ジョン・ハム,ロザムンド・パイク,ディーン・ノリス,ラリー・パイン,シェー・ウィガム
音楽:ジョン・デブニー
撮影:ビョーン・シャルパンティエ
編集:アンドリュー・ハフィッツ
製作会社:レーダー・ピクチャーズ,シヴハンス・ピクチャーズ
配給:ブリーカー・ストリート(アメリカ)
公開:2018年4月11日(アメリカ),劇場未公開(日本)
上映時間:109分
製作国:アメリカ合衆国

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