ババドック~暗闇の魔物~【9点/10点満点中_子育ての難しさ】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2014オーストラリア)
子育てに悩むシングルマザーのアメリアは、ある日ババドックという不気味な絵本を読んでくれと子供からせがまれたが、その日以来、不可解な現象が起こるようになる

9点/10点満点中 子育て中の方必見のドメスティック・ホラー

ウィリアム・フリードキン絶賛

ウィリアム・フリードキンが絶賛したということなのですが、確かに本作は『エクソシスト』『ローズマリーの赤ちゃん』『シャイニング』の流れを汲む家庭内ホラーであり、見ている者の心までを抉るような人間ドラマと、不気味な兆候を重ねた後にドーンとショック描写を炸裂させる恐怖演出はこれらの名作に比肩するレベルに達しており、短めの上映時間ながら大変に見応えのある作品でした。

子を持つ親なら誰もが抱える不安が恐怖の源泉

育児をしていると、自分は子供を殺してしまうのではないかと不安になる瞬間があります。子供が天使なんて言葉はウソで、空気読まない、言うこと聞かない、思い通りにならなければ泣き叫ぶと、大人は忍耐の限界までが試されます。もし不安定な心理状態の時にこれをやられると、本気でぶん殴って永遠に黙らせてしまうんじゃないかと不安になってしまうのです。

本作は育児ノイローゼに苦しむシングルマザーの物語なのですが、ADHDと思われる子供がとにかく憎たらしくて、お母さんがどれだけ愛情を持って接してもその制御を受け付けず、親が困るタイミングで奇声をあげ、挙句には主人公に好意を寄せてくれる同僚を癇癪でドン引きさせて再婚の芽も断つなど、その姿は不快度数MAXでした。

シングルマザーの孤立

また、シングルマザーの孤立という社会問題も織り込まれています。妹家族との交流こそ続いているものの、疲れ切った母親と問題行動ばかりで可愛げゼロの子供のコンビには常にどんよりと重い空気が漂っており、いくら肉親でも積極的に関わろうという気にはなれず、一定の距離を置いた関係となっています。

また、息子の問題行動が原因で学校からも目を付けられており、はっきり言ってくる者こそいないものの「片親だし、ちゃんと躾ができてないんじゃないの?」という無言の圧力を受けて、お母さんはより孤立を深めます。この子の状態については躾で解決できるレベルを超えているのですが、世の中はそう見てくれないのです。

主演はミス・フィッシャー

主演はテレビドラマ『ミス・フィッシャーの殺人ミステリー』のエッシー・デイヴィス。何にでも首を突っ込むゴージャスな美魔女ミス・フィッシャーからは一転して、人生に疲れ切り重度の育児ノイローゼを患う母親役をほぼノーメイクで演じており、ミス・フィッシャーの印象を持つ私としてはその落差がかなりの衝撃でした。

なお、本作の主人公には旦那さんの事故死により転落したという背景があるのですが、その遺品に楽器や楽譜が多くあることから旦那さんは音楽関係者だったと推測されることや、劇中明言される主人公の前職がライターだったことから、この主人公もかつてはミス・フィッシャーのようにゴージャスで輝いていた人だったのかなという想像も膨らみ、それによりこの物語をより恐ろしく感じられました。こういうのを配役の妙と言うんでしょうね。なお、監督とエッシィ・デイビスは学生時代のルームメイトだったとのことです

ババドックとは一体何なのか

ババドックの正体についてははっきりとした説明はなく、超常現象とも母親の脳内のみの存在とも受け取れる描写になっているのですが、テーマから考えれば、子供を虐待してしまう母親をババドックと言っているのでしょう。そしてババドックは存在を否定するほど強くなるという設定については、自分は良い親であると信じ、良い親として振る舞わねばならないと強迫的に思っている人ほど、感情が振り切れた時にはシャレにならない虐待をしてしまうということを暗示しているのでしょうか。

ババドックは追い出せない

ラストでは完全にババドックを追い出すのではなく、地下室で飼いならすという終わり方をしますが、これについては完全に良い親になることなんて不可能で、自分の弱い面・乱暴な面を受け入れた上で、これをうまくコントロールしましょうという監督からのメッセージと受け取りました。ホラー映画なのに、育児論としても大変タメになりますね。

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