ベン・ハー(2016年)【7点/10点満点_1959年版の不備が修正された見応えある再映画化版】

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[2016年アメリカ]

7点/10点満点中

あまりに偉大な1959年版の威光に負けて興行的にも批評的にも大敗を喫した再映画化企画ですが、これがなかなか面白くてとても得した気分になりました。つくづく、映画とは自分の目で見るまで分からないものです。

■1959年版にあったテーマと物語の不整合が改善された

まず素晴らしいと感じたのが、1959年版に私が抱いた違和感が本作でほぼ解消されていた点です。1959年版でもっとも問題だと感じたのは、寛容をテーマとする宗教映画でありながらメッサラを純粋悪とする勧善懲悪の物語になっていたという歪な構成ですが、本作ではメッサラ側の事情がきちんと描かれているのです。

メッサラは支配者側にいるものの、彼なりの善意を持った行動で被支配者側とうまく折り合おうとしていたし、悲しい事件が起こった後にも少ない選択肢の中で最善の結果を導き出そうと彼なりに努力していました。1959年版ではほぼ切り捨てられていたメッサラ側の背景が明確に描かれたことで作品のドラマ性はぐっと向上したし、彼に対するベン・ハーの復讐心が観客にとっても虚しいものとして映る構造となったため、主題も立っています。

■その他の部分でも物語の微調整ができている

また、瓦が落ちたというしょうもない発端部分も改められ、ベン・ハーが善意で匿っていた少年が悲劇の糸口になったという業にまみれた物語に変更された点もよく考えられています。この少年にも過激な行動に走らざるをえない背景があり、悪者がいなくても悲劇は起こってしまうというこの世の難しさが端的に描かれているのです。アメリカ的なマッチョイズムに席巻されていた1959年版とは正反対の切り口には唸らされました。

また、ベン・ハー側のドラマもうまく流れています。1959年版ではベン・ハーを絶対正義の人として描いていた点が鼻についたのですが、本作ではユダヤの現状を嘆きながらも、自身が持っている権力と財力を民のために行使してこなかったベン・ハーの日和見的な姿勢への批判があり、こちらも生身の人物としての描写に改められたことで、かえって好感が増しました。また1959年版で私が違和感を持ったのは、ローマの大将軍の養子になりその恩恵を受けながら、事態が改善された途端に義理の父親を捨てて実母の元に帰ったベン・ハーの不義理な行動ですが、本作では養子のくだりはまるまるカットされ、サバイバルの果てに故郷へ戻るという話に変更されたために、彼の行動に筋が通りました。

さすがに変えようがなかったのか、奇跡による大団円というガッカリな結末は本作でもそのままでしたが、それでも脚本家と監督は21世紀仕様にアップデートされたベン・ハーを製作しようとし、その企画意図がかなり実現されていたという点には感心させられました。

■圧巻のビジュアル

ティムール・べクマンベトフ監督作品だけあってビジュアルの迫力も素晴らしく、作品のハイライトである戦車戦の迫力は1959年版を凌駕しています。また、1959年版ではミニチュア丸出しでガッカリさせられた海戦場面は大幅にブラッシュアップされており、戦車戦に匹敵する中盤の見せ場として機能しています。こちらでも満足させられました。

Ben-Hur
監督:ティムール・ベクマンベトフ
脚本:キース・クラーク、ジョン・リドリー
原作:ルー・ウォーレス『ベン・ハー』
製作:ショーン・ダニエル、ダンカン・ヘンダーソン、ジョニ・レヴィン
製作総指揮:マーク・バーネット、ジェイソン・F・ブラウン、キース・クラーク、ローマ・ダウニー、ジョン・リドリー
出演者:ジャック・ヒューストン、トビー・ケベル、ロドリゴ・サントロ、ナザニン・ボニアディ、アイェレット・ゾラー、ピルー・アスベック、ソフィア・ブラック=デリア、モーガン・フリーマン
音楽:マルコ・ベルトラミ
撮影:オリヴァー・ウッド
編集:ドディ・ドーン、リチャード・フランシス=ブルース、ボブ・ムラウスキー
製作会社:バゼレフス、ライトワーカーズ・メディア、ショーン・ダニエル・プロダクションズ
配給:パラマウント映画、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
公開:2016年8月19日(米)、劇場未公開(日)
上映時間:141分
製作国:アメリカ合衆国

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