ロリータ(1962年版)_表現の制約に阻まれた凡作【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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人間ドラマ
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(1962年 イギリス)
文学者のハンバートは、アメリカの大学で教鞭をとるためにパリからアメリカにやってきた。新学期までのひと夏を保養地で過ごすことに決めたハンバートは下宿先を探しており、その候補のひとつだった未亡人のシャーロット・ヘイズの邸宅を訪れた際に、庭で寝転ぶ美少女に目を奪われた。

©MGM

原作未読。エイドリアン・ライン版と併せて鑑賞しました。

表現の制約に阻まれて不完全なドラマになっている

エイドリアン・ライン版はハンバートとロリータの間にあった性的搾取の関係が明示されたことから主題が明確になったのですが、キューブリック版は表現の制約に阻まれたこともあって二人の関係性の描写をほとんど諦めており、制御の利かない小悪魔に魅了されてしまった地位も名誉もある中年男が我を忘れて破滅していく様を描いただけの作品になっています。

コメディとしては成立している

扱いに困る題材を得た時にブラックコメディという体裁をとることは映画界で広く見られますが、本作もまさにその方法論で制作されています。

シャルロッテが交通事故死した後、ハンバートがシャルロッテ殺害に使おうと思っていた拳銃を見た友人が「大変だ!奥さんを亡くして自暴自棄になったハンバートが自殺しようとしている!」と勘違いして、ハンバートの都合の良いようにどんどん拡大解釈してくれる様などはかなり笑えたし、あることないこと喋りまくるピーター・セラーズの怪演も光っています。つまりコメディとしては成功しており、さすがはキューブリックだけあってやろうとしていることの実現はできています。

ロリータはちゃんと美しい

また、女優を美しく撮ることに長けたキューブリックはロリータ役のスー・リオンを極めて美しく捉えており、作品の軸はしっかりしていると思います。原作のロリータと比較してスー・リオンは歳を行き過ぎているという批判もありますが、私は15歳のスー・リオンくらいでちょうどよく、彼女より若いとさすがに映像化には耐えないような気がします。

薄い内容に対して長すぎる上映時間

ただし、深いテーマが込められていたエイドリアン・ライン版を見てしまうと、本作は冗長な割に何を言いたいのか分からない作品になっており、相対的に評価は低めにせざるをえません。

≪スタンリー・キューブリック監督作品≫
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