ラパ・ニュイ~モアイの謎~_風変わりだが面白い【8点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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古代
古代

(1994年 アメリカ)
イースター島の時代劇という珍しい題材であり、実際、内容はかなり変わっているのですが、王道の悲恋ものと階級闘争を絡めた内容は力強く、思いのほか楽しめました。DVDも出ておらず鑑賞手段の限られた映画ではありますが、見る価値は十分にあります。

作品解説

『ウォーターワールド』のケビン・レイノルズ監督

本作の監督はケビン・レイノルズで、製作はケビン・コスナー。

二人は青春映画の傑作『ファンダンゴ』(1984年)で組んで以来、『ロビンフッド』(1991年)、『ウォーターワールド』(1995年)でもコンビで仕事をしています。

またケビン・コスナーの監督デビュー作『ダンス・ウィズ・ウルブス』(1990年)において、レイノルズはバッファロー狩りの場面の演出の手伝いをしたことから、スペシャルサンクスとしてクレジットされています。

そんなわけで仲の良かったコンビなのですが、『ウォーターワールド』製作時のトラブルで決別(クレジット上の監督はレイノルズだが、仕上げたのはコスナー)。

しかし2012年のヒストリーチャンネルのミニシリーズ『ハットフィールド&マッコイ』で再度コンビを組み、高い評価を受けました。

興行的には大惨敗した

本作はイースター島でロケをし2000万ドルをかけた大作だったのですが、興行成績はなんと30万ドルに留まりました。

赤字映画は数あれど、製作費と興行成績の桁が2つも違うという例はほとんど見たことがなく、歴史的な大惨敗を喫したと言えます。

感想

つまらないかと思ったら意外と面白かった

1995年のビデオリリース時から何となく本作の名前は知っていたのですが、イースター島の時代劇という風変わりな題材には心惹かれるものがなく、「なんとなくつまらなそう」と思ってスルーしてきました。

その後、本作はDVD化もされることなく鑑賞機会自体を失っていたのですが、ちょっと前にLDプレーヤーを購入したのでヤフオクで中古LDソフトを物色していた際に本作を発見しました。

お値段たったの380円。未開封品。しかもお目当てだった他のソフトと同梱すれば送料はかからないとのことだったので、ついでに購入してしまいました。

作品名を知ってから四半世紀以上経過してからの初鑑賞となりましたが、これがなかなか面白くて驚きました。もっと早く見ておけばよかったと思うし、撮影なども素晴らしいのでBlu-rayなど高画質メディアでもリリースされれば買うと思います。

不人気作なのでその可能性は限りなく低そうですが。

「モアイの謎」とは

舞台はポルトガル人がやってくる前のイースター島。

最も近い有人島まで2,000kmという絶海の孤島であるため、彼らは自分達が人類最後の生き残りだと思っていました。そして、いつかご先祖が白いカヌーで我々を迎えにやってくるという信仰を持っており、ご先祖を導くために巨大な石像を作っているのでした。

で、待てど暮らせどご先祖が来ないものだから、「もっと大きいものを」と言ってより大きなモアイを作るようになったというわけです。

これが「モアイの謎」というタイトルに対するアンサーなのですが、意外と序盤で説明されてその後に深い補足などもないので、歴史ミステリーとしての要素はかなり薄めです。

「世界ふしぎ発見!」的な内容は期待されないように。

物語はベタな「ロミオとジュリエット」もの

では本編の内容は何なのというと、支配階級の青年と被支配階級の恋人との悲恋です。

映画が始まると裸族が画面を席捲。男性は尻丸出しで、女性はおっぱい丸出し。最後まで画面に映っているのはこの裸族だけです。メル・ギブソン監督の『アポカリプト』(2007年)を先取りする徹底再現ぶりでしたね。

そんな裸族の王に君臨しているのがアリキという長老で、主人公ノロ(ジェイソン・スコット・リー)はその孫。

で、ノロには恋人がいるのですが、彼女はみちょぱのようなきれいな顔立ちで裸族の中でも異常に目立っています。名前はラマナ(サンドリーヌ・ホルト)と言い、被支配階級の出身です。当然、彼女もおっぱい丸出し。裸族だもの。

ノロとラマナ。ポリネシアのみちょぱ

気になったので調べてみると、ラマナを演じたサンドリーヌ・ホルトという方は中国人とフランス人のハーフで、現在でも女優として活躍しておられ、『バイオハザード2』(2004年)『ターミネーター:ジェニシス』(2015年)、テレビドラマ『フィアー・ザ・ウォーキングデッド』どに出演しています。

『フィアー・ザ・ウォーキングデッド』のサンドリーヌ・ホルト。20年以上経過しても美貌は健在。

話を映画に戻すと、ノロはラマナとの結婚を望むものの、身分違いの結婚は神が定める法に背く罰当たりな行為だとしてアリキに大反対されます。

「どうしてもと言うのなら」と言って出された条件が、ラマナは「白い処女の洞窟」という場所に6か月籠って身を清めること、ノロは「鳥人レース」で勝利することでした。

「鳥人」と言われると笑い飯の漫才かと思いますが、これが島のトップを決めるための重要な神事であり、アリキはこのイベントに勝ち続けることで20年間も王位を保持してきました。

このレースには支配者候補本人が出場する必要はなく、代理を出してもいいという妙にユルイ決まりがあって、アリキは毎年親戚を出場させているのですが、今年はノロが出て優勝してこいというわけです。

ノロとラマナが試練に耐えることが本編の主たる内容となっており、これは典型的な『ロミオとジュリエット』ものではあるのですが、王道ならではの強みでなかなか興味深く見ることができました。

爺さんたちが言う勝手な掟で仲を引き裂かされそうになる様は可哀そうだったし、それでも力を合わせて乗り切ろうとする様は健気で応援したくなったし。

革命戦士マケ

そして、中盤になるともう一つの軸が提示されます。

先ほども述べた通り、モアイはご先祖を導くための石像であり、支配階層からの命令で被支配階層がこれを作らされています。で、アリキの命令でかつてないほど大きなものを作れと言われており不満は爆発寸前。

そんな中で被支配階層のリーダーとなるのがマケ(イーサイ・モラレス)という青年です。

炎の革命家マケ(イーサイ・モラレス)

彼はノロとラマナの幼馴染であり、ラマナに恋しているのですが、ラマナはお坊ちゃんのノロに夢中。そしてノロはマケの気持ちになど気づかず普通に友達面してくるのですが、マケからしたらそれはそれでムカつくわけです。

そんな個人的なノロへの対抗心と、島全体を覆う階級闘争的な空気の中で、彼は鳥人レースへの参加を表明します。

とはいえ被支配階層が鳥人レースに参加すること自体がこれまでなかったため、アリキはまたしても「神の法に背くとは何と罰当たりな!」と言って大反対。

しかし革命寸前の空気を察知したノロが「ここは代表者をレースに参加させる権利くらいは与えとかないと、被支配階層が暴れ出しますよ」と言ってアリキを説得し、マケの出場を認めさせます。

ただしアリキが出した交換条件とは、もし鳥人レースに勝てなければ、今回の非礼の責任をとってマケは死刑という結構なものでした。孫の幼馴染でも処刑というアリキの冷酷さが光ります。

負ければ死という切羽詰まった条件、しかも一日中特訓をしていられる王族のノロとは違い、昼間はモアイ像作りの労働をしなければならないためにマケが練習できるのは夜のみ。いつ寝てるんだという状態でマケはレースまでの準備を進めます。

条件の過酷さと言い、背負ってるものの重さといい、マケの物語はノロを超えています。中盤以降の主人公は実質的にマケとなり、彼が中心人物となることで映画はより熱くなっていきます。こうして複線化された物語もよく計算されています。

ちなみにマケ役のイーサイ・モラレスは最近でも活躍されており、テレビシリーズ『TITANZ/タイタンズ』(2018年)にデスストローク役で出演。また『ミッション:インポッシブル7』(2022年)、『同8』(2023年)にも出演します。

『TITNAS/タイタンズ』でデスストロークを演じるイーサイ・モラレス。シブイ。

燃える階級闘争

話を映画に戻します。

階級闘争が本作のもう一つのテーマとなるのですが、これもまた興味深い内容でした。

あらすじを書いてみると長老アリキが滅茶苦茶悪人であるように感じられるのですが、実のところアリキは好々爺といった風情です。人柄は良く権謀術数を巡らせるタイプではないですが、その性格が裏目に出て空気を読めないところはあります。

爆発寸前の被支配階層に乗り込まれる場面。相手のあまりの剣幕に驚いたアリキは「みんなも喜んでモアイを作ってるのかと思ってた」と素っ頓狂なことを言い出します。

他人を騙したり謀り事をしたりしない性格なので、人の考えや社会の空気も読めないのです。

マケを鳥人レースに出すという条件を飲むことでその場の混乱こそ収まったものの、俺たちにあーだーこーだと指示を出していたのはこんな阿呆だったのかということに気づいた被支配階層は、余計に下剋上の必要性を確信します。

ここから革命的な空気が加速するのですが、すでに時代に合わなくなった旧体制を庶民が打ち破ろうとする様には、やはり燃えるものがありますね。

で、その緊張感がピークに達した際に待っている凄まじいスペクタクルとバイオレンスはアクション映画としてのハイライトにもなっています

ド迫力のレース場面

ついに鳥人レース当日となり、ノロとマケを含む5名が出走するのですが、これが超ド迫力で手に汗握ります。

注目は赤いペイントをした男であり(名前は覚えてない)、ライバルを崖から突き落として殺したり、主人公に暴力を振るったりと容赦がありません。神事なのにそんな戦い方でいいのかと心配になったほどです。

この圧倒的なヒールの存在によってレースが盛り上がった上に、撮影も絶好調で急こう配を駆け降りる場面などは見ているこちらにまで恐怖が伝わってきました。さながらポリネシアの『ベン・ハー』(1959年)といったところでした。

さすがはケビン・レイノルズ、戦車映画の佳作『レッド・アフガン』(1988年)を撮っただけのことはあります。面白かったなぁ。

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