ブラックパンサー(2018年)【5点/10点満点中_中途半端な答えしか出していない】(ネタバレあり・感想)

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マーベルコミック
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5点/10点満点中

アメリカで社会現象を巻き起こした超ヒット作

驚異的な興行成績

本作は世界的な大ヒット作となっていますが、とりわけ本国アメリカでの支持は驚異の水準に達しています。興行収入はアメリカ一国だけで7億ドルを突破しており、これは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『アバター』に次ぐ歴代3位の数字であり、マーベルの大本命だった『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の売上をも凌いでいます。当初のマーベルの戦略では2018年2月公開の『ブラックパンサー』でアベンジャーズへの期待値を高め、2018年4月公開の『インフィニティ・ウォー』でブームをピークに持っていくという設計だったところ、前座の『ブラックパンサー』の方が大きく稼ぐという嬉しい誤算となっています。

映画芸術アカデミーをも動かした

さらには、2018年8月には映画芸術アカデミーの理事会が「優れた業績を収めた人気作品賞(Outstanding Achievement Popular Film)」の新設を検討中との報道がありましたが(一か月後には棚上げが発表されました)、この急な部門新設は『ブラックパンサー』に何らかの賞を与えたいがためではないかとの憶測がなされていました。

なお、私は人気作品賞の新設には反対です。映画賞は質という軸でのみ評価すべきであり、興行的な貢献という数字で見れば一目瞭然の指標に改めて賞を与えることには意味がないからです。また、クリストファー・ノーランやジェームズ・キャメロンのような観客と批評家の両方からの支持を得られるタイプの監督が、作品賞と人気作賞の隙間に挟まってどちらの部門にも引っかからなくなるという問題も考えられます。

3Dは絶好調で映画館で観る価値あり

私はIMAX-3Dにて鑑賞しました。いま、世界で一番3Dの使い方を心得ているのはマーベル・スタジオだと思っているのですが、例に漏れず本作も高低差のある舞台や浮遊物など3D効果を得やすい対象物を多く扱っており、3Dをアトラクション的に使うということがきちんとできていました。一時期のブームの過ぎ去った昨今では3Dにこだわる作品は少なくなりましたが、本作はそうしたサービス精神が行き渡っているという点で好印象でした。

力の行使に係る興味深い問いかけ

さて本編ですが、ブラックパンサーが初登場した『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』に引き続き、パワーを持つ者がいかにしてその行使をなすべきかいう点がテーマとなっています。一国平和主義を掲げるトランプ政権下においてタイムリーなこのテーマがアメリカで受けて記録破りのメガヒットの一因になったものと推測されますが、鎖国や一国平和主義というテーマはむしろ日本人の方がより身近で切実に感じられます。

他国に対して絶対に暴力を振るわないという制約条件をひとつの美徳として長年運営されてきた国家という点で、我が国とワガンダは共通しています。世界の紛争には極力関わらず、自国の繁栄だけを考えて無関心を貫き通す。苦しんでいる人達がいて、あなたの力を使えば救えるかもしれませんよと言われても、争いに関わって自分の手を血で汚すということを良しとはできずに尻込みをする。果たしてその姿勢は正しいと言えるのかという点を本作は問うているのです。この問いかけは面白いと感じました。

結論が問いかけへの答えになっていない

ただし、ブラックパンサーの出した答えがヌルイの一言で、最後に腰砕けとなりました。科学技術や人道支援で世界のお役に立ちます宣言で終わりという、何の解決にもなっていない綺麗事を言って終わり。これでは論点のすり替えであり、質問に対するアンサーになっていません。

力の行使を認めるべきか否かという議論においては、暴力とは本来忌むべきものではあるが、弱者保護等の大きな目的がある場合にはその忌むべき力の行使に踏み切るかどうかという点が突き詰められなければなりません。ここで想定すべきは科学技術や人道支援のようなこちらの善意を100%汲み取ってもらえる場面ではなく、必ずしも肯定的な評価が得られないような血みどろの場面なのですが、その点の考察が非常に甘いのです。例えば日本の自衛隊では、国際紛争に派兵された際に、友軍を守るために敵を攻撃していいのかどうかという点が長く論争の的になっています。ワガンダの抱えるジレンマはこれに近いと思うのですが、「仲間を守るためには敵と戦うのは当たり前でしょ」というアメリカ人の脳では、平和主義国家が抱えるジレンマを深く考察するところにまでは至らなかったのでしょうか。

『ウィンターソルジャー』や『シビル・ウォー』では暴力の行使というテーマについてかなり真剣な考察がなされていたように思うのですが、本作で一気に後退してしまったという印象です。

テクノロジー描写が残念

「科学力と軍事力でワガンダが世界の盟主になるんだ!」とか言いながら、自分たちは槍とかこん棒で内戦を戦ってたりとか、言ってることとやってることのギャップが凄すぎた点も残念でした。

また、ブラックパンサー・スーツがあまりに高性能過ぎて、戦いから緊張感を奪っているという点も残念でした。ナノマシンによるスーツ形成機能によりダメージを受けても瞬時に修復したり、エネルギーの吸収・蓄積・放出機能によって敵からの攻撃を吸収した上で反撃に使えるなど、機能が充実しすぎてもはや負ける気がしません。これだけのスーツを使いながらも危機に陥るティ・チャラは無能すぎるんじゃないのと思ったほどです。

Black Panther
監督:ライアン・クーグラー
脚本:ライアン・クーグラー、ジョー・ロバート・コール
原作:スタン・リー、ジャック・カービー
製作:ケヴィン・ファイギ
出演者:チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、マーティン・フリーマン、ダニエル・カルーヤ、レティーシャ・ライト、ウィンストン・デューク、アンジェラ・バセット、フォレスト・ウィテカー、アンディ・サーキス
音楽:ルドウィグ・ゴランソン
撮影:レイチェル・モリソン
編集:クラウディア・カスティージョ、マイケル・P・シャウバー
製作会社:マーベル・スタジオ
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
公開:2018年2月16日(米)、2018年3月1日(日)
上映時間:134分
製作国:アメリカ合衆国

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