ザ・フォーリナー/復讐者_間違った相手への復讐劇【7点/10点満点中】(ネタバレなし・感想・解説)

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クライムアクション

(2017年 イギリス・中国・アメリカ)
リベンジものと複雑な政治劇がうまく組み合わされたスマートなアクション映画であり、復讐者となるジャッキーの熱演には真に迫るものがあって、かつその動きには相変わらずキレがあり、多くの点で成功した良作となっています。

あらすじ

クァン(ジャッキー・チェン)はロンドンで中華料理店を経営する中国系移民だが、IRAの爆弾テロに巻き込まれて一人娘を亡くす。娘の復讐に走るクァンは、元IRA過激派で現在は北アイルランド副首相のリアム(ピアース・ブロスナン)に真犯人の名前を教えるよう迫るが、リアムは無関係を主張。そこからクァンはリアムへの攻撃を開始する。

リアムは爆発物や格闘に精通したクァンの経歴を調査し、米特殊部隊への在籍歴を確認する。側近たちでは対応不可能だと判断したリアムは元英特殊部隊員の甥ショーン(ロリー・フレック・バーンズ)を呼び寄せて山狩りを実行させる。

スタッフ・キャスト

監督は『007/カジノロワイヤル』のマーティン・キャンベル

1943年ニュージーランド出身。1966年にロンドンに渡ってカメラマンとしてキャリアをスタートさせ、後にテレビ監督に転身して日本でも人気を博した刑事ドラマ『特捜班CI-5』(1977年)が出世作となりました。

少年院の実態を暴いて物議を醸した1977年のテレビドラマ『SCUM/スカム』は放送禁止となったのですが、その2年後にほぼ同じメンバーで製作した映画版『SCUM/スカム』(1979年)は高評価を獲得しました。

1980年代末には英国テレビ界ではトップの監督となり、ゲイリー・オールドマン主演の『クリミナル・ロウ』(1988年)でハリウッドに進出しました。

ピアース・ブロスナンが初めてジェームズ・ボンドを演じた『007/ゴールデンアイ』(1995年)と、ダニエル・クレイグが初めてジェームズ・ボンドを演じた『007/カジノロワイヤル』(2006年)が大ヒットとなり、また批評家からも絶賛されたことから人気監督の仲間入りをしました。

製作費2億ドルの大作『グリーン・ランタン』(2011年)を大コケさせて以降はしばらく監督作が途絶えていたのですが、本作が久しぶりの作品となります。

脚本は『ダイ・ハード4.0』のデヴィッド・マルコーニ

原作小説『チャイナマン』(1992年)を脚色したのはデヴィッド・マルコーニ。

元は技術スタッフとして映画界に入った人物らしく、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ランブルフィッシュ』(1983年)と『アウトサイダー』(1983年)、藤岡弘のハリウッド進出作『SFソードキル』(1984年)などにクレジットが残っています。

脚本家としてアニメシリーズ『地上最強のエキスパートチーム G.I.ジョー』(1985-1986年)の1エピソードを執筆し、スリラー映画『ハーヴェスト』(1992年)では監督デビューを果たしました。

オリジナル脚本を書いた『エネミー・オブ・アメリカ』(1998年)がウィル・スミス主演で映画化されて大ヒットし、またインフラストラクチャに対するサイバーテロを描いた『WW3.com』という脚本は『ダイ・ハード4.0』(2007年)の原案となりました。

主演はジャッキー・チェン

1954年香港出身。7歳から中国戯劇学院にて京劇や中国武術を学び、10代の頃には映画のスタントマンを務めるようになり、ブルース・リー主演の『ドラゴン 怒りの鉄拳』(1972年)や『燃えよドラゴン』(1973年)に出演しました。

暗い作品の多かったカンフー映画にコメディの要素を持ち込んだ『スネーキーモンキー 蛇拳』(1978年)や『ドランクモンキー 酔拳』(1978年)が大ヒットし、1980年代に入ると『プロジェクトA』(1984年)や『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985年)といった更なるヒット作を生み出しました。

80年代に二度ハリウッド進出を試みたものの成功しなかったのですが、『レッド・ブロンクス』(1995年)の全米No.1ヒットを足掛かりに『ラッシュアワー』(1998年)で三度目のハリウッド進出を図り、中規模予算ながら年間興行成績第9位という大ヒットを記録しました。

その後しばらくはハリウッドでの活動を行っていたのですが、安全基準の厳しいハリウッドでは思うようなアクションを撮れなかった上に、地元香港ではジャッキーのハリウッド映画はおしなべて評判が悪く興行成績も振るわなかったことから、2004年に再度活動拠点を香港に戻しました。

共演はピアース・ブロスナン

1953年アイルランド出身。ジェームズ・ボンドの印象が強いので英国人俳優だと思われがちなのですが、アイルランド国民です。

NBCのテレビドラマ『名探偵レミントン・スティール』で人気を博し、シーズン4で打ち切りが内定していた時期に『007/リビングデイライツ』(1987年)でのジェームズ・ボンド役のオファーを受けました。

このオファーを知ったNBCはブロスナンを手放すことが急に惜しくなったのか、レミントン・スティールのシーズン5を製作することを決定し、自ずと007には出演できなくなってボンド役はティモシー・ダルトンに変更となりました。

結局、レミントン・スティール シーズン5はたったの6話しか製作されなかったのですが。

8年後に晴れてジェームズ・ボンドに起用され、本作のマーティン・キャンベルが監督を務めた『007/ゴールデンアイ』(1995年)はシリーズ最高の大ヒットを記録し、『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002年)までの4作でジェームズ・ボンドを務めました。

ショーン・コネリーからティモシー・ダルトンまでで築かれてきたボンド像をすべて引き継いだかのような最大公約数的なところがブロスナン=ボンドの魅力であり、いまだにブロスナンとジェームズ・ボンドのイメージは強固に結びついています。

ショーン・コネリーと違って本人がそれを嫌がっている様子がなく、その後にもボンドを彷彿とさせる役柄を多く引き受けていることが映画ファンにとっては微笑ましくもあります。

登場人物

ロンドン

  • クァン(ジャッキー・チェン):ロンドンで中華料理屋を経営する初老の男。東南アジアから亡命してきた過去を持ち、その際に妻と3人いた娘のうちの2人を失っている。最後の一人の娘までをIRAの爆破テロで失ったことから復讐の鬼と化す。
  • リチャード・ブロムリー(レイ・フィアロン):ロンドン警視庁テロ対策司令部指揮官。今回の爆破テロへの対応の陣頭指揮に当たっている。
  • キャサリン・デイヴィス(リア・ウィリアムズ):イギリス政府閣僚で、今回の爆破テロへの対応でリアムとの交渉窓口となっている。

北アイルランド

  • リアム・ヘネシー(ピアース・ブロスナン):北アイルランド副首相。元IRAの過激派で服役経験もあるが、現在は穏健派となり組織内の過激派の抑え込みを行っている。
  • メアリー・ヘネシー(オーラ・ブラディ):リアムの妻だが、IRAメンバーである実弟がイギリス政府によって殺された際にリアムが報復しなかったことに失望している。リアムの愛人の存在にも気付いており、夫婦仲は冷めきっている。
  • ショーン・モリソン(ロリー・フレック・バーンズ):リアムの甥で、かつて英特殊部隊に所属しイラク戦争への従軍経験もあり、その際に英国政府からの叙勲も受けていることから、英国政府との交渉窓口の役割をリアムより命じられる。
  • マギー(チャーリー・マーフィ):リアムの愛人。
  • ヒュー・マクグラス(ダーモット・クロウリー):IRA幹部で、組織内でも特に過激なグループを率いている。リアムを弱腰になったと批判し、そのコントロールを受け付けない。

感想

爽快感ゼロのリベンジもの

主人公はロンドンで中華料理屋を営む中国人クァン(ジャッキー・チェン)で、これを演じるジャッキーは見た目も行動も小市民感を全開にしています。

異国の地で飲食店を営むジャッキーと言えば『スパルタンX』(1984年)を彷彿とさせますが、同作のような笑顔と口数の多いジャッキー像はそこにはなく、苦労して今の地位を築いた寡黙な初老像に設定されています。

そんなクァンですが、目に入れても痛くないほど溺愛している一人娘を爆弾テロで亡くし、海よりも深く落ち込みます。

唯一の生きがいを失ったクァンは長年務めてくれているおばちゃんに中華料理店の権利を引き渡し、今回のテロを行ったIRAへの復讐を開始することが作品の骨子。

その過程でクァンがアメリカの特殊部隊に在籍していた過去も発覚し「舐めてたアジア人が実は殺人マシーンでした」的な展開を迎えるのかと思いきや、作品は終始どんよりとしていてリベンジもの特有の爽快感は一切追及されていません。

確かにクァンは強くてIRAを翻弄するのですが、そうは言っても生身の人間なのでボロボロに傷つき、その戦いには悲壮感が漂っています。

加えて爆弾魔そのものにリーチできない状態で、犯人を知っていると思われる人間に対して「名前を教えろ!」と迫るという攻防がメインなので、直情的な物語にもなりえていません。

お父さんは怒っているのだが、その熱情が真犯人には届いていない。並みのリベンジもののように報復が首尾よく進んでいくことはないという超絶リアリティが本作には宿っています。

ブロスナン側からすれば堪ったものじゃない

そのクァンから攻撃対象にされるのが、ピアース・ブロスナン扮するリアム。

若い頃はIRAの闘志で服役経験もあるのですが、その後は政治家に転身して北アイルランド副首相にまで登り詰めました。

ただし彼の置かれた立場は微妙なもので、国内の急進派を抑え込みながらロンドン政府との交渉を行っているため、身内からは弱腰と避難される一方で対外的には過激派と繋がったダーティな政治家と見做されており、寄る辺もない状態になっています。

ただ、こういう人こそ良い政治家だと思うんですよね。

醜い現実に片足突っ込んだうえで現実的な着地点を見出そうと悪戦苦闘する政治家は、高台から実現不可能な綺麗事を言う政治家よりも100倍信用できます。

そんなリアムですが、ただでさえ爆弾テロでIRAと英国政府との間で板挟みになっている上に、中国人のカンフーマスターからも目を付けられてあの手この手の攻撃を受けるものだから堪ったものではありません。

リアム目線で見るとこの物語はなかなか悲惨なものです。私は終始リアムが可哀そうだなと思いながら鑑賞しました。

しかも、通常の映画であればどこかでクァンが報復対象を間違えていたことに気付き、リアムと組んで真の過激派を追いかける話に転向しそうなところなのですが、本作では最後までリアムが攻撃対象で、まったく救いがありません。

これはこれで、ボタンの掛け違えができたら最後、是正などされずに事態は突き進んでいくものだという超絶リアリティを感じました。

60歳を過ぎてもジャッキーアクションは健在

そんなわけで実に湿っぽく現実的な作風ではあるのですが、そうは言ってもジャッキー映画なのでアクションでも見せてくれます。

初老のアジア人が背の高い白人達を手玉に取る様はやはりエンターテイメントだし、格闘のみならず猫のようなしなやかな動きで相手を翻弄するジャッキーならではのファイトスタイルは健在です。63歳にして現役世代と遜色のない動きを見せるジャッキーの超人ぶりには脱帽するしかありません。

ジャッキーくらいになるとアクションで感情を表現するという技も身に着けており、クァンから繰り出される打撃には怒りが込められているということが観客にもはっきりと伝わってきます。

加えて『007/カジノロワイヤル』(2006年)でボンド映画に悲恋の要素を持ち込み、シリーズ史上もっともエモーショナルな作品に仕立て上げたマーティン・キャンベルの手腕も冴えています。

かねてより極力CGを使わない生身のアクションにこだわってきたキャンベルとジャッキーの相性は思いのほか良く、アクションでドラマを語るという方向性で高い次元の見せ場を作り上げています。

ジャッキーは超人的な動きをするものの、演出が的確なのでリアリティを失わないギリギリのところにあるし、ヘタな監督が撮ると本当にやっているアクションですら合成に見えてしまうのですが(『007/スペクター』とか…)、本作のアクションは生身の人間が演じているという見てくれになっています。

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