クリーピー 偽りの隣人【2点/10点満点中_ツッコミどころしかないダメサスペンス】

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実録もの
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2点/10点満点中

■実話に着想を得たフィクション

2002年の北九州監禁殺人事件をモチーフにした作品だということですが、これが全然ダメダメでした。あの事件や、それと類似した尼崎事件で浮かぶ疑問点とは、

  1. どうやって他人が家に上がり込んで家族を支配するに至ったのか
  2. 監禁とはいえまったく身動きがとれない状態でもないのに、なぜ被害者は逃げたり助けを求めたりしなかったのか
  3. なぜこれほど悪化するまで警察が介入しなかったのか

の3点だと思うのですが、監督の関心は専ら異常者を描く事のみにあったようで、これらの疑問に対して回答を出すどころか、ほぼご都合主義で片付けられています。

■あらゆる要素に説得力がない

薬物を利用した洗脳という拍子抜けな説明

上記1.2.については魔法のような薬物を使って他人をコントロールしているという、なんともガッカリな説明しかありませんでした。マインドコントロールの過程こそがこの手の事件のキモだと思うのですが、その部分が強引な形で片付けられたのでは話になりません。

また、薬物というツールを使うなら使うで、被害者が薬物に手を出し、自我を失うほどの依存症に陥るまでの過程を描けばある程度の説得力はあったと思うのですが、その部分も割愛されています。主人公の妻が最初に薬物に手を出したと思われる部分は見事にボヤかされているし、主人公に至ってはたった一本の注射で操り人形になったように見えるため、すべての展開に唐突感があるのです。

あと、犯人の娘を名乗らされている女子高生については薬物を投与されている様子がなかったのですが、彼女は一体どういう理由で殺人鬼の手伝いをしていたのでしょうか。

警察が無能

3.については、ズバリ警察が無能であるという一点のみで済ませています。
犯人の家は、外観こそ普通の民家ではあるが、一歩足を踏み入れると異世界のような異様な雰囲気と、どうやって取り付けたのかサッパリわからない鉄の扉があり(家の外観上の大きさと内部の広さがまるで一致していませんでしたね)、玄関に入った瞬間に「何かあるな」ということが直感的に分かる家です。
にも関わらず1名の元刑事と2名の現役刑事は応援を呼んだり武装したりもせずにノコノコ入っていき、腕っぷしが強いわけでもない犯人の手にアッサリとかかってしまうものだから、見ていてとてもイライラさせられました。

しかも、隣家で爆発事件があり、その爆発に刑事が巻き込まれて死亡したにも関わらずまともな捜査が行われないという体たらくであり、この世界の警察はほぼ仕事をしていないようです。

6年前の失踪事件の処理がいい加減にもほどがある

また、6年前の一家失踪事件についても描写がメチャクチャで、舞台となった空き家には鍵もかかっておらず、「気になった」という理由で担当でもない刑事が勝手に出入りできる状態にあるし、にも関わらず家の中は特に荒らされておらず6年前とほぼ同じ状態にあるし、入念に隠されていたわけでもなく無造作に押し入れに詰め込まれていただけの遺体が今になって発見されるし、何もかもが都合の良すぎる状態にあります。失踪発覚時点で、手掛かりを探すために警察は家探しくらいするものじゃないんですかね。

■一番ヤバイ奴は竹内結子

あと、全体を通して最大の異常者は竹内結子演じる康子だったのではないかと思います。ファーストコンタクト時点で明らかにヤバイ人というオーラが出ていた西野に対して警戒心を抱いておらず、それどころか「付き合ってみれば意外と良い人」くらいに考えていたり、ご挨拶のチョコレートにさんざん因縁を付けられたのだから「西野さんに食べ物ネタはNG」と考えるべきところなのに、後日お近づきになりたくてシチュー(しかも昨日作った分の残り)を差し入れするという頓珍漢な行動をとったり、元刑事で明らかに神経質そうな旦那に一言の断りもなく西野と娘を家に上げたりと、常識的に考えてありえない行動を連発。

だいたい、引っ越しのご挨拶で、まだ人間関係の出来上がっていないご近所さんに手作りのチョコを配ります?いただいた方も困ってしまいますよ。こちらの非常識ぶりにもイライラさせられました。

Creepy
監督:黒沢清
脚本:黒沢清、池田千尋
原作:前川裕『クリーピー』
製作:高橋敏弘、木下直哉、長澤修一、丹下伸彦、高橋誠
製作総指揮:大角正
出演者:西島秀俊、竹内結子、川口春奈、東出昌大、香川照之
音楽:羽深由理
撮影:芦澤明子
編集:高橋幸一
制作会社:松竹撮影所
製作会社:「クリーピー」製作委員会
配給:松竹、アスミック・エース
公開:2016年6月18日
上映時間:130分
製作国:日本

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