ファンタジー・アイランド_米版シベ超【3点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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得体の知れない脅威
得体の知れない脅威

(2020年 アメリカ)
ネットフリックスで配信されていたところをたまたま見たのですが、まぁ酷い映画でしたね。不思議な島を舞台にしたホラーなのですが、島の規則性がイマイチ判然としない状況で、「実は〇〇は××だったんです!」という展開を繰り返されるので、驚きよりも当惑が先に来ました。

作品解説

往年のテレビドラマのリメイク

本作は同名のテレビドラマを原作としているのですが、同作は1977年から1984年にかけて7シーズン152話が放送された人気シリーズでした。

1998年にもリメイクシリーズが製作され、Mr.ローク役にはマルコム・マクダウェルがキャスティングされました。

ラジー賞4部門ノミネートの不評ぶり

本作は批評家から酷評され、ラジー賞では4部門(最低作品賞、最低助演女優賞、最低脚本賞、最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞)にノミネートされました。

しかし興行的には成功した

ただし興行的には悪くはなく、700万ドルの低予算ながら全米初登場3位を記録。

全世界では4,880万ドルを稼ぎ出し、予算規模と比較すると高収益の作品となったのでした。

ただし批評家筋の酷評を受けてか日本での劇場公開は見送られ、デジタル公開とされました。

感想

※ネタバレ全開でいくので、未鑑賞の方はご注意ください。

笑うセールスマン島

5人の一般人が南国の小島に招待され、支配人のMr.ローク(マイケル・ペーニャ)から、サービスを提供するのでSNSにその感想を投稿して欲しいとのお願いを受けます。

そのサービスとは各自の夢を叶えるというものであり、これがタイトルにもなっているわけですが、前向きでキラキラしたものを連想させる『ファンタジー・アイランド』という響きとは裏腹に、招待客たちは煩悩に正直な願い事をします。

  • JD(ライアン・ハンセン)&ブラックス(ジミー・O・ヤン):エロい美男美女達と乱痴気パーティーをしたい。
  • メラニー(ルーシー・ヘイル):中学時代のいじめっ子スローン(ポーシャ・ダブルデイ)に仕返ししたい。
  • グウェン(マギーQ):数年前にプロポーズを断ってしまった元彼と復縁し、家庭を持ちたい。
  • パトリック(オースティン・ストウェル):母の反対でなれなかった軍人になりたい。

性欲、復讐、人生のやり直しと、誰に聞いてもこの辺りになるんじゃないのという願い事は人間らしく、実にいい塩梅に設定されていると思いました。

願い事を叶えてくれるとして、その方法は?というのが第一の疑問で、乱痴気パーティーこそ金に糸目をつけなければ開催可能なわけですが、いじめっ子への復讐はれっきとした犯罪行為なので社会的・倫理的なハードルが高すぎるし、元彼との復縁に至っては他人の人生までが絡んでくるので、頑張ってどうこうできる問題ではありません。

しかしこれらが次々と実現されるものだから、この島には超常的なパワーがあるということが分かってきます。

軍人になりたいというパトリックの願いに至っては、少年期に戦死した父の部隊にパトリックが参加するという形で実現されるので、これは超常現象以外の何物でもないわけですよ。

そうなってくると次に出てくる疑問は、なぜこんな現象が起こるのかということです。

その説明をしてくれるのがマイケル・ルーカー扮するデイモンという男で、私立探偵である彼は数週間前に島に潜入して調査しており、島の心臓部にある黒い岩が願望を具現化していると言います。

このデイモンという男の唐突感が凄くて、彼が出てきた辺りから語り口がおかしくなってきます。ひとしきり説明し終えると都合よく絶命してしまうし。

演じているのがマイケル・ルーカーだから何か裏がありそうで、その発言にミスリードが含まれていたり、後々再登場して何かしてくるのかなと思っていたら、そうでもないし。

設定を説明し終えたら素直に退場するマイケル・ルーカー。これはないですって。映画に詳しい人ほど混乱すると思いますよ。

シベ超並みのどんでん返し

どんでん①

その後、集められた5人はニックという人物が火災で死亡した件に関わっていたことが明らかになります。

  • グウェン:火事を起こし、一つ上の階に住むニックが死亡する直接原因となった。
  • JD&ブラックス:ニックのルームメイトだったが、当日外出予定だったニックは不在だと思って火災が起きても助けに戻らなかった。
  • メラニー:ニックとのデートを断り、火災当日に彼を在宅させる原因を作った。
  • パトリック:警察官として火災現場にいたが、野次馬整理だけをしてニックを助けに行かなかった。

火事を起こしたグウェン以外はほとんど責任ないだろと思うのですが、とりあえずそういうことらしいです。

じゃあ私達を集めてこんな目に遭わせているのは一体誰なのかという話になって、彼らが宿泊するホテルで働いているジュリア(パリサ・フィッツ=ヘンリー)という女性がニックの母親で、彼女が我々を集めて復讐しているのではないかということになります。

理由はニックに目元が似ているからというわけで、さすがにその推論は雑過ぎやしないかと思うのですが、とりあえずそういうことで話が進んでいきます。

どんでん②

なのですが、実はジュリアは支配人Mr.ロークの亡くなった奥さんで、死んでなお彼女にゾッコンラブのMr.ロークの願望により、この島で生き返らされているということが判明します。

つまりジュリアは火災で犠牲になったニックとは何の関係もないというわけで、じゃあ本当の仕掛人は一体誰なのかというと、ツアー参加者の一人メラニーだってことになります。

これがダメなミステリー映画にありがちな、 突然キャラクターの人格が豹変したかと思ったら 、「ふっふっふっふっ、お前達を集めたのはこの私よ!」と言って事の次第を洗いざらい説明するという阿呆みたいなパターンだったので、驚くよりもシラケました。

彼女は学生時代のいじめが原因でいろいろ拗らせている女性で、一度コーヒーを飲んだだけのニックに運命を感じていたとのこと。

そんなニックとの初デートの日に例の火災があり、運命の人を殺されてしまった。そこで関係した人間に復讐をしているわけです。

さっきも言った通りグウェン以外はほとんどとばっちりだと思うのですが、彼女くらいぶっ壊れていれば、そういう解釈にもなるんでしょうね。

で、今までのメラニーの行動はすべて芝居だったわけですが、なぜこんなにしち面倒くさい方法をとる必要があったのかは謎です。

こんな感じでどんでんが物凄く粗く、「ラスト二段のどんでん返し!」を謳っていた水野晴郎監督の『シベリア超特急』(1996年)を思い出しました。

訳の分からん怨恨が原因とか、手段が遠回し過ぎて納得感ゼロとか、脈絡もないのに唐突に結論へと飛んでいく超絶推理とか、いろいろと似ています。

シベ超に例えられ出したら、その映画は終わりですよ。

結末は一体どういうことだったのか

ただし、この手の復讐が成就しないのはホラー映画の不文律。

ツアー参加者でもないのに島に連れて来られていた元いじめっ子スローンがまだ願い事をしていないということで、彼女がニックとメラニーを消すことを願って脅威は去っていきます。

この時点で各登場人物がどうなっているのかというと、↓の通り。

  • Mr.ローク:生存
  • ジュリア:繰り返し生き返らされていることの苦痛を夫ロークに理解させ、無事成仏
  • メラニー:ニックと共に消滅
  • パトリック:父親同様、仲間を救うため手りゅう弾の盾になって死亡
  • JD:ゾンビに殺された
  • ブラックス:生存
  • グウェン:生存
  • スローン:生存

生存したツアー客ブラックス、グウェンと、巻き込まれたスローンの3人は飛行機で帰ろうとするのですが、出発直前になってもブラックスは飛行機に乗り込まず、代わりに機内には死んだはずの兄JDが乗っていて、そのままJDが飛行機で飛び去って行きます。

これは一体どういうことかというと、ブラックスはJDを生き返らせるという願い事をしたのですが、願いの効力は島内限りなので、願い事の主であるブラックスが島を離れてしまうとJDは消えてしまう。

そこでブラックスは島に残り、JDだけを家に帰らせたわけです。

究極の兄弟愛や自己犠牲を見せられた感動の瞬間だったわけですが、見せ方のまずさのために一瞬何が起こったのか分からなかったので、せっかくのオチも台無しでしたね。

語り口のまずさから企画レベルでは存在していたサプライズを伝えきれないというのが、オープニングからエンディングにまで一貫して存在する本作の欠点だったと言えます。

そういえばパトリックだって、せっかく再会できた父親のゾンビを自らの手で葬ったり、最後には自分自身も盾になって絶命したりと、グループのために大変な貢献をしたにも関わらず、彼のドラマは全然引き立っていません。

いろいろ面白い要素を考えて織り込んだのに、撮影も編集も終えて完成作品を見ると、あらゆることが思ったようになっていなかった。そんな印象の映画でした。

理解したいと思える魅力がない

そんなわけでいろいろと破綻していた作品なのですが、もう一つ致命的だったのは積極的に理解したいと思える魅力がなかったことです。

それは設定も、舞台となる島も、キャラクターもです。

興味を持てる要素がなかったので、いろいろと複雑な設定が走り始めても「あ~、何かやってんな」という感じでほとんど頭に入って来ず、こうしてブログに書くために内容を思い返してみて、ようやく「あ、あれはこういうことだったのか」と気付いた次第です。

まぁダメな映画でしたね。

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