アルカディア_退屈でミステリーへの関心が持続しない【2点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2017年 アメリカ)
ジャスティンとアーロンの兄弟は10年前にカルト教団の村を脱出し、以降は二人で生きてきた。ある日送られてきた一本のビデオテープがきっかけで兄弟は村を再訪するが、そこに居たのは10年前から見た目が一切変わっていない人々だった。そして、村に滞在する二人は様々な怪現象を目撃するのだった。

© 2017 Arcadian Film

作品概要

アルカディアとは

ギリシアのペロポネソス半島中央部にある古代からの地域名で、後世に牧人の楽園として伝承され、理想郷の代名詞となった。名称はギリシア神話に登場するアルカス(アルカディア人の祖)に由来する。

Wikipedia

そして「ユートピア」とは、アルカディアの概念に「どこにも無い場所」「善き場所」というニュアンスも付加した16世紀の思想家トーマス・モアが考えた造語らしいです。

ただし『アルカディア』は日本の配給会社が勝手につけた邦題で、原題は”The Endless”なんですが…。まぁこの原題だとある程度察しがついてしまうので、何を指しているのかがよく分からない邦題の方が優れていると思います。

Rotten Tomatoesでは97%という圧倒的支持

その独自の世界観と映像表現は、前作 『モンスター変身する美女』に引き続き、世界中の映画ファン、そして批評家を魅了、各国のジャンル系映画祭で多数の賞を受賞しました!更には全米大手批評家サイトRotten Tomatoesでは97%という圧倒的支持を獲得するなど、いま最も注目される若手クリエイターの地位に躍り出ました。

日本公開時の宣伝資料より

感想

兄弟のドラマがほぼ機能していない

冒頭のテロップ「友人は互いに感情を打ち明けるものだが、兄弟が本音を明かすのは死の間際」が示す通り、本作で描かれるのは兄弟のドラマです。

ジャスティンとアーロンの兄弟は幼少期からカルト教団の村で育ったのですが、ある時兄ジャスティンは村からの脱出を決意し、弟アーロンを連れて出ていきました。その後10年間、兄弟は俗世間で生きてきたのですが、成長過程でカルト教団に居た二人にやれる仕事などそう多くはなく、社会のド底辺で苦しみ続けています。

そもそも教団からの脱出は兄ジャスティンの独断であり、弟アーロンは教団に対して特段の悪印象を抱いておらず、それどころか自分達が正当に扱われない俗世間よりも、友人も居場所もあった教団の方が良かったとすら考えています。

弟のためだと思って何でも勝手に決めてしまう兄と、兄に依存しているが実は不満を抱えている弟。こうした兄弟の相克が作品の大きなテーマだったはずなのですが、まだ経験の浅い監督の限界か、これが有効に機能していませんでした。

この兄弟の言い争いが実にどうでもいいし、思うところの違う兄弟がどうやって一致団結して脅威に立ち向かうのかという筋書きも作り出せておらず、設定だけはあるが能動的にドラマが流れていかないというもどかしい状態となっています。

ミステリーの語り口が下手

映画の謎には、その正体を知りたくなる謎と、どうでもよくなる謎とがあるのですが、本作の場合は後者でした。情報の出し方がうまくないのです。

この手の映画って、不条理な現象の中から徐々に規則性が見えてくるという構造をとることで観客に推理の余地を与えるべきなのですが、本作はそうなっていません。前半は謎の光景が脈絡なく流れるのみであり、あまりに脈絡がなさすぎて謎を追いかけようという気になりませんでした。一転して後半では突然セリフで世界観が説明され始めるのでこちらにも面白みがなく、総じて語り口がうまくありません。

※注意!ここからネタバレします。

世界観に魅力がない

語り口のまずさに加えて、世界観そのものにも魅力がありませんでした。

時間がループし続けているだけで、他の要素ゼロですからね。湖で巨大なモンスターを見たとか、月が2つ以上あるなんていうネタも途中には登場しましたが、これらは途中で有耶無耶になって終わりだったし。

しかも舞台のサイズが中途半端。この手の世界系の映画って狭い範囲内でのミステリーをやるか(『トゥルーマン・ショー』『トランスワールド』)、広大な舞台で壮大なSFをやるか(『オール・ユー・ニード・イズ・キル』)のどちらかだと思うのですが、本作の場合はそのどちらでもありません。その結果、ミステリーにもSFにも振り切れていない中途半端なものとなっています。

トランス・ワールド【8点/10点満点中_緻密なSFと社会啓蒙的なテーマを両立させた必見の作品】

加えて世界の規則性も不明。ジャスティンとアーロンは10年前に村を脱出したという前提から考えるに時間のループはここ10年以内で始まったと思われるのですが、5秒でループし続けているおっさんなんかはその持ち物を見るに100年近く前の人物のようにも見えるので、一貫した規則性がありません。この手の映画って、ルールや法則がどれだけ練られているかが重要だと思うのですが。

また、内部に取り込まれた者達が無限ループから逃れられない中で、主人公の兄弟だけは脱出できた理由も不明。全速力の車で境界線に突っ込むという誰でも思いつきそうな脱出方法なので興ざめでした。こんな方法で脱出できるなら、他の奴らもやればいいのに。

そもそも物語のきっかけとなったビデオテープは一体誰がどうやって送ったものだったんでしょうね。

まとめ

ドラマ、ミステリー、SF、どれをとっても有効に機能しておらず、ただただ退屈な時間が過ぎるだけの映画でした。もし90分程度でまとめていれば奇抜なアイデアのコラージュのみで逃げ切れたかもしれませんが、111分という長めの上映時間を使う程の内容はありませんでした。

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