すべての終わり【4点/10点満点中_序盤の引きこそ良いものの手数の少なさが問題】

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終末

[2018年Netflixオリジナル作品]

©Netflix

4点/10点満点中

前半部分の緊張感は良い

大規模災害なのか他国からの攻撃なのかが分からないが、どうやら西海岸が壊滅的な被害を受けたらしいという前半部分の細かい描写の積み重ねはよく出来ていたと思います。おかしな形で通信が途切れ、テレビではニュース速報が流れ、そして空港へ行くと主人公の目の前で掲示板が全便欠航に変わる。それぞれ定番の描写ではあるものの、やはりこうした騒動の拡大のさせ方には燃えさせる何かがありますね。

主人公は被災地の婚約者の元に帰るべく、シカゴ→シアトルという北米大陸ほぼ横断の長旅に出るのですが、遠くに上がる煙や墜落した軍用機の残骸といった旅の後景から事の重大性を見せるという『モンスターズ/地球外生命体』みたいな世界観の演出方法も効果的だったと思います。

また、略奪者から身を守るという展開もこの手の作品の定番ではあるもののなかなか緊張感があって良かったし、後述する通り旅の同伴者であり婚約者の父が軍人上がりでいざという時に腹の座ったところを見せるので、こちらには「舐めてた相手が実は…(©ギンティ小林)」的なカタルシスがありました。こういう展開好きです。

婚約者の父と義理の息子のロードムービー

70年代のパニック映画の時代から大規模災害ものや終末ものには人間関係の修復がセットとなることが定石なのですが、本作では婚約者の父と義理の息子という新しいパターンが提示されています。

婚約者の父・トムは軍人あがりの堅物で、自分の人生や家族には絶対の自信を持っています。だから何か問題が起こっても自分や家族が原因ではなく、家庭にとっての異物である娘の婚約者が悪いんじゃないかと直感的に考えてしまうという厄介な思考回路の持ち主でもあります。フォレスト・ウィテカーは相変わらずの芸の幅の広さでこの頑固おやじを演じており、厄介者なんだけど観客から嫌われないギリギリのラインを保つという絶妙な温度感を見せています。また、旅の過程でこのトムが変化していく様も実に自然であり、低予算かつ二番手のクレジットでブルース・ウィリス辺りなら全力で手を抜いてくるであろうこの仕事においても、惜しみなく演技力を披露する姿勢には敬意すら抱きました。

トムから目の敵にされている気の毒な婚約者・ウィルを演じているのは『ダイバージェント』3部作すべてに出演したテオ・ジェームズです。本来、観客の感情移入の依り代はこの人だったと思うのですが、この人が典型的な影の薄いイケメンであり、別に下手ではないんだけど見事なまでに印象に残りません。

また脚本上もウィル役は分が悪く、基本的には持ちつ持たれつで信頼関係を確立することがこの手のロードムービーの基本なのですが、この二人の場合はトムのサバイバル能力が非常に高く、ウィルはトムの言うことを聞いているだけという関係性で推移するので、基本的にウィルに良いところがないという問題が発生しています。本作の脚本家は、トムの欠点をウィルが補うという展開をなぜ入れておかなかったのだろうかと不思議に思いました。

※注意!ここからネタバレします

同じことの繰り返しで飽きてくる中盤・とっ散らかった後半

前半こそ楽しんで見ていた略奪のくだりが2度3度繰り返されるので、正直飽きてきます。また旅の風景も基本的に変わり映えがしません。本作はとにかく手数が少なく、映画全体を引っ張って来たフォレスト・ウィテカーが死ぬと、映画は一気に失速します。

ようやくシアトルに辿り着いたウィルは、ご近所さんの別荘に避難していた婚約者・サムと再会するのですが、このご近所さんがどうやらサムに惚れている様子。二度と姿を現さないだろうと高を括っていたウィルが戻って来たことから、ご近所さんは意中のサムに気付かれずにウィルを殺せないかと不審な動きを始めます。ウィルvsご近所さんの攻防戦が終盤の見せ場となるのですが、これだけのスケール感で始まった映画の終着点が美人の取り合いかという点にも脱力感がありました。しかもこのご近所さんがITのエンジニアっぽくて全然強そうではなく、序盤や中盤で襲って来た略奪者よりも数段落ちる敵だったので、緊張感もまったくありませんでした。中盤・終盤は本当にグダグダで、本作の世界的な低評価にも納得がいきました。

ちょっと気になったポリコネの件

ポリティカル・コレクトネス、略してポリコネへの配慮が現在のアメリカ映画の特色となっていますが、本作においても主人公は白人で、その婚約者はアフリカ系という異人種間結婚。そしてネイティブ・アメリカンの若い女性が一時的に旅の同伴者になるという、この小さなドラマにすら各人種がバランス良く登場することには、少々違和感を覚えました。

作り手としては、登場人物はどの人種でも良かったので、誰からも文句が付かないよう無難な配置にしただけなのでしょうが、わざとらしさは見ている側にも伝わってきていい加減うんざりさせられます。

私は本作の作り手を非難する気はなく、むしろ作品の本質とは無関係なところで因縁を付けられることのないよう防衛的な姿勢で映画を作らざるを得なかった点には同情しているくらいなのですが、ここまで過度に人種的バランスにこだわりすぎるアメリカ映画のありようはいかがなものかと思います。

How It Ends
監督:デヴィッド・M・ローゼンタール
脚本:ブルックス・マクラーレン
製作:タイ・ダンカン、ポール・シフ、ケリー・マコーミック、パトリック・ニュウォール
製作総指揮:ダニエル・ベッカーマン、イアン・ディマーマン、ブルックス・マクラーレン、ニック・メイヤー
出演者:テオ・ジェームズ、フォレスト・ウィテカー、カテリーナ・グレアム、ニコール・アリ・パーカー
音楽:アトリ・オーヴァーソン
撮影:ペーテル・フリッケンバリ
編集:ジェイソン・バランタイン
製作会社:ポール・シフ・プロダクションズ、シエラ/アフィニティ
配給:Netflix
公開:2018年7月13日
上映時間:113分
製作国:アメリカ合衆国

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終末
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