ノイズ(2022年)_ゆるゆるのクライムサスペンス【3点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

スポンサーリンク
スポンサーリンク
クライムサスペンス
クライムサスペンス

(2022年 日本)
田舎社会の独特な雰囲気の描写に失敗している上に、クライムサスペンスとしてもゆるゆるで、良い部分がほとんどない。この程度の企画に、よくぞここまで有名俳優を揃えられたものだ。

感想

田舎の怖さが全然足りていない

ディズニープラスの『ガンニバル』(2022年)に夢中になってしまい、日本の田舎×サスペンスをもっと見たいなと思っていたところに、Netflixで本作が配信開始。

ウキウキして鑑賞したのだが、こちらはイマイチどころか、イマニ、イマサンくらいひどかった。

舞台となるのは愛知県の過疎の島。

おかしな来訪者と揉み合いになった勢いで殺してしまった島の若者3人組は、その死を隠蔽しようとするのだが、相手は重罪人だったことから県警が捜索にやってきて、にっちもさっちもいかなくなるというのがざっくりとしたあらすじ。

主人公を演じるのは藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介の3人でかなり豪華なのだが、彼らの持つスターオーラが田舎の雰囲気を壊す方向に働いており、決して良いキャスティングだとは思えなかった。

「過疎の村にこんな奴らがおるか」となってしまうのだ。

また3人にフォーカスし過ぎで他の島民たちがほぼモブ扱いなのだが、『ガンニバル』を見ても分かる通り、田舎にはその地域独特の世間があって、住民一人一人の存在感が強すぎることが重要なのである。

スター3人を起用してしまったことの弊害で、相対的に田舎社会のインパクトが薄まってしまったのは痛かった。

兎にも角にもこの3人がなぜ殺人の隠ぺいに走ったのかというと、それは決して我が身可愛さからではなく、島に悪い評判を与えたくないという一心からだった。

藤原竜也扮する圭太は珍しいイチジクを栽培する農家を営んでおり、その試みはテレビの取材を受けるほどで、彼の事業は島の起爆剤として期待されている。

もしもここで圭太がコケれば、島は明るい兆しを失ってしまう。

仮に通報しても正当防衛で済む可能性の高い案件だったが、そうは言っても人を殺した人間がこれまで通りのメディア露出を続けることは不可能だろう。風評リスクまでを考えて、3人は隠蔽することが最善であると判断したのである。

ただし、この3人が狂おしいほどの郷土愛を持っているようには見えないので、基本的な部分に説得力がない。

そういう話ではないことは分かっているのだが、それでも私の心の片隅には「正直に通報すればいいのに」という思いが常にあって、それが本作鑑賞上のノイズになっていた。

刑事の行動もおかしい

この島に乗り込んでくるのが永瀬正敏&伊藤歩の刑事コンビだが、こいつらも酷かった。

永瀬正敏は終始不愛想ではあるが、常に物事の裏を探っているようなできるげな雰囲気を醸し出している。ただし良いのは雰囲気だけで、その捜査プロセスは杜撰そのもの。

島に来た当初から島民の隠ぺいを疑っているのだが、動機も証拠も見当たらない段階からそれを疑うのはいくら何でも気が早すぎる。

「鋭い」とか「勘が良い」を通り越して、むやみやたらに周囲を疑う感じの悪い人間としか思えない。

気になればどこにでもズカズカと入っていくのだが、さすがにそれは不法侵入だ。また別の場面では、怪しいと睨んだ藤原竜也と松山ケンイチのDNAを採って来いと神木隆之介に強要するのだが、こちらは不当な形での証拠入手である。

仮に正しい筋道に立っていたとしても、相手から訴えられればすべての捜査が水の泡になりかねない手法をとっており、決して出来る男には見えてこなかった。

もう一人の刑事 伊藤歩は、周囲との調整やコミュニケーションを担当することが多い。

永瀬正敏よりも常識的ではあるのだが、やはり彼女の行動もちょいちょいおかしい。

遺留品であるスマートフォンに手を伸ばそうとした藤原竜也に「やめなさい!」と言って銃を向けるのだが、藤原竜也は一般人である上に、その視線の先に凶器があるわけでもない。

その必然性が全く見当たらない場面で、メル・ギブソンやブルース・ウィリスのように銃を抜くのはさすがにおかしかったし、衆人環視の現場で、後々問題になる可能性が極めて高い行動を取るのは軽率すぎる。

この通り、一つ一つの場面がよく考えられていない映画という印象。コミックが原作であるためにリアリティラインの引き方が難しかったのかもしれないが、それにしても酷すぎた。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
記事が役立ったらクリック
スポンサーリンク

コメント