(2026年 ブラジル)
1987年にブラジルで実際に起こったゴイアニア被曝事故を描いたドラマ。被爆者たちがあまりにバカすぎてイライラさせられた。
感想
随分昔に「世界まる見え!テレビ特捜部」で見ていたので事故の概要については知っていたが、返す返すも杜撰な話で、おおらかなラテン気質も考えものねと思わされてしまう。
ブラジルはゴイアス州のゴイアニア市という、なんともゴイゴイスーな名前の自治体において、放射性物質を格納した容器が廃病院に放置されるという信じがたい事象が発生。
廃品回収で小遣い稼ぎをしている若者二人がこれを持ち去り、廃品業者の親父がド根性で容器をこじ開けたことから、放射性物質が住宅街のど真ん中で露出するという前代未聞の事態となる。
親父は青白く光るセシウムを宝物か何かだと勘違いし、家に持ち込んで棚の上に飾ったり、親戚に分けたり、顔に塗りたくったりと、まぁメチャクチャをし始める。
その時点で放射性物質と知る由はなかったにせよ、廃病院から回収された見慣れない物質とくれば、何かやべぇものじゃないかと疑うことはできただろう。
そう、本作は「バカは恐ろしい」という事実を執拗に描き続ける。
この物質を持ち込んで以来、うちの人たちの体調が悪いということで、廃品業者の奥さんは10日目にしてようやっとこれを保健所に持ち込む。
保健所所長の手を経て、たまたまゴイゴイスーに帰省中だった物理学者マルシオによって核物質が流出したという事実が突き止められる。
物理学者のマルシオをして、当初は線量計の故障だろうと思ったほどの強い放射線量を記録したことで、行政は対策に本腰をあげ始める。
しかし、そこに立ちふさがるのがバカの壁だ。
この容器は廃品業者から持ち込まれたものだとして出所を訪ねると、親父が物凄い剣幕でマルシオを追い出しにかかる。
「逮捕状はあんのか?」「ここから俺を動かす権利はない」などと凄む親父だが、真っ青な顔した学者が「ここはヤバいっす」と言いに来て、手に持っている測定器が何やら凄い検知音をあげている状況ならば、これは聞かなきゃいけないやつだと誰にだって分かるだろう。
しかし空気の読めない親父は「今が緊急事態の真っただ中である」という事実に気づけないようで、ず~っとず~っとオラついている。
病院に収納された後にも被害者たちのバカは治らない。
対応に当たる医師や学者たちは真剣そのもので、自分たちは相当ヤバい状況に置かれているということはさすがに分かるだろうに、何かをすると言われると、とりあえず文句の一つも言わないと気が済まない様子の患者たち。
何をするにも口答えばかりの患者たちを見ているのは本当にしんどかった。
そんな収容者の中でも際立ってひどいのがライムンドというヤンキー青年で、不平を言うどころか今にも医者に殴りかかってきそうな勢いで、自分の生存のために誰を味方につけておくべきかをまるで弁えていない。
中盤では病院からの脱走を図るなどやりたい放題なのだが、ここまで酷いと、逆にこいつには何らか重い役割が与えられてるんじゃないかと勘繰るのが映画ファンというものだ。
前半の問題児が、終盤において思いがけず英雄的な行為に出るのがドラマの常道であるが、本作に限ってはまったくそうした裏切りはなく、バカは最後までバカという安定の展開を見せる。
題材が面白すぎるので全5話を難なく完走できたけど、HBOの『チェルノブイリ』(2019年)のような衝撃はなかった。
ドラマとしては水準作の域を出ていないが、緊急時において事情を弁えない人間がいかに迷惑であるかということは痛いほどに伝わってきたので、反面教師的ではあるが、実に教育的なドラマではあると思う。

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