小さな命が呼ぶとき【5点/10点満点中_ビジネスというユニークな切り口の難病もの】

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実話もの
実話もの

[2010年アメリカ]

5点/10点満点中

「君を失うには早すぎる」という公開時の宣伝文句がお涙頂戴っぽかったし、”緊急手段”を意味する原題とあまりに違い過ぎる邦題からも嫌な予感がしていて長い間食指が向かなかったのですが、たまたま機会があって鑑賞すると事前の印象とはかなり違った作品で、そこそこは楽しめました。

■我が子を救うために創薬ベンチャーを設立したサラリーマンの実話

本作は3人の子のうち2人が糖尿病Ⅱ型(ポンぺ病)と診断されたジョン・クラウリー氏の実話を元にしたノンフィクションを原作としています。クラウリー氏は大手製薬会社に勤務してはいるものの、MBA持ちの市場調査担当役員であるため創薬の分野には素人です。しかし、ポンぺ病患者の平均寿命は9歳であることから我が子を救うためには誰かが治療法を開発してくれるのを待っている時間はないということで、自身で創薬ベンチャーを起業することにしました。

この原作はクラウリー自身によるものではなく、ウォールストリートジャーナルの記者であるジータ・アナンドによって書かれたものであるため、薬を開発するという目標を達成するための戦略や資金調達といったビジネス的な側面に重きが置かれており、これが他の難病ものと本作との差別化ポイントとなっています。

■基本的には経済映画

難病の子供を抱える親の愛情物語という側面は希薄であり、その代わりに創業期の資金集め、大手への買収話、大手資本が参入した後の主導権争いといったビジネスの厳しい面に重きが置かれたユニークな作品として仕上がっています。根性とか家族愛ではビジネスは進まない、結局は金を生み出せるかどうかと、その実現可能性が重要であるという点を徹底的に描いている点が魅力的でした。

特に、大手の資本に入った後には会社よりプロジェクトの優先順位を厳しく精査され、競合プロジェクトを蹴落とさねば資金と人材を得られなくなるという点がじっくりと描かれた点は興味深く感じました。

■リアリティを重視しすぎて登場人物が全員イヤな野郎

ただし、登場人物への感情移入が難しかったことが作品のボトルネックとなっています。好感を抱ける人物が一人もいないのです。

ブレンダン・フレイザー演じる主人公・クラウリーは、共同経営者に一言の相談もせず会社の身売りをしたり、患者とその家族を研究者や経営陣と交流させるという重要イベントを直属の上司に黙って進めたり、わが子の容体が悪化するとテンパって会社と喧嘩をしたりと、ビジネスマンとして問題のある行動を連発。「うちの子が死にそうなんだ」という誰も言い返せない感情論で冷静な議論を潰してしまうので、ビジネスパートナーとしては最悪だなという印象を受けました。

ビジナスマンとして失格と言えばハリソン・フォード演じるストーンヒル博士も負けてはいません。そもそもクラウリーを創薬ベンチャーに引き込んだのはストーンヒルなのですが、共同経営者として会社を軌道に乗せようという気はゼロ。「明日はベンチャーキャピタルへの重要なプレゼンがあるから打ち合わせしましょうよ」と言われてもふらふらと趣味の釣りへ出掛けてしまうし、翌日のプレゼンでは事業計画にちょっとつっこまれただけで癇癪を炸裂させて場をひっくり返します。大手製薬会社の資金と設備を使わせてもらっても大企業の一員として組織に馴染もうとする気はまったくなく、好きな音楽をガンガンに鳴らしてマイペースに研究をするという姿勢を崩しません。こちらがお願いする立場である、資金や設備を提供していただいている側であるという基本認識がまるでなく、どれだけ優秀であっても一緒に仕事はしたくないと思わせる負のオーラをビンビンに漂わせていました。

Extraordinary Measures
監督:トム・ボーン
脚本:ロバート・ネルソン・ジェイコブス
原作:ジータ・アナンド
製作:ステイシー・シェール、マイケル・シャンバーグ、カーラ・サントス・シャンバーグ
製作総指揮:ハリソン・フォード、ナン・モラレス
出演者:ブレンダン・フレイザー、ハリソン・フォード、ケリー・ラッセル、ジャレッド・ハリス、コートニー・B・ヴァンス、ディー・ウォレス
音楽:アンドレア・グエラ
撮影:アンドリュー・ダン
編集:アン・V・コーツ
製作会社:CBSフィルムズ、Double Feature Films
配給:CBSフィルムズ(米)、ソニーピクチャーズエンターテイメント(日)
公開:2010年1月22日(米)、2010年7月24日(米)
上映時間:109分
製作国:アメリカ合衆国

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