悪の法則_深いテーマと示唆に富んだセリフが見どころ【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2013年 アメリカ)
娯楽作としての面白さは少なかったものの、深いテーマや示唆に富んだセリフなど見るべきものは多く、リドリー・スコットの残酷描写も絶好調であり、見ようによっては良作と言えなくもない作品です。時と共に熟成していき、数十年経てば映画ファンから持て囃されるタイプの映画だと思います。

あらすじ

カウンセラー(マイケル・ファスベンダー)と呼ばれる弁護士は、闇稼業に手を染める友人のライナー(ハビエル・バルデム)から勧められていた麻薬ビジネスに参加することにする。それは巨額の利益が期待できる仕事のはずだったが、何者かに運び屋を殺され、ブツを乗せたバキュームカーを奪われたことから、疑惑の目がカウンセラーに向き始める。

スタッフ・キャスト

監督はリドリー・スコット

1937年イングランド出身。

デビュー作『デュエリスト/決闘者』(1977年)でカンヌ映画祭新人監督賞受賞。『エイリアン』(1979年)、『ブレードランナー』(1982年)とSF映画の傑作を二本連続で手掛け、『グラディエーター』(2000年)でアカデミー作品賞受賞と、興行と批評の両面での強さを誇る現代映画界の最高峰に君臨する監督です。

『ノーカントリー』のコーマック・マッカーシーのオリジナル脚本

1933年ロードアイランド州出身。現代アメリカを代表する小説家であり、『すべての美しい馬』(1992年)、『血と暴力の国』(2005年)、『ザ・ロード』(2006年)が代表作です。うち『ザ・ロード』ではピューリッツァー賞を受賞。

また『血と暴力の国』はコーエン兄弟によって『ノーカントリー』(2007年)として映画化され、アカデミー作品賞を受賞する評価を得ました。

本作は原作小説があるわけではなく、マッカーシーが映画用に書き下ろされたオリジナル脚本です。

豪華スター共演作

  • マイケル・ファスベンダー(カウンセラー):1977年西ドイツ出身。『ハンガー』(2008年)、『SHAME -シェイム-』(2011年)、『それでも夜は明ける』(2013年)とスティーヴ・マックィーン監督作品の常連であり、それらの作品で多くの映画賞にノミネートされた経験を持つ実力派俳優。リドリー・スコットとは『プロメテウス』(2010年)、『エイリアン:コヴェナント』(2017年)で仕事をしています。
  • ペネロペ・クルス(ローラ):1974年スペイン出身。若い頃からペドロ・アルモドバル監督作品の常連であり、『ボルベール〈帰郷〉』(2006年)でアカデミー主演女優賞にノミネート。ウディ・アレン監督の『それでも恋するバルセロナ』(2008年)でアカデミー助演女優賞を受賞しました。トム・クルーズ主演の『バニラ・スカイ』(2001年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(2011年)といった大作にも出演しています。本作では夫のハビエル・バルデムと共演しています。
  • キャメロン・ディアス(マルキナ):1972年カリフォルニア州出身。21歳の時に『マスク』(1994年)のヒロイン役でデビューし、『メリーに首ったけ』(1998年)、『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)、『シュレック』(2002年)と大ヒット作に次々と出演しました。本作でも共演したペネロペ・クルスとは『バニラ・スカイ』(2001年)でも共演しています。長くトップ女優だったものの2014年以降は出演作が途絶えており、その後ディアス本人が引退を認めました。
  • ハビエル・バルデム(ライナー):1969年スペイン出身。ペネロペ・クルスのデビュー作でもある『ハモンハモン』(1992年)でスペイン国内での知名度を上げ、『夜になるまえに』(2001年)でハリウッド進出。本作と同じくコーマック・マッカーシー原作の『ノーカントリー』(2007年)でアカデミー助演男優賞を受賞し、シリーズ最大のヒットとなった『007 スカイフォール』(2012年)のヴィランも絶賛されました。
  • ブラッド・ピット:1963年オクラホマ州出身。言わずと知れた大スター。リドリー・スコット監督の『テルマ&ルイーズ』(1991年)での詐欺師役でブレイクし、以降はタランティーノやデヴィッド・フィンチャーといった名監督とよく仕事をするようになりました。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(2019年)でアカデミー助演男優賞受賞。また映画プロデューサーとしても『ディパーテッド』(2006年)、『それでも夜は明ける』(2014年)、『ムーンライト』(2016年)という三本のアカデミー作品賞受賞作を製作している凄腕です。

感想

面白いんだか面白くないんだかよく分からない映画

リドリー・スコットが監督し、主演級のスターが大勢出演しているということで劇場公開時には話題になった作品でしたが、初見時の感想は何か凄いことが起こっているっぽいが、結局何が言いたいんだか分からないし、面白くもないということでした。

今回Blu-rayで再見したのですが、おおまかな感想は同じ。

カウンセラーと呼ばれる弁護士(マイケル・ファスベンダー)が婚約者ローラ(ペネロペ・クルス)に世界で一つだけの婚約指輪を贈りたくて麻薬ビジネスに手を染めたら、やんごとなき状況に叩き込まれることが作品の骨子。

このあらすじからは非道な麻薬カルテルからの追撃を受けるバイオレンスを期待させられるのですが、この弁護士が麻薬密輸におけるどんな業務に関わったのか、当初の計画はどういったもので、それがどう崩れていったのかといった当然描かれるべき顛末がカットされており、よく分からないまま命を狙われ始めるという、なんとも不格好なことになっています。

これが本作のつまらないところであり、通常のクライムアクションの型をあまりに崩し過ぎているために、観客の理解を得られなくなっているのです。

テーマは「無目的な悪意」

とはいえ、2回目の鑑賞ともなると見えてくるものもあって、作品のテーマはコーマック・マッカーシーの代表作『ノーカントリー』(2007年)と似たようなことなんだろうと思います。

『ノーカントリー』は、麻薬カルテルの金を偶然拾ったベトナム帰りの男(ジョシュ・ブローリン)が組織から命を狙われることになるが、そのために送り込まれた殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)が滅茶苦茶な男であり、行く先々で無差別殺人を繰り返し、終いには雇い主まで殺したことからカオスになるという映画でした。

『ノーカントリー』が分かりやすかったのは作品全体のテーマを具現化したアントン・シガーというキャラクターを配置したことであり、おおよそ話が通じず、損得で動いていないので取引にも応じないこの殺人マシーンは、ある日突然容赦なくやってくる運命を象徴していることが誰の目にも明らかでした。

本作にもシガーに相当するキャラクターは登場します。キャメロン・ディアス扮するマルキナがそうなのですが、彼女のキャラクターはシガーよりも遥かに複雑であり、彼女が何者かを一言で表すことができないので、そのことが作品のテーマが掴みづらいことの原因となっています。

マルキナはちゃんと話が通じるし、人を巻き込んだ謀略を企てているので何かしらの目的はありそうに感じるのですが、実のところ彼女の動機が何だったのかを観客は説明することができません。

彼女は実業家のライナー(ハビエル・バルデム)から愛されており、物質面でも充たされています。カウンセラーを始めとした、後に陥れることとなる人達を恨んでいる様子もなく、表面的には悪事を働く理由がないのです。

初見時にはこれで混乱させられたのですが、二度目の鑑賞でようやく、理由がなくても悪事を働く人間がいるというテーマが見えてきました。

繰り返されるチーターのイメージや、マルキナの背中に施されたヒョウ柄のタトゥーが象徴的なのですが、肉食動物が草食動物を追いかけることはほぼ本能であり、思考よりも先に体が動き出しています。

マルキナも同じくであり、金が欲しいとか特定の人間に復讐したいなどの明確な目的があるわけでもないのだが、何か謀り事をしたり、他人を陥れたりといったことをほぼ習性の如くやるのです。まさに「無目的な悪意」。

彼女のターゲットにされたカウンセラーやライナーからすれば、マルキナに関わったからという理由で破滅への扉が開かれる理不尽極まりない話なのですが、実際、人生とはそういうものです。

当人が悪事を働いたからといって必ずしもその報いを受けるものでもないし、善人がひどい犯罪被害に遭うこともある。多くの場合、良いことにも悪いことにも理由などなく、運悪く巻き込まれるかどうかの差なのです。

しいて言えば、カウンセラーは悪意に巻き込まれる可能性が高く、かつ、いざという時にも公安からの保護を受けられない麻薬ビジネスに関与してしまったために、マルキナのターゲットにされたが最後、逃れる術がなくなってしまったことが落ち度です。

残酷大将リドリーのスター皆殺しショー

かくしてマルキナによる大殺戮が開始されるのですが、ブラッド・ピット、ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルスといったスター達の死にざまが作品のハイライトになっており、ここで残酷大将リドリー・スコットの本領が発揮されます。

ワイヤーで首を切断する殺人装置の説明や、美しい女性が殺されるスナッフフィルムの存在を示す台詞によってフリを思いっきり利かせておいて、登場人物の身にそれを起こすという嫌らしい構成に、容赦のない死の描写。

ブラピが機械によって首を締め上げられる様は衝撃的だったし、首なし死体になったペネロペ・クルスがゴミ捨て場に廃棄される場面は見ていて辛くなりました。

実は直接的なバイオレンスの量はさほど多くないのですが、台詞と描写の組み合わせにより実際に映っているもの以上の衝撃を与えるという見事な演出が決まっています。さすがはリドリー・スコット、底意地の悪い映画を作らせると光っています。

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